【 お 知 ら せ 】
第2回 養生・健康 試食会 & おきゅう教室
テーマ:「花粉症・アレルギー対策」

日時:2月26日(日) 午後1時〜3時

場所:ゆいホール(デイサービスセンターくつろぎの里)
主催:さとう鍼灸整骨院(ヤングスタッフ)
参加費:500円
(せんねん灸つき)
9回 NPA鍼法「啓鍼会」 StudyWork

ゲスト発表:「陰陽太極鍼の理論と実技」
鉢嶺かやみ先生(さくら鍼灸院院長)
201210(土) 午後5時〜7時 

ゆいホール(さとう鍼灸整骨院 となり)
「はり灸」けんこう相談会

●「疲れ目・老眼に良いツボ体操」
●「不安・ストレスの簡単解消法」


日時:25日(日)午後1時30分〜4時
場所:新・八尾商工会議所 3回小会議室
主 催 : 大阪府鍼灸師会 八尾柏原地区
【ブログ・目次】(ウィズメッセージ)
2012年(平成24年)
2011(平成23年)

● 12/31 - 安産、つわり、逆子…鍼灸の力も借りて

● 12/17 - “冷え性改善”大詩食会にチャレンジ





● 12/06 - 脊柱管狭窄症で歩くのがつらかったが…

● 11/23 - まほろばの倭(やまと)で薬草料理

● 11/13 - 平和の土台を守るために

● 10/13 - 奥琵琶湖で“合宿ミーティング”
           

● 9/29 - 薬なしで、高血圧対策はいける

● 8/01 - 富田林市・川田屋の蓮と半夏生の花
              

● 7/22 - 放射能汚染(内部被曝)に思う

● 7/13 - 長寿遺伝子の発見と経絡治療

● 7/04 - キューバの鍼麻酔、経絡

● 6/22 - ふるさと秋田で地熱発電の開発へ
           
● 6/13 - “還暦”の同窓会

● 6/04 - 医師団との協働@気仙沼

● 5/29 - 鍼灸ボランティア 詳細編

● 5/9 「災害鍼灸マッサージプロジェクト」の記録 
    気仙沼へ鍼灸ボランティア

■ 4/25 - 日本では難しい“将来設計”だが…

■ 3/8 - 経絡の謎、永遠のテーマか?

■ 3/3 - ウガンダで日本式お灸  
  ウガンダでお灸 Moxafrica.

■ 2/9 - TPPと日本の自然、医療…

■ 1/5 - 日本の医療の貧困を考える




2010(平成22年)

★ 12/23 髪の毛が生えてきた!?

◎ 11/16 対談 “歴史をつくるのは私たち”
        薬害肝炎訴訟原告団元団長VS大阪民主新報編集長
        サザン・オールスターズの桑田佳祐が
        「声に出して歌いたい日本文学」の一つに…


◎ 11/11〜12 久宝寺中の職業体験レポート

◎ 11/11 「鍼灸なんか、老人のすること」??

◎ 10/17 鍼灸を体験する医師(東洋医学会 In 奈良)

◎ 10/9 首が痛い、動かせない !!
◎ 9/11 目だけでなく、皮膚も色を識別する?!

◎ 8/21 屋久島ツアーと尿管結石?!

◎ 8/8 八尾市も、大阪府もなくなる?! 

◎ 8/5 核兵器のない世界へ動き出した 

◎ 7/30 子どものチック症とイボ  

◎ 7/17 夏バテ予防のトマトラーメン  

◎ 7/16 タコのパウル君  

◎ 5/1 はじめてのヨーロッパ旅行

◎ 3/9 「白血病」への鍼灸治療

◎ 2/3 子どもでも肩こり

◎ 1/13 皮膚に触れるだけで治る人 
2009(平成21年)

タミフルか?梅酒か?エッ、鍼灸?! (2.15)

ガンと向き合う鍼灸治療 (3.1)

◎ 職業講話(久宝寺中学校の1年生へ(3.6)

   

いろいろ役立つドクダミの葉っぱの効能 (5.17)

新しい時代の医療=鍼灸でがんに挑戦 (6.14)

ゴキブリほいほい?が視力を奪う! (6.17)

“流行”の美容鍼灸はNPAで… (7.14)

肺がんからリンパ転移
  自然治癒力を活かして、がん再発予防
(9. 9)

■ 大腸がんから肺に転移
  抗がん剤やめて、鍼灸など緩和療法へ
(9. 23)

【がん患者2例   (10.4)
   胃がんが消えた?! 
   尿管・膀胱に癌?白血病?!

関西医大の懇談会で感じたこと (10.18)

悪阻(つわり)鍼灸が即効! (11.1)

小児鍼で、よく寝てくれた赤ちゃん (11.7)

柿の葉とヘタの効能  
(11.3)
久中の“職業体験 
(11.10〜11)

90歳代の患者さん2題  (12.2)

2008(平成20年)

手術せずとも、バネ指は治る!(1.8)
           余談−−オオカミと戦った話??

五十肩治療に思う(2.7)

胃が痛くてやってきた在米の一時帰国者(4.3)

香港・マカオ・広州・開平の旅(5.3

急性の腰痛にNPA鍼法(5.22)

女性に多い「微小循環狭心症」に鍼灸の効果
(5.24)

肩こり、腰痛と保険制度(6.8)

08年新医協関西研究集会(6月15日森之宮医療学園)

逆子が治った!(7.9)

救命講習会と鍼灸の対処法(10.5)

診断・治療に必要な「整体」とは?(10.19)

“痔には、ボラ…でなく、鍼灸が良い”(10.29)

再び、逆子(骨盤位)が治った2例(12.1)

子どもの近視治療に即効(12.9)

2007

● パーキンソン病と鍼灸
 (1月25日)

■ 刺さない鍼で劇的な効果
(2月14日)

大阪「戦争と医学」展(4.2)

■ 「医の倫理」と両立し得ない「医学犯罪」に
  どう向き合うか

  …
07年大阪「戦争と医学」展に参加して (4.22)

医者としての本居宣長、鍼灸との出会い (4.29)

      

■ 風変わりな撫子(4.29)

初めての台北3日間、そして台北鍼灸事情(5.6)


外反母趾に、皮膚触鍼とお灸(6.11)

転倒で手首・前腕の損傷に皮膚鍼(7.7)

鍼灸助成制度の拡大と鍼灸の保険適用 へ
  そして 学生へのメッセージ‐‐-07年 新医協関西研究集会
 (7.8)


刺さない鍼(NPA鍼法)の効果(8.5)

彼岸花の功罪 …(9.23)

■ 手術を宣告された涙目に鍼で軽快(9月24日

● 狭心痛が治った?!(10月8日)

★ 30週以後の逆子の治療(10.28)

◎ 骨粗しょう症 ミカンに予防効果

  ザクロの種
 (11月)

当院のアスリートたち(11.1)

2006 2005

● 耳つぼダイエットの効果と料金 (1.7)

逆子と安産にお灸の効果(1.29)

健康チェックと体力テスト(3.8)


■ 夜間のトイレ減って、不眠解消!(4月15日)
     前立腺肥大症による尿障害の改善

● 腰痛・膝痛の解消と予防 (6月5日

■ つらい下痢…潰瘍性大腸炎に灸(6月5日)

抗ガン剤による副作用への自然療法の効果 (6.22)

さまざまな病気や予防に対応…9月の疾患(10.2


● 酉と鳥と予防・健康 (1月5日

● 体を温め、免疫力アップと病気の予防(3月1日)

お灸でいろんな病気に対処(3月9日)


● 韓国・ソール 韓方病院体験記(3月27日)

■ ガン化を防ぐ免疫システムと東洋医学(5月9日)

● 新医協関西集会に参加して  (7月5日)
   阪神大震災に学ぶ & 鍼灸のあり方など

■ 片頭痛には、鍼治療も有効!
(7月12日)

★ 全人的医療=統合医療への挑戦(8月1日

● 耳ツボダイエット”って、効く??(11月5日)

2004 2003

不妊治療に助成制度(1月11日)

宿便を治し、ダイエットに効くという『桃の花』
                        (3月3日)

● 無料健康チェックwith医療生協 (3.13)


子どもの夜泣きに小児針(4月1日)

糖尿病にならないために?(7月29日)

元気な100歳めざそっかな!(9月15日)

りんごの驚異的な栄養! (9月23日)

  

冬に備えて…薬より免疫高めて
(11.1)



笑い、駄ジャレは健康と長寿の源 (元旦)

■ 薬漬けで老化が促進?! (1月9日 )

■ 外反母趾を治して、腰痛対策も(3月2日)

● リッツの誕生日(4歳)です(3.6)

イラク戦争反対の首相へのメール(3.18)

SHAME ON YOU Mr.BUSH. (4.6)

■ 夫のタバコで妻の肺がん死亡率2倍に(6月1日)

● アジサイとマラリア (6月10日)

消費税10%…大増税の嵐(6.18)


■ ヤマゴボウとスイカ、利尿効果?(7月21日)

糖尿病の予防チェック、前立腺も(10.1)

自殺を防ごう チェック表(10.11)

● 温めるだけで効果抜群のテルミー(12月1日
2002(平成14年)

★ 今、輝く女性
(8月.13日)

医療費負担増のウラで…?(9.1)

ウィズのモットー(9.13)

痴呆への対処めざして(9.15)

アメリカ型の自己負担医療NO!(10.1)


● がんワクチン約3割に効果 (10.3)

健保料・介護保険料UP!!(10.5)

Not in our name!(10.9) 
  サンフランシスコでアメリカのイラク攻撃に反対する集会とデモ

子どもの体力・運動能力低下(10.11)

市民スポーツ祭に出場(10.13)

あなたの腸内年齢をチェック!?(10.20)


病気を治すはずの薬で…(10.23)


予防処置はお金にならない??(10.25)

高齢者の“命綱”カット?!(大阪府)(10.27)

大気汚染訴訟、勝訴!(10.30)

伊 公共の場でタバコ禁止決定(10.31)

● 700万人の失業者が出る!!?(11.4)

国保証取り上げの制裁 強化??(11.17)


■ 腰痛は足の形からも判断 (11.27)

■ めまいの症状と鍼灸治療(12.1)

● イラク−被爆の子どもたち(12.5)

我がまち紹介@「特攻隊員が泊まった旅館」(12月8日)





















ウィズ・メッセージ
                                             2002年08月13日 (火)

今、輝く女性(Nouvelle de Charle)

             (女性下着の全国誌『シャルレ』'02年7月号の『今、輝く女性』から掲載)

    大病が転機に。保母から整骨院開業へ。

                             佐藤鍼灸整骨院 院長  佐藤 妙子

PROFILE■さとうたえこ■大阪生まれ。大学卒業後、保母教諭を勤める。27歳の大病を機に、医療の道を志す。平成7年36歳で「柔道整復士」の国家資格を取得して、整骨院を開業。現在に至る。)

 大阪で整骨院を開業する佐藤妙子さんは、27歳のときに縦隔奇形腫という気管器系の病気を発病。大学病院で8時間、胸を40針も縫う手術を経験して、「今度は私が病に苦しむ人を助ける番」と発起。36歳で柔道整復士の国家資格を取得されました。当時、長男は3歳。結婚後も保母を続けており、人生は順風満帆の時。手術は成功したものの、保育園には復職せず、新しい世界への挑戦を決めたと言います。

 「覚悟を決めるほどの手術だったので、全快した時は一度死んだ気分(笑い)。もう、やりたいことをするんだと、遅いスタートにもなんの迷いもなかったんですよね」「退いた人生にするか、前に出た人生にするかは、その人次第。自分が病気をしてわかったのが、人はポジティブに生きていたら、必ず、道は開けるということ。どんな出来事にも意味があって無駄はない。そう信じて病気を克服したから、この経験を生かすなら、医療の道と考えたのかも。それと、次の人生では死を恐れない自分でありたいとも思いました。やり残しのない人生なら、人はある意味、充実感すら抱いて、そのときを受け入れられる。」

 こんな思いから、以前通っていた整骨院の先生の元へ、「勉強させてください」と訪ねていたのは、退院から間もない頃。同時に柔道整復士の医療専門学校にも入学。午前中は治療院、午後からは学生。そして、夜には再び治療院へ戻るという生活が始まります。初めての挑戦で、国家試験に合格、開業にこぎつけたのは36歳の夏でした。

 「次の夢は海外で開業。東洋医学のすばらしさを外国の方にも広めたいですね。」
 患者さんとの対話にも時間をさいた親身なケアは評判に。現在も変わらず忙しい生活の中にありながら、次の夢についても目を輝かせてお話してくださいました。

(亡き義母の誕生日に捧ぐ)



The woman who shines now (Nouvelle de Charle)

Months [ 08 ] 13, 2002 (Tue.)

(From the "woman who shines now" of the national arrival magazine "Charle" at the bottom of woman' July, 02 issue to printing)

 Serious illness is at a turning point. From a kindergarten teacher to osteopathy set up practice.

 The director of Sato acupuncture-and-moxibustion osteopathy is Ms. Taeko Sato

(It can sing with PROFILE■Sato Taeko■ Osaka birth.) A kindergarten teacher is worked after the graduation from a university. At the time of the serious illness of 27 years old, it aspires after a medical way. The state qualification of "judo osteopath " will be acquired at the age of 36 in 1995, and osteopathy clinic will be opened. It continues till present.

 Ms. Taeko Sato who opens osteopathy clinic in Osaka is attacked with a disease in the illness of a Respiratory(Bronchus) system called Mediastinum Deformity Tumor at the age of 27. The operation to which no less than 40 stitches sew a breast is experienced in a university hospital for 8 hours, and it is proposed as "the watch which helps those to whom I suffer from the illness shortly."
 The state qualification of judo osteopath was acquired at the age of 36. That time and the eldest son are 3 years old. When after marriage is continuing the kindergarten teacher and life is favorable. Although the operation was successful, it is not reinstated in a nursery but says that it opted for the challenge to the new world.
 "It is the feeling (laughter) which died at once when it recovered completely, since it was an operation to the extent that it opts for preparedness. being [ when what to do had already been done / no illusion of what ]-also in late start" "-- or [ whether it is made the life which retreated, or / making it the life which came out before ] -- the man order Say that that he got sick and understood will surely open a way if people are positively alive. Any occurrences have a meaning and there is no futility. Since it believed so and illness was conquered, considered the medical way, if this experience was employed efficiently. In it and the following life, I wished to be myself who does not fear death. It is people's holding even a certain meaning and a feeling of fullness, and being able to accept that time, if it is the life which does and does not have remnants."
Time [ "please let me study" and having visited from such a thought to the origin of the teacher of osteopathy clinic along which it passed before do not have leaving hospital to between, either ]. The medical vocational school of judo osteopath is also entered simultaneously. They are osteopathy clinic and a student from an afternoon during the morning. And life of returning to osteopathy clinic again starts at night. By the first challenge, summer of 36 years old reached the state examination at success and commencement of business.
"The following dream is opened overseas. Do you want to spread the wonderfulness of Eastern medicine also to foreign one? "
The kind care which spared time also in the dialog with the patient is reputation. Not changing now, either but being in a busy life, also about the following dream, the eye was twinkled and talked.

( to husband's dead mother's birthday)



医療費負担増のウラで…?
2002年09月01日 (日)

 10月から医療制度が変わる。
 70歳以上の高齢者の負担が定額制から1割負担になり、来年4月からはサラリーマンが2割から3割に引き上げられる(自民・公明などの賛成で成立した)。
 不景気に加え、医療費負担増でますます病院に行けず、病気を悪化させる人が増え、余計に医療費がかかってしまう。
 悪循環の最たるもので、ムダの構図ではないか。

 なのに、この不景気の中、医薬業界は政治家に昨年1年間で29億円の政治献金をした(13日、政治資金公表)。

 医薬業界とは医師、歯科医師、薬剤師、看護婦、製薬メーカー、医薬品卸の6つの業界の政治団体のことだ。
 行く先は、トップが自民党の政治資金団体「国民政治協会」で、個人では小泉首相1,200万円はじめ、元厚生族議員。100万円以上の献金を受けた国会議員は59人。

 「負担を分かち合う」(小泉首相)といってた人が、実は自分たちがガッポリもらっていた?!。

 医薬業界の収入は診療報酬や薬代など医療保険財政でまかなわれている。
 その原資は税金や保険料。公共事業での口利き問題と同じように、自民党の政治献金に還流している!



ウィズのモットー
2002年09月13日 (金)

Remember that one ankle is just like another,
no matter whose body it is attached to.

誰のものであろうが、足首は足首だということをわすれるな!『皆を平等に扱うことを忘れるな』
(Norwig is the NFL's trainer)


痴呆への対処めざして
2002年09月15日 (日)

 高齢者の医療は実に多種多様。

 入院を必要とする高齢者は複数の病気を持ち、そのほとんどが慢性的に経過しており、治りきらない病気が多いといわれています。

 しかも、一定期間入院すれば解決するという医療ではなくなってきている。

 したがって高齢者の日常生活という、高齢者の住む環境、精神的な環境、人間関係なども含む環境へも積極的にはたらきかけていかなければならない。
(元日本医師会常任理事・松石久義――「高齢時代を豊かにする地域医療の課題」山田智みさき病院院長『経済』02年7月号)

 ボケ・痴呆はある程度は仕方がないとはいえ、少なくとも、「何よりもまず真剣になって相手の話を聞くこと、相手の嫌がらることを押し付けないこと、これだけで痴呆としての問題行動が起こりにくくなる」(同)。

 寝たいときに寝て、手芸を楽しんだり、少人数の食事など地域に密接にかかわったデイハウスやデイサービス、グループホームの存在は、これからの高齢化社会のキーポイントではないか。


アメリカ型の自己負担医療NO!
2002年10月01日 (火)

 今日から、70歳以上のお年寄りの医療費が定額制から定率制(1割負担)になった。

 人(病気)によっては、医療費が5倍、10倍になる人もいる。
 そして、所得格差はますます開く一方、貧富の差がどんどん広がっている。
 医療を受けれる人とまともに受けれなくなる人が出てくる。

 当院の70歳以上の患者さんは、これまで800円×4回で済んだのが、来院ごとに200円を払うことになった。
 1ヶ月16回以下の人は安くなるが、17回を超える人は負担増になる。

 毎日、来院を楽しみにしているお年寄りは、結構多く、その楽しみを奪うような狡(こす)い仕打ちにはがまんならない。

 「所得が100万円下がると5歳老いることに相当する」
 (近藤克則日本福祉大学助教授「社会的経済的格差による健康の不平等」―『経済』02年7月号No.82)。
 所得格差による健康への影響は少なくない。

 小泉さんや竹中さんらは、アメリカ型の社会をめざしているというが、アメリカ型の自己負担医療では国民の命や健康は守れない。
 アメリカ社会の所得格差=貧富の差は著しい。そして、アメリカの健康保険未加入者は4千万人を超えている。

 少なくとも、医療の立場から見ると、所得格差、貧富の差を少なくして、国民が安心して医療を受け、平和に暮らせることが何よりだ。

There is not little influence on the health by income differential so that "It is equivalent to aging five if income falls by 1 million yen" (Assistant professor Katsunori Kondo Nihon Fukushi University "complaint etc.-of health by social economical gap" "economy" 02 year 7 month number No.82) may be said.

Mr. Koizumi and Mr. Takenaka although it is said that United States type society is aimed at, a national life or national health cannot be protected by United States type individual coverage medical treatment Income differential of the American society = the difference of wealth and poverty is remarkable. And the American health insurance sheep member is over 40 million people.

At least, when it sees from a medical position, it is prainarily that he lessens income differential and the difference of wealth and poverty, people feel easy, he receives medical treatment, and it can live peacefully above all.


子どもの体力・運動能力低下
2002年10月11日 (金)


 子どもの体力・運動能力の低下は一層顕著になっている。

 文部科学省の調査では、持久走(男1500b、女1000b)は、20年前と比べ13歳男子で22秒、女子で17秒遅い。

 親の世代の30年前と比較すると、身長・体重は親より一回り大きいのに、10・11歳の50b走などは、すべて「親以下」だという。

 原因の一つは、運動量の低下。
 体育の授業以外に週に3日以上運動する10・11歳は、男子54〜57%、女子32〜34%。
 親の世代はともに70%を超えていた。

 体力向上の手がかりは、校庭の芝生化という(中央教育審議会の提言)。
 日本では芝生の校庭は2%に過ぎない。老朽化した校舎や汚いトイレとともに、人間の活動の源泉でもあり、これからの日本を支える体力向上や最良の教育環境のための国家予算は知れている。

 どこにカネを使うか、ここでも問われている。


病気を治すはずの薬で…It is the medicine which should cure illness. --
2002年10月23日 (水)

 「病気を治すはずの薬で、私の人生は一変した」

  血液製剤「フィブリノゲン」などの投与でC型肝炎に感染した被害者16人が、国と製薬会社3社に損害賠償を求める訴訟を東京、大阪両地裁に起こした原告の訴えだ。

 この20年間の政府の怠慢(※)が、80年代以降だけでも、約20万人以上に投与され、1万人以上が感染したという(旧ミドリ十字の推計)。

 しかし、政府は「行政に過失はなかった」と結論付けた(今年8月の報告書)。

 国内のC型肝炎患者は推定で200万人以上にのぼる。

 日常生活ではほとんど広がることがないといわれるC型肝炎がこんなに広がったのは、血液製剤の投与はじめ、輸血や集団予防接種などの医療行為だ。
 国は、その危険性や代替治療法まで分かっていながら(旧厚生省監修の本、73年)、安全確保のための対策を怠り、被害を拡大してきた。責任を認め、原告への損害賠償を行うべきだ。

 ※ 国は88年、「肝炎感染の危険性がある」と使用を制限。被害を拡大したと問題になっている出産時   の止血剤としての使用が禁止されたのは98年。米国での製造承認取り消しから、遅れること20年。


予防処置はお金にならない !?
2002年10月25日 (金)

 今の保険制度のもとでは、予防処置はお金ならない。

 例えば、「歯医者さんには歯が痛くなったら行く」という誤った常識が支配的だが、こうした風習(?)や歯科業界の体制に逆らって、経営上のリスクを背負って、予防歯科(preventive dentistry)に取り組んでいるDentisitがいる。

 山形県酒井市で22年間、予防を中心に歯科医療を続けているDr.熊谷で、「実は、学校検診が歯を失う大きな原因になっている」という。

Dr.熊谷によれば、

「虫歯になるには歯磨きが下手とか、間食が多いなどの原因がある。
 日常的なケアや予防指導をせずに、ごく小さな穴を削って大きくて詰め物を入れるだけだと、すぐにその周りに虫歯ができて、また削らなければならない。
 これを繰り返しているうちに健康な歯質はどんどん減って、やがてクラウンを被せることになるなる。
 そのクラウンもやがて緩んで、また虫歯になり、やがては抜いて入れ歯を入れることになる。
 これは不毛のいたちごっこだ」。

 歯に限らず、他の治療などにも同じことがいえる。

 DMFT(decayed,missing and filled teeth)=虫歯、欠損歯、詰め物をした歯の数の指標。
 日本の12歳児の平均DMFTは2.9本で、全く虫歯がない子の比率は30%だが、酒井市は1.3本と55%。 熊谷先生のところにかかっている子どもたちは、0.2本以下、虫歯のない子が9割。これは世界一を誇るスウェデンのカールスタット市を上回る成績だという。

 先生は、

 「入れ歯に掛けるお金を、前もって予防処置に使った方がずっと幸せ。
 課題は保険制度の改革と市民教育だ」と主張。

 「唾液検査(saliva test)を受けて、虫歯になりやすい体質かどうか、ぜひ調べておくといい」
というアドバイスはうれしい(『週刊ST』FRIDY、OCTOBER 25,2002)。

 ほとんど不必要だと思われる高価な薬を処方する。そこにお金を掛け、場合によっては薬によって、人間が持つ自己回復力(自然治癒力)を弱めてしまう。むしろ、副作用などによる別の病気をつくってしまう場合だってある。

 医療費の負担を国民に強いて、受診抑制をはかり、結局重症化して、余計に医療費がかかるという悪循環の道を突き進む政府のやり方こそ、あらためるべきだ。

 医療コストの軽減や病気を作らないために、「予防こそ治病」の立場が、いま強く求められるのではないか。
 東洋医学はその大事な一端を担いうるからこそ、世界中で注目されている。

あなたの腸内年齢をチェック!?
2002年10月20日 (日)

●健康チェックに最適な一つは、ウンチ。

 気持ちよく出れば水分含量80%前後。におわず黄褐色で、バナナ的には2.5本〜3本。

 大腸は病気の種類がもっとも多い臓器。
 小腸で消化し切れなかった食物繊維を消化して水分を吸収し、便をつくる。
 便の80%は水分で、残りが固形物。固形物の約半数は腸内細菌。

 健康に役立つ微生物で腸内環境を管理するのに、乳酸菌やビフィズス菌の入ったヨーグルトがいい。

 注意すべきは、「特定保健用食品」マークがついているものを選ぶこと。
                               (弁野義己・理化学研究所微生物機能解析室室長)

【あなたの腸は何歳?『腸年齢チェックシート』】 (にチェックしてください)

食事に関する質問 生活習慣 トイレに関する質問
□朝は慌しくて時間がない
□朝食はとらないことが多い
□食事の時間は決めていない
□野菜不足だと感じる
□肉が大好き
□外食は週4回以上
□牛乳や乳製品は苦手
□タバコをよく吸う
□顔色が悪く、老けて見られる
□肌荒れや吹き出物が悩みの種
□ストレスをいつも感じる
□運動不足が気になる
□寝つきが悪く、寝不足
□トイレの時間は決まっていない
□おならがくさい(と言われる)
□息まないと出ないことが多い
□排便後、残便感がある
□便が硬くて出にくい
□コロコロし便が出る
□ときどき便がゆるくなる
□便の色が黒っぽい
□出た便が便器の底に沈みがち
□便がくさい。くさいと言われる
チェック数(   )個 チェック数(   )個 チェック数(   )個
合計(     )個

【診断】

 ◎チェック4個以下…実年齢より若く理想的

 □チェック5〜9個…実年齢よりやや高い
             (実年齢より10歳ほど高い。生活習慣の改善を心がける。

 ★チェックが10〜14個…腸年齢の老化が進行
             (腸内環境はかなり危ない。実年齢より20歳は高い。生活習慣の改善が不可欠)

 ■チェックが15個以上…腸はもはや老人
             (腸内環境は危険。実年齢より30歳以上。がんなどの怖い病気にかかっても不思議              ではない。いますぐ生活習慣を改めること。)

       (監修・理化学研究所 微生物機能解析室 弁野義己氏。朝日新聞提供‘02年10月20日付)

高齢者の“命綱”カット?!(大阪府)
2002年10月27日 (日)

 大阪府は、国の医療制度改革に伴って府の財政負担が増えるとして、老人医療費助成制度の廃止や、障害者・母子家庭医療費助成制度を縮小する方針を固めた。

 老人医療費助成制度の存続は、

 「収入の少ないお年寄りの命をつなぐ最後の砦ともいえる」(西原みゆき・日本共産党大阪府議)。

 府の一般会計に占める同制度の予算割合は、ずっと1%制度で推移。今年度当初予算では0・51%に過ぎない。
 同府議は、高齢者の実態をさまざまな角度から明らかにしつつ、

 「同制度は財政危機の原因ではなく、医療費を削っても財政危機は解決しない」と主張。

 これには納得。

 高齢者の実態とは?

 ――総務省の全国消費実態調査('99年)では、大阪府の世帯収入の平均は年722万300円、60才以    上の世帯はその8割の590万5千円。
    うち消費支出に占める保健医療費は、全体で平均3.39%なのに対し、65歳以上の世帯では      5.58%と約1.7倍の負担。

 ――大阪で昨年1年間に自殺した60才以上の744人のうち、約半数は「病気」、約2割は「経済問題」    が理由。


大気汚染訴訟、勝訴!
2002年10月30日 (水)

 自動車排ガスによる健康被害をめぐる「東京大気汚染訴訟」(第1次)で、東京地裁は、国や都、首都高速道路公団の責任を認める原告勝訴の判決を下した。

 判決は、幹線道路から50b以内に住む住民を対象に排ガスと健康被害との因果関係を認め、国や都などに損害賠償を命じた。

 道路公害対策を怠ってきた国の責任を認めたのは、‘95年の西淀川訴訟以降、川崎、尼崎、名古屋南部に続いて、5回目。

 国は、「大気汚染は改善された」として、‘87年に「公害健康被害補償法」を改定し、翌年、大気汚染公害の指定地域を全面解除、新規の公害病認定を打ち切った経過がある。

 しかし、その後国の認定患者は減っても、公害患者は増え続けている。


イタリア 公共の場でタバコ禁止決定
2002年10月31日 (木)

 イタリアの上院は、人が出入りする公共の場での喫煙を全面的に禁止する法案を可決。

 22日までにインターネットを通じた全国紙レプブリカの調査では、国民の85%が法案に賛成、反対は15%に過ぎない。

 同法案は喫茶店や会社などを含む公共の場での喫煙を全面禁止し、場所の所有者や運営者が喫煙者を受け入れる場合にも、喫煙室と空気清浄装置の設置を義務付け。

 違反者への罰金は最大で250ユーロ(約3万750円)で、近くに妊婦、12歳以下の子どもがいると倍になる。

 イタリアでは毎年約9万人がたばこが原因の病気で死亡し、うち8000人は受動喫煙による被害。
                                 (「がんとのたたかいのためのイタリア連盟のまとめ)


国保証取り上げの制裁 強化??
2002年11月17日 (日)

 国民健康保険料(税)を納められない滞納世帯が全世帯の18%、412万(大阪38万)にのぼるという。

 取り上げられた世帯で被保険者資格証明書の交付世帯が昨年の2倍の22万5千(同1万2千)、有効期限付きの短期被保険者証交付世帯77万8千(同6万2千) →(厚労省の全国調査、今年6月1日時点)。

 資格証明書では、病院の窓口でいったん医療費全額を支払う(あとで、市町村から7割が償還払いされる。 そのために、病院にいくのをためらって、治療が遅れてしまい、亡くなるという悲惨な例も相次いでいる。

 保険料(税)の収納率を上げるために、国保証を取り上げるという制裁措置が医療、社会保障で許されていいのか?!

 国保料を払いたくても払えない深刻な不況をつくりだしておいて、保険料をどんどん引き上げてきた国の責任は重大だ。

 まず、高い保険料を払えない実態や、病院にも行けずに命まで縮めている実態にこそ、耳を傾けることが先決ではないか!


イラク−被爆の子どもたち
2002年12月05日 (木)

 イラクの現実を知るために、アメリカ・フレンズ奉仕委員会は今年5月イラクを訪問。
 その時の印象をジョアンヌ・コマフォードさん(29)が語った。

 イラクではとても多くの人たちが苦しんでいる。
 治療可能な子どもたちが亡くなっていくなど、ひどい人道的な惨禍があった。
 5歳未満の子どもたち75万人が経済制裁のために死亡した。
 その7割は治療や予防が可能で、多くは汚れた水が原因だ。
 下水処理場の破壊と停電のために、毎日50万トンも未処理の汚水が国内の河川に流れ込んでいる。
 村の長老は“汚い水のために、子どもたちの心も体も衰弱している”と語っていた。
 私たちが援助した浄水施設が最近、完成した。

 白血病に罹っている10代青少年たちはじめ、重いガンにかかっている。
 ガンは湾岸戦争中に米軍がばらまいていった300トンもの劣化ウラン弾のせいだ。
 イラク国民の多くが劣化ウラン弾に被爆しており、これからガンの発生率が急上昇するだろうと現地の医師たちは予想している。

 ところで、米国の平和運動は発展している。ベトナム戦争以来かかわってきた人々に加えて、ブッシュの終わりのない戦争に目覚めて加わってくる人たち…。
 若い人たちも積極的だ。
                                   (日本平和大会国際シンポ、「しんぶん赤旗」12月2日付)


SHAME ON YOU Mr.BUSH.

2003年04月06日 (日)

 “We are against this war(on IRAQ),Mr.Bush.
  Shame on you,Mr.Bush,shame on you.
  And any time you got the Pope and Dixie Chicks against you, your time is up.”
                                        (Michael Moore)

 3月23日のアカデミー賞授賞式で、アメリカの銃社会を批判した映画『ボウリング・フォー・コンバイン』が長編ドキュメンタリー賞に選ばれたときの、マイケル・ムーア監督の受賞スピーチだ。
             Pope:法王。
             Dixie Chicks:米人気バンド。
             それぞれ米英のイラク攻撃を批判。

 「信じられません。
 世界中の人々が反対しているのに劣化ウラン弾まで使って、攻撃を続ける侵略軍。
 戦争とは、人を殺すことです。
 今、私たちのやるべきことは、
 みんなでもっともっと大きな声を出して戦争をストップさせることです。
 イラクの子供たちを守ることです。
                                             吉永小百合」

               (4月2日、東京・明治公園で行なわれた“イラク攻撃即時中止・有事法制ストップ 4・2大集会”
                   に寄せられたメッセージ)


●GLAYのTAKUROは「誰にも奪えないものがある」と反戦詩を書いた。

●「いかなる戦争にも反対」とホームページで訴える坂本龍一。

●宇多田ヒカルも反戦メッセージを出した。

●「戦争は平和への近道じゃない。どうか世界平和を!」とMISIAも。

●藤原紀香は「日本もこの虐殺に加担するようになるなんて。STOP THE WAR!」と表明。

 ……



我がまち紹介   @「特攻隊員が泊まった旅館」
2002年12月08日 (日)

「我がまち紹介シリーズ」を始めてみようと思う。

(その1)「特攻隊員が泊まった旅館」

 近鉄久宝寺口駅から、八尾駅方面ガード下に我が「佐藤鍼灸整骨院」がある。そこを左に曲がって約50b西の方へ行くと左側に、小さな旅館風の民家がある。八尾市末広町にある旅館旧「政乃家」だ。

 今から、57年前の1945年6月2日、特攻隊「国華隊」の隊員12名が、福島から宮崎県の都城の基地に向かう途中、航空機のトラブルのため、大正飛行場(現八尾飛行場)にいったん着陸した。その間、隊員達は飛行場から、いまでは車でおよそ15分ほど離れた旅館「政乃家」に泊まることになった。隊員達は、宿のおかみさんに寄せ書きを書いたノートを残していったという(「語りつごう 目で見る八尾の戦跡」八尾戦争展実行委員会発行)。
 ところで、60年近く立ったいまの日本で、今度はアメリカの戦争に手を貸して、イラク攻撃をにらんだインド洋へ最新鋭の偵察レーダー機器を備えた海上自衛隊イージス艦「きりしま」を派遣するという。
 なぜ、派遣するのか明確な理由も浮かばない政府は「いま出ている軍艦は、クーラーがきかなくて、暑くて困っている」といったという。

 国連決議に反し、もしアメリカがイラク攻撃を行ったら、「中東の地獄の門を開ける」(ムーサ・アラブ連盟事務局長)ことになり、イージス艦は反撃の対象になる。

 “9・11”の犠牲者を一人ひとり名前で克明に印したアメリカは、アフガニスタンへの報復攻撃で子どもを含む3000人とも言われている犠牲者の数さえ、いまだ発表せず、調べようともしていない。こんなことをイラクで繰り返させてはいけない。

 「政乃家」の前を通る度に、無謀な「戦争」でどれだけ多くの人間が死に悲しんだか、いろいろ考えてしまう。
 二度と戦争をしないと誓った憲法9条こそ、世界中の平和の規範になるのに…。

 イージス艦の派遣はアメリカの戦争発動への加担だけでなく、憲法9条と国連憲章をないがしろにする平和への挑戦だ。



外反母趾を治して、腰痛対策も
腰痛は足の形からも判断
2002年11月27日 (水)

 “足部の機能を見ずして、腰痛を見るなかれ”

といわれるように、例えば、外反母趾一つで腰痛が発生する。
 
 つまり、腰痛の陰に、身体を支え、クッションの役目をする足のアーチの低下があるからだ。
 偏平足などはまさにそれにあたる。

 外反母趾あるいは内反小趾になっても、ゆるんだ関節を引き締め、足底のアーチを再生することも可能だ。

 矯正や予防には、

 @当然、先の窮屈な靴を履かないようにする

 A母指と中指の間にし切りになるものを挟んでしっかり固定し、外出時にも靴の中で予防する
                    (東急ハンズ社のスポンジ状パットWALKER500円など)

 Bアーチを補助する靴や足底板を使用する
                    (三進興産社のソルボ外反母趾・内反小趾トゥガード1,480円など)

 C毎日、お風呂の中ででも、足の指を使ったジャンケンのパーをして鍛える、あるいはイスに座って  かかとを支点に足先を左右に振る体操をする

 D毎日、足を平行に前向きにし、拇指から小指までしっかり開いて、爪先立ちをゆっくり運動する

などなど。

 とくに、おすすめは、Dで、かかとをあげて伸びきったところで、お尻や肛門にも力を入れてしめる運動を行うと、失禁防止やヒップアップにもつながる。

 足のアーチがゆるむと、土踏まずのない、偏平足になる場合が多い。
 そうなると、かかとの骨が内側に傾いてしまう外反扁平足になり、脚の疲れ、足底や足首、膝の内側に痛みが生じたり、腰痛を引き起こしたり、内臓疾患につながったり、さまざまな病気の原因にもなりかねないから、要注意。

 がんばってみよう。わからなければ、当院にでも気軽にご相談下さい。





薬漬けで老化が促進?!
2003年01月09日 (木)

「可能ならすべての薬を中止せよ。」

 (アメリカで評判の医師用教科書『ドクターズ・ルール425』−邦訳『医師の心得集』より)

「いつもたくさんもらっている薬を、お歳暮代わりに、〇〇医院の先生に返したろか、と思ってんねんけど…」

「そやな〜。私もほんまにいろいろようけ、もらってるけど、ほとんど飲めへんわ」…

 うちの治療所での患者さん同士の会話だ。

 おうちの引出しなどに、富山の置き薬とは違う、いろんな薬が、おそらく、どの家庭でもあるはずだ。
 いまや、日本の医療は薬漬け状態だ。
 確かに、背景には新しい薬をつくっては、値段を吊り上げ、厚生労働省のお墨付きをもらっては、高利益を上げている製薬会社が存在していることも事実だ。

 しかし、ドクターは、とくにお年寄りの訴えが多様であるために、行く先々のお医者さんで、それぞれの病状に応じて、いろいろの薬を出す。

 うちの治療所の患者さんでは、痛み止めや降圧剤を飲んでいる人が実に多い。しかも、必ず胃薬はつきもの。さらに、睡眠薬や循環改善剤……。

 「免疫からの警鐘」をとなえる安保徹・新潟大学教授によれば、痛みは生体の治癒反応の一つだ。これを薬で抑えると、治癒反応をも抑えてしまうことになるという。まず、痛み止め。これをずっと続けると、交換神経を刺激して、老化の促進を引き起こし、高血圧や胃を悪くする粘膜破壊、関節や骨の変形、尿や腎の異常、白内障、発ガン…といろんな病状や病態をつくる(安保徹著『医療が病をつくる』)。そのために、薬がどんどん加わっていく。薬漬けの悪循環だ。
 こうした薬漬け状態が作り出す老化や様々な病気の進行から逃れるためには、極端に言えば、薬を全部止めることだ。

『ドクターズ・ルール』は、いう。

「可能ならすべての薬を中止せよ。不可能なら、できるだけ多くの薬を中止せよ」

「薬の数が増えれば副作用の可能性がねずみ算的に増える」

「4種類以上の薬を飲んでいる患者は医学知識の及ばぬ危険な領域に入る」

「高齢者のほとんどは薬を中止すると体調が良くなる」

 正しい薬の使い方は当然のことだ。一方で、誰にでもある自然治癒力(免疫力)を高める方法に、もっともっとシフトしていってもいい。






笑い、駄ジャレは健康と長寿の源
2003年01月01日 (水)
 笑いには、脳を働かせるメカニズムがある。抗がん作用もある。

 笑いの医学的効用の研究が進んでいる。

●寄席に連れて行った約20人に3時間笑ってもらった後、血液検査をしたところ、抗がん作用のあるリンパ球の一種=「NK細胞」が活性化した。
  (1993年。「日本笑い学会」副会長の昇幹夫・産婦人科医。『読売ファミリー』2003.1.8号より)
●笑いの舞台観賞前後に、参加者の唾液を採取。ストレスの指標となるホルモン成分「コルチゾール」値が減少した。
 (2002年、大阪府立健康科学センター。同上)
 声を出して笑うことで、横隔膜が広がり、からだに酸素がたくさん入ってくる。酸素は交換神経を刺激するから、
からだは活性化されてくる。

 また、笑いにはリラックスした安らかな心から出てくるものもある。
 しみじみとうれしいときもある。
 「いつも副交換(神経)」である。
 リンパ球は増え、分泌が高まる。笑いすぎて涙も鼻水も出て、知覚神経も敏感になる。
(安保徹著『未来免疫学』)
 駄じゃれや“親父ギャク”は、脳のひらめきだ。

 確かに、若い連中にとって、いや、連れ合いにも、「さぶ〜」と応酬される。
 この親父ギャクこそ、脳のカンフル剤だ。
                    (大島清・京大名誉教授・脳科学者『温泉と駄ジャレと手料理が脳に効く』)

 駄じゃれや親父ギャグは、長年培ってきた脳の働きの蓄積による“ひらめき”だ。
 このヒラメキの脳は前頭連合野で働き、人の一生を通して発達し続けていく。

 創造や連想に関わる脳の働きは、血流をよくすることにつながる。

 また、この前頭連合野は脳の自己機能の最高中枢でもあり、人で特に発達したブロードマンの十野といい、“自己を理解する”働きをもつ。

 自己を理解するということは、正しく行動し、生きることを助けてくれる。
 ボケ予防にもなり、人間らしさをいつまでも保ち続けることにつながる。

 不況やリストラをすすめる悪い政治をやめさせる流れを理解する。

 医療や福祉の国民への容赦のない負担増が最悪の悪循環を招くことを知る。

 金持ちが政治家をカネで脅しながら提唱する消費税16%増税に怒りを抱く。

世界中とアメリカ本土でもベトナム反戦運動以上の高まりを見せるイラク攻撃NO! の声。

 理解すれば、解決方向も見えてくる。
 人類の理性と平和への希望が生まれてくる。

 人間らしさを自覚できることは、脳の働きを前向きにしてくれると思う。

 そして、親父ギャグにいっそう磨きをかけ、ちょっとでも笑いを与えながら、
 そして自己を理解しながら、人間らしい世の中のための正しい行動を少しでも歩み続けたい。

 2003年の年頭に当って。






めまいの症状と鍼灸治療
2002年12月01日 (日)

 「めまい」の症状とは、

 ・自分や自分の回りがぐるぐる回る-----(回転性めまい vertigo)
 ・ふわふわ浮いたりする感覚 --------(浮動性めまい dizzness)

 平衡感覚を失う(平衡失調)体制感覚や聴覚系、視覚系などの情報処理に異常が生じた状態のことをいう。

 (1) とくに激しいのは回転性めまい

 目をつぶると自分自身がぐるぐるまわる感覚だが、そんなに長くは続かない。
 めまいが止まっても、またやってくる(反復性)。
 これには、耳鳴りや難聴が伴うことが多い(末梢前庭系のめまい)。

  → メニエル病(めまい、耳鳴り、難聴の三兆候が特徴)、内耳炎、内耳障害などが考えられる。
    聴覚検査がいる。

(2) 耳鳴りや難聴がなく、一過性のめまい

 
肩こりや頚椎のゆがみ、高血圧などから、一過性の脳循環障害が考えられる(頚性めまいなど)。
 循環障害が持続するなら、意識障害を伴う場合も出てくる。
 また、過度のストレスや心気症、抑うつ症などの心因性のめまいもある。

  → 起立性低血圧、貧血など。

(3) 目の前が真っ暗になったり、失神する場合は、要注意。

 原因によって、生命に危険のある病態も数々ある。
 例えば、めまいが軽くても、長く続く場合で、フラフラしたり、クラッとするめまいだ。
 随伴症状は、運動失調や片麻痺など。
 手足がしびれたり、ろれつが回らない、飲み込みが悪いなどが生じたら、すぐ病院へ。

  → 中枢神経系の疾患が考えられる。

●検査は、簡単。

 まず、平衡感覚を調べる。

 @足をそろえて立ち、目をつぶってグラグラするなら、抹消前庭系の障害

      ※過労や老化などで、内耳の微小な耳石がはがれ、それが半規官内をただようことでも、めまいが起きる。この場合は、頭         をまず、楽なうつぶせの状態で、頭を下げて20〜30秒間、次に横向きになって、やや頭を下げ20〜30秒間、最後にゆっく         りと仰向けになって20〜30秒間の順で、ほとんどすっかりめまいがおさまる。

 Aもし、開いたままでもグラグラするなら、中枢前庭系の障害

  小脳障害など)といわれる(ロンベルグ試験)。
  他に、爪先とかかとを一直線に揃えて直立して確認する方法もあり、結果は同じ判断になる(マンテスト)。

●中枢前庭系のめまいかどうか、判別する手掛かりとして、
 
  @嘔吐

  A眼振
      目の前に指先を出して視てもらったり、頭の位置を変えたりしたとき、目があちこちに動いたり、        垂直方向に動いたりする。
      「目が一定の周期性をもって繰り返し同じ運動をすること」

  B頭痛を伴う口唇のしびれ

  C二ヶ月も原因不明のめまいが続く

 D頭を一定方向に傾けて発症、などなど。
    この場合、小脳や脳幹に腫瘍ができていたり、クモ膜下や小脳   の出血、梗塞などが考えられる。

 ◆めまいが起きたときは、暗めの静かな環境で、本人が一番楽な姿勢をとって安静にすること。
  めまいを伴う突発性難聴の場合は、放っておくと聴力が回復しないときもあるので、すぐ受診を。
  鍼灸は非常に効果がある)

 ★鍼灸治療はめまいの症状に対して、抹消器官、神経経路、中枢部の血流を改善し、著効のあらわれることが多い。




イラク戦争反対の首相へのメール
2003年03月18日 (火)

小泉首相へ

 ブッシュ大統領は、フセインへの最後通告を出し、国連決議なしで、何が何でも武力行使を行おうとしている。

 ヒロシマ・ナガサキの体験を持つ被爆国の首相として、世界の民主主義を標榜するブッシュ大統領に「戦争による解決ではなく、平和的解決にこそ努力して、民主主義の模範たれ」というべきだ。

 湾岸戦争でのDU(劣化ウラン弾)による放射能汚染などでいまなお苦しみ、傷跡が癒えないイラクの子供達に、追い討ちをかけるような悪魔の循環に手を貸すようなことをすべきではない。

 以上のような、メールを首相官邸に送った。

(送付先)http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html



たばこが妻の肺がん死亡率2倍に
2003年06月01日 (日)

 タバコが健康に悪いと思っても止められない人は以外に多いのではないか?

 本人がタバコのせいで、肺がんなどによる生死のリスクを背負うのは、その人自身の問題だ。

 しかし、吸わない人までタバコのせいで、いわゆる伏流煙とか間接喫煙とかで、全く間接喫煙のない環境にある人の2倍も肺がんによる死亡率が高くなるという結果には唖然とする。
 それが最愛の妻や家族だとしたら…。

 わが国では、男性の死因のトップは肺がんだ。
 しかも喫煙本数が多い人ほど肺がんによる死亡率が高くなる。

 タバコを吸わない人に比べ、

 ●毎日10本吸う人は4倍多く死に
 ●20本吸うと5倍
 ●3〜40本吸うヘビースモーカーになると15倍

 肺がんで死ぬ確立が増えるという結果が出ている。

          ※国立がんセンターが16年間、20数万人を追跡調査した結果報告。

 さきほどの間接喫煙による影響をもう少し詳しく見てみる。

 男性の喫煙率は52%で、女性は13%というから、夫婦間でも夫が吸い、妻が吸わないというケースも多くなる。
 もちろん、両方とも吸わないというケースもある。

 この「両方吸わない」を1とすると、「夫のみ20本以上吸う妻の肺がん死亡率」が2という結果が出ている。 もちろん、この場合、妻はタバコを吸わない。
 同じ調査で、アメリカでは3.1、密閉度が高い石の家が多いギリシアでは3.4になるという。

 ところで、こんな調査結果もある。

 「タバコを吸わずに、毎日緑黄食野菜を食べている人の肺がん死亡率」を1とすると、「25本以上吸って、しかも毎日緑黄食野菜を食べない人」の肺がん死亡率は12.4倍にもなる。
 しかし、タバコを吸っても、緑黄食野菜を毎日食べ続ける人では、12.4倍が7.2倍に減るという。

 (以上、『全日本鍼灸学会雑誌 2003年5月 第53巻2号』森本兼嚢氏・大阪大学大学院教授「Lifestyle and Health」より)

 愛煙家にとっては朗報かな??
 タバコを止めれない人は、せめて緑黄食野菜を毎日たべることだ。
 ライフスタイルを少し変えてみるだけで、肺がんのリスクを減らせるわけだ。

 こういう結果に注目した私自身、18歳から吸ったタバコを20年間吸い続けたとはいえ、きっぱり、禁煙に成功し、いまでは禁煙歴15年。
 おかげで、ヘビースモーカー時代にときどき襲っていた急性胃炎から、いまでは解放され、最愛の妻の肺がんリスクをも激減させているんやと、胸を張っているところだ。
 でも、お酒は、生涯の友として、長〜く付き合っていこうと思っている。現在、ビールのあとに熱〜い焼酎or泡盛のお湯割り。つまみは、ミミンガかキムチってところ。

 最後に、タバコを吸わない妻から愛煙家の夫に一言。

 「あなたの健康のために、せめて緑黄食野菜を毎日食べれるよう協力するわよ。
 でも、私を生涯愛するなら、タバコをやめることよ、ね!」。

アジサイとマラリア
2003年06月10日 (火)

 うちの玄関に植えた白紫陽花が今年も、花をつけた。

 紫陽花は普通、青から赤紫に変化するから「七変化」ともいわれるが、白は珍しいと思って買ってきたのだった。

 紫陽花の花といっても、雨に濡れて鮮やかに見えるのは花びら(花弁)ではなく、がくが発達したもので、本当の花は一つひとつの花の真中にある小さな粒のようなもので、目立たず、奇麗さはない。手鞠型という種類で、この野生原種はガクアジサイと呼ばれるらしい。日本原産だが、19世紀にシーボルトがヨーロッパに持ちかえったという。また、多くの栽培植物が中国から渡ってきたなかで、アジサイは例外的に中国に渡った植物だ。(堀田満編『京都 植物たちの物語』より)

 花の色(がく)は土壌の酸性度によって変化し、酸性なら青色が、アルカリ性なら桃色が強くなるという。白だったら、どんな土壌が適しているんだろうか? 我が家では毎年、咲いているわけだから、酸性度は調べたことはないが少しは相性がいいことになる。

 ところで、紫陽花は薬にもなる。花は解熱薬になり、葉は瘧(おこり)の治療薬になるというが、「花」はがくなのか、いわゆる「花」の部分なのか、わからない。両方使えば、間違いないと思うが、試したことはないので、効能のほどはなんともいえない。
 瘧とは、マラリアのことで、かつて日本でも流行った時期があった。現在ほとんど、国内ではみられない。

 マラリアは、熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形マラリア原虫の4種を病原体とし、主にハマダラカが媒介する。一般に、熱帯熱マラリア以外は経過は良性で、死につながることは滅多にないが、問題は熱帯熱マラリアで、国内でも死亡例が報告されている(1984年〜1993年の10年間で399人の罹患中6人死亡。

 1995年のWHO報告によれば、全世界人口の40%以上が居住する地域に蔓延しており、年間3億人以上の感染者と流行地の5歳以下の小児を中心に150〜270万人の死者を出している。『家庭医学大全科』より)。この病気の症状は重く、嘔吐、吐血、黄疸がときに見られ、すみやかに適正な治療をしないと脳性マラリア、急性腎不全、肺水腫などの致命的な合併症も併発する危険がある。

 海外旅行からの輸入マラリアは依然として増加し、観光旅行者の感染が最も多いが、温暖化による日本の気温が年々上昇しており、それにつれて熱帯熱マラリアの病原体の北上、本土への上陸も危惧されている。


 梅雨に咲き誇る紫陽花の美しさは季節の象徴だが、四季折々の風物詩が狂わせてしまう温暖化の防止はまったなしの課題だ。

 蚊と言えば、いまアメリカで流行っている西ナイル熱が問題になっている。鳥が保菌する西ナイルウイルスがやはり蚊を媒介にする。すでに、アメリカでは昨年300人余、今年もそれに近い死者が出ている。SARS騒ぎのなかで、注目されるのは、西ナイル熱といってもいい。日本への上陸も時間の問題とも言われている。これについては、あらためて「メッセージ」化したい。


消費税10%…大増税の嵐
2003年06月18日 (水)

 小泉首相の諮問機関である政府税調調査会は17日、消費税10%以上への引き上げと所得税、住民税なども増税が必要だという中長期の「税制改革」方針をまとめた中期答申を首相に提出した。

 消費税10%になったら、4人家族で新たに年40万円ほどの出費増になる。世論調査では消費税増税に反対は64%(『朝日』18日付)。

 大増税の理由は「少子・高齢社会を支える」ためだという。「今後、社会保障の増加は不可避だが、財政が厳しいから、社会保障の給付を抑えるとともに増税が必要」だという、ひどい身勝手さ。

 高齢社会は当然予測され、社会保障費が増えるのも当然。それを知りながら歴代の政府は、大企業の法人税を大幅減税し、所得税の最高税率を引き下げて「基幹税」を空洞化してきた。

 逆に、低所得者ほど負担が重い消費税を導入し、税率を引き上げ、医療・福祉など国民への負担増を繰り返し押しつけてきた。つまり、大企業や高額所得者の負担を減らすために、圧倒的多数を占める中・低所得層や中小企業にその負担を転嫁させてきたのだ。

 そして、6年前の消費税率引き上げと医療負担増こそ、日本経済をどん底に突き落とした原因ではないか。
 
 財政赤字は、国の税収が激減したことと、ムダな公共事業や世界第2位の軍事費が生み出した結果だ。

 中期答申は、こうした経済の大失政をさらに突き進み、結局「少子・高齢社会を支える」土台を根こそぎ破壊してしまうとんでもない内容だ。


中庭のヤマゴボウと利尿効果?
2003年07月21日 (月)

★毎年、中庭と裏庭に巨大な葉っぱとぶどう状の房を持ったヤマゴボウ」がにょきにょきと成長する。
  秋には、いつも根っこを残しながら、地表に表れている茎ごととってしまうのだが、今年もやはり、出て   きた。

 中庭のヤマゴボウをみた患者さんのなかには、

 「ぶどう状の房は染料に使えないか?」

 「根っこは食べられへんの?」

 などと、いろいろ提案をしてくれる。

 残念ながら、期待には応えられそうもない。
 「染料にはでけへんかった」と実際、試した患者さんもいた。

 ヤマゴボウは、「ヤマゴボウ科の多年草。中国原産。高さ約1b。葉は薄く軟質で長楕円形。夏、白色の小花を開き、めしべは八個が菊座形に癒合。液果は紫黒色・扁球形。根は巨大で、生薬の商陸といい、利尿薬とするが有毒。都会地では北米産の気化種ヨウシュヤマゴボウが多い。」(『広辞苑』第五版)

 「ヨウシュヤマゴボウ茎は高さ約2b、紅紫色。夏、総状花序に白色の小花を開き、液果は、濃紅紫色。ヤマゴボウと違い、子房が菊座形にならず、果実の房が垂れる。」(同)

 とあるので、我が家のものはどうも後者の方だ。

 ところで、ヤマゴボウの根っこや茎を「利尿薬とする」とあるが、ヤマゴボウの漢名を「商陸」、根茎を乾燥させた生薬を商陸根といって、硝酸カリを含むために利尿効果がある。しかし、有毒?とあっては、素人には使い難い。

★ そこで、もっとも利尿効果があるのは、スイカと決まっている。
  おしっこが出にくくなったりすると、“むくみ”にもなるが、スイカはそのむくみ解消の特効薬だ。

 スイカは西瓜とか、水瓜とか書かれるが、原産地はアフリカのカラハリ砂漠という。砂漠で食べるまでもなく、暑い日本でも夏のスイカは最高だ。
 ただ、冷え性の人や胃弱体質の人は食べ過ぎに要注意。
 そんな人には、煮汁にしたり、煎じて飲むことをおすすめする。

 むくみはたいがい、腎機能の低下による。水、塩類(ナトリウム)、蛋白質などの代謝物質の排除の異常があらわれ、症状として現れやすいのがむくみ(浮腫)と蛋白尿だ。
 腎臓は体内の不要物、水に溶ける老廃物をおしっことして出してくれる。体内の水分を一定に維持するのに欠かせない臓器だ。
 その異常は、糸球体腎炎(腎炎)やネフローゼが代表例で、ひどくなると腎不全や尿毒症となって、危険な病気になる。

 鍼灸は昔から、慢性糸球体腎炎・慢性ネフローゼなど、慢性の腎臓病に効果が良いとされている。

 おしっこの出具合(多尿や乏尿)、むくみなどの症状があれば、ぜひ、鍼灸をおすすめしたい。




糖尿病予防のためのチェックポイン
2003年10月01日 (水)

□ 年1回の定期健診を受けている。

□ 血糖値は正常だといわれた。
 (空腹時血糖値 …… 110mg/dl未満
 OGTT2時間値…… 140mg/dl未満)

□ 体重をきちんと管理している。

□ 適度な運動をしている。

□ 酒はたしなむ程度だ。

□ タバコはすっていない。

□ 両親や兄弟に糖尿病の人がいない。

□ 食事は腹八分目で、早く食い・大食いはしない。

□ 食べ過ぎたり、脂肪を取りすぎたりせず、バランス   よく食べている。

  ※答えがNOの場合は生活習慣病を見直す必要    がある。

  ※自己判断は甘くなりがちなので、きちんと各項目   が守られているかどうかを、家族でチェックするこ   とを薦める。
                (第46回日本糖尿病学会)
“前立腺肥大”
 あなたはいくつ思い当たりますか?


□ 出るまでに時間がかかる。
□ 夜中に何度もトイレに起きる。
□ 勢いが弱い、とぎれる、キレが悪い。
□ 間に合わない、もれる。
□ 残っている感じがして、すっきりしない。


















糖尿病にならないために?

2004年07月29日 (木)

糖尿病とは?

 最近、急増してきている糖尿病とその予備軍。ほとんどが、過食、運動不足、肥満という「インスリン非依存型」といわれ、40代以上に多い。

 診断基準は、
 @空腹時(8h以上)血糖値126r/dl以上、
 AOGTT(ブドウ糖負荷試験)2h値200r/dl以上、
 B随時血糖値200r/dl、HbA1C6.5%以上のいづれかがあれば、「糖尿病型」で、別の日に2回目の検査でどれかが出れば、「糖尿病」とされる。

 症状は? 
 初期は無症状。ある程度進行してから、・目のかすみ、・のどの渇き(消渇)、・食事量の増加、体重の減少、・手や足のしびれ、・全身のだるさ、・脱力感、・皮膚のかゆみ、・多尿、頻尿、・性欲減退など。


糖尿病の治療には、
 糖尿病になってからでは、治療は非常に困難といわれているが、現代医学では、
@食事療法、
A運動療法を徹底すること。
B漢方で代表的なのは、体質・症状によるが、八味地黄丸とされ、中国後漢時代の医学書『金匱要略』にその記述があり、昔から有効とされてきた。

 糖尿病にならないために、
 糖尿病の原因が、遺伝的素因に加え、肥満、ストレスなどである。糖尿病が発症する前に、適度な食事、運動をしっかりしていれば、多くは予防できることになる。また、ストレスは、交感神経を緊張させ、そのために体内の活性酸素が増加、膵臓などの組織破壊がすすみ、インスリンの分泌が低下するために、血糖値があがるともいわれている。つまり、ストレス解消に心がけること。また、歯周病は、糖尿病を促進、悪化させる関係にあり、歯の健康維持は、動脈硬化や心臓病などの他の病気の予防にとっても、大事。

 食事…血糖値の上昇を押さえる食品に、
 @ネギやニラなどにおいの強いもの、
 Aゴボウやコンニャクなど食物繊維のあるもの、
 Bいま注目のにがり水(豊富なミネラルで糖・脂肪の代謝が促進され、インスリン分泌を調整し、急激な血糖値を抑える)。

 料理としては、アサリのスープ、ゴボウの炊き込みご飯、蜂蜜入りの酢にオリオンスライスを漬けた酢たまねぎ、などなど。緑黄色野菜、納豆や豆腐、魚介類など日本の伝統的な食事やバランスよい食事に心がけたい。

 運動…月2、3度のゴルフとか週1〜2回の激しい運動よりも、毎日、無理なくできる有酸素運動が効果的。最低でも1日30分続けたいものだ。

 指圧・マッサージ、鍼灸…指圧・マッサージは、からだの血行を改善し、ストレス解消にとっても有効。鍼灸は、肥満の是正やインスリン分泌の促進など、体質改善にも有効。



自殺を防ごう!
2003年10月11日 (土)

 《自殺危険・10の兆候》

 @ うつ病の症状
   気分が沈む、自分を責める、仕事が手につかないなど

 A 原因不明の不調が続く

 B 酒量が増す

 C 多額の借金や酒の上でのけんかなど無鉄砲な行いが  増える 

 D 仕事の負担の急増、大きな失敗や失職

 E 職場や家庭のサポートがなく孤立する

 F 大切なものを失う

 G 重大な病気にかかる

 H 自殺を口にする

 I 自殺未遂にいたる
 【自殺を防ぐ7ヶ条】

 1条  うつ病の症状に気をつけよ     う!

 2条  話を聞いてくれる友だち・同    僚をもとう!

 3条  無理だと思ったら断る勇気     をもとう!

 4条  趣味をもとう!

 5条  自分の価値を大切にしよう!

 6条  きょうやれることも、あすにのばそう!

 7条  規則正しい生活をしよう!








温めるだけの“お灸”で効果抜群
2003年12月1日 (月)

        “温めると病気に効く” 「テルミー」とは??


 ●温熱刺激療法(イトオテルミーの略称)のことです。

 ●「テルミー」(thermie)とは、ハーブでつくった太い線香状の光素線を利用した療法で、ドイツ語のテルミ   ー、英語のセラピーまたはテルモクール(温治)などに由来しています。

 ●「イトオ」とは、温熱療法を発明した医学博士・伊藤金逸氏(1883〜?)の姓です。

 ●この療法は、創見者の伊藤博士が古来より伝わる施灸を応用し、皮膚を火傷させずに効果をより以上  に高め、操作安全な温熱・光線治療として考案したもので、昭和6年(1931)に『健康療法イトオテルミ  ー』の著書を多数発行し、以来、民間療法として広まったのです。

 ●テルミーは、「自律神経支配下にある内蔵と皮膚および皮下組織との相関・脊髄反射弓をたらえての   治術」として、その効果は顕著であり、作家の故・三浦綾子氏などは癌治療に使用していました。

 ●光素線は、特許製造され、香木香粉などからつくられています。一般に使われている蓬(ヨモギ)から製  造された艾(もぐさ)とはことなりますが、副作用のない、いわばハーブとも、漢方薬ともいえるものです。

   この粉は、消化器系にもよく効き、灰分は擦過傷、切り傷などの止血・殺菌・早い組織の再生など著   名な効果があります。

      (伊藤金逸原著『健康療法・イトオテルミー要義』および伊藤京逸著『イトオテルミーと医学』より)


        

不妊治療に助成制度(4月〜)

不妊に悩む夫妻に朗報!!
2004年1月11日(日)

● 体外受精や顕微受精による不妊治療の費用を、国と自治体が一分負担(年1回、約10万円、通算2回まで)することになった。今年4月から実施予定(実施主体は都道府県、政令指定都市など)。厚労省が来年度予算案に、費用の一部を助成する新しい制度を盛り込んだことによる。ただし、所得制限があり、夫婦で年収640万円以下を対象としている。

  医療保健が適用されずに、体外受精するたびに、30万円から50万円ほどかかっていた。実際に子どもが生まれるまで治療かさねて、数百万円にのぼる場合もある。

  昨年の国会(厚生労働委員会)で、日本共産党の井上美代参院議員が「不妊治療患者の経済的負担を軽減する助成制度をつくるべきだ」との質問に答えて、坂口厚労相が「対応できるようになると思う」と答弁していた。(「しんぶん赤旗」04.1.11)

● いわゆる不妊症は、昔から洋の東西を問わず問題になっていた。正常な性生活を続けていても、一定期間妊娠しない状態を不妊症(sterility)といい、2年間の期間を定めている(国際産婦人科連合、アメリカでは1年間)。不妊夫婦は約1割。

  原因をめぐって、夫婦間に気まずい関係も生まれかねないが、夫婦間の不妊因子で単独の場合、妻が33.7%、夫が14.4%(Siegler 1946)という結果もあるように、女性側がやや多いとはいえ、男性にも相当の数の原因も見られることを紹介しておく。

 鍼灸治療に期待できる

  不妊は男女問わず、生殖器疾患にも関連し、機能障害や治療すれば治る可能性のある器質的疾患などは、古くから鍼灸が功を奏していた。また、いろいろ病態生理的にみて、原因不明が10%前後あるが、これも鍼灸治療の対象になる。切迫流産でも、鍼灸治療によって妊娠を継続し、正常分娩をなす場合もある。(木下晴都著『最新 鍼灸治療学』より)

  実際に、体外受精などの不妊治療を受けている奥さんが来院され、「不妊治療等に鍼灸が効くと聞いてきた」といい、しかも友人から、「仙骨部へのお灸がいいと聞いてきた」と。鍼灸治療は確かに、古くから仙骨部(八膠穴)などにお灸をするなどが効果をあげてきた。残念ながら、まだ妊娠のきざしはないが、その患者さんいわく、「主人のほうこそ、鍼灸治療をしてほしい」と、当院の希望と意気統合しているのだが…。





子どもの夜泣きに小児針

2004年4月1日

●“突然、夜寝ている子どもが恐い顔して泣き出すんです”

 お母さんが心配して、連れてきた7歳の女の子が、小児針を受けて以来、現在まで、3ヶ月近く、まったく夜泣きをしなくなった。

 この子は、昨年の11月頃から年始にかけて、夜9時頃に寝て、2〜3時間たつと恐〜い顔して泣き出すという日が続いていた。
 母親が小さいときに、小児針をしたこともあって、治せないかということではじめた。

 昨年9月頃、突然、熱が出て数日続き、不定形な発疹、口唇が紅潮し、いわゆるイチゴ舌などの症状が現れ、「川崎病」と診断され、2ヶ月ほどの入院。
 原因不明の「川崎病」の症状はおさまり、現在、後遺症もなく、ほぼ完治しているようだ。
 この病気は、固有の6症状のうち4症状に冠動脈障害を呈するのが特徴といわれ、3月に心エコーなどの検査をしたが、異常は見られなかった。

 こうした病気の経過と夜泣きの因果関係は不明だが、一般的には、TVなどの外界の環境に影響され、睡眠中に驚いて泣いたりすることがしばしばある。
 いわゆる“疳の虫”とも呼ばれる小児神経過敏症ともいえるのではないか。
 東洋医学的には、驚とか癇とかで表現されている。

 2月から治療に入り、小児針や皮膚鍼など、皮膚に針を刺さずに刺激を与える鍼法と、昔から使われている“ちりけ(散気)”にお灸をする方法で、症状がまったく出なくなるまでに改善した。

 お灸は、薄いアルミをはった「灸点紙」を貼って、その上から米粒の半分ぐらいの大きさのもぐさを使って、お灸をするという方法で、熱さもほとんど感ぜず、子どもと遊びながら、楽しく治療をすすめることがこつ。



宿便を治し、ダイエットに効くという『桃の花』
2008年03月03日 (月)

 庭に咲いた一重の桃の花を摘んでは、一輪挿しで治療所に飾るようになって今年で3年目である。梅と違って、匂いはないが、ピンクの可愛いらしい花びらは一週間以上ももち、なんともいえない心の癒しとして、人の目を楽しませてくれる。八尾の山手の方で造園業などを営んでいた患者のUさんから4年前にいただいたものだ。Uさんいわく、花が咲いたら、枝の根元から3センチぐらい残して切り取ると、毎年、きれいな花をつけてくれるそうだ。だから、桃の実がなるのかどうかわからない。しかし、観賞用としてはとても高価な種類として、大事に育てているつもりだが、ほとんど手入れがいらず、いやわからず、放ったままでも、大丈夫らしい。

 さて、桃の花は、中国古来から、漢方薬として重宝がられてきた。開花前の薄いピンク色のつぼみを天日で乾燥させたもので、「白桃花」という生薬だ。宿便を治し、ダイエットに効くというから、女性にとっては、聞き逃すわけにはいかない効能がある。2000年以上も前の中国の医学書『名医別録』には、「白桃花は味は苦く、性質は穏やか(平)で、無毒。大小便を利し、三虫を下し、身を軽くする」とある。ただ、この白桃花だけなら、通便作用が強過ぎてお腹をくだすことがあるという。それを和らげるために、乾燥させたミカンの皮(陳皮)といっしょにして、お茶代わりに飲んだりするのがいいようだ。

 桃の花には、ケンぺロールやマルチフロリンなどのフラボノイド類や芳香性のあるクマリン類が豊富に含まれているという。ケンペロールは強い利尿作用があり、マルチフロリンは腸のぜん動運動を活発化し、排便を促進する作用がある。つまり、便秘やむくみの解消に強い味方ということだ。さらに、クマリン類は血液の異常な凝固を防ぎ、血管拡張作用があるという。こんな効果のある生薬がいとも簡単に造って、愛用することができるというのは、なんともすばらしいことではないか。
 ただ、残念なことに、ほんとにきれいな桃の花を、つぼみの段階で摘んでしまうか、咲かせて観賞用として、使用するか、悩むところだ。実際、庭に咲く桃の木は枝が5〜6本だけなのだから、しょうがない。でも、年々、一枝、一枝増えていくのが楽しみだ。

 【追記】(2008年3月8日)

 桃の実(桃仁)の方が婦人病に用いる漢方薬としてはよく使われている。

 「桃仁」の単味でも、また「桃核承気湯」や「桂枝服茯苓丸」などの方剤として、冷えのぼせが強く、月経不順、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘や尿量減少、高血圧に伴う頭痛・めまい・肩こり、更年期障害、にきびや湿疹、坐骨神経痛、打撲や捻挫、それに伴う内出血、疼痛などに用いる。

 桃の葉は煎じて布に浸し、「あせも」につけて湿布するか、あるいは布袋に入れて浴剤として用いる。とくに子どもの「あせも」によく使われてきた。




2004年9月15日


「世界五大長寿郷」と沖縄にみる「長寿と健康」


●当鍼灸整骨院が治療する最高齢は103歳のおばあちゃん。往診先の特別養護老人ホームに入所中(車イス使用)だが、マッサージの後にすえるお灸(千年灸)に「アチッ!やんか」といいながら、次の日、「よく眠れたよ」といってくれた。

 ところで、現在、日本で
100歳を超える人は、平成15年現在、約2万人いる(今年は2万3000人)。平均寿命も、世界トップで、男78.32才、女85.23才だ。この平均寿命は今後、どこまで伸びるのだろうか?

●ヒトは最大で115年〜120年は生きることができる動物だといわれている。この最大寿命は進化の過程で遺伝的に決まったもので、高齢者の増加によって伸びてきた平均寿命とは別に、今後も変わらないという(東京都神経科学総合研究所・黒田洋一郎)。
 ではなぜ、ヒトは100年以上も生きる能力を獲得したのか、大変興味を持つところだが、別の機会にしたい。ただ、黒田氏いわく、現存の人類は3〜5万年前ごろの気候の激変期に生き残った少数集団の子孫であることと、その激変期に飢えや病気などから生き残るための世代を超えた知恵を蓄積し、伝承しやすい脳を持った長寿者を保持したことにあると、実に興味深い分析をしている。

●国際自然医学会によれば、世界には「五大長寿郷」と認定されている地域があり、その地域には1970年代で150歳代の長寿者がたくさんいたそうだ。残念ながら、長寿は年代ごとに減ってきて、現在は120歳代に減り、最大寿命の低下が問題になってきている。なぜか?。

●日本の長寿沖縄で、
「26ショック」といわれる現象が問題になった(厚生労働省、平成12年調査)。女性の平均寿命は全国1位を保っているが、男性は5年前の全国4位から26位に転落したことから、そういわれるようになった。それだけではない。外からは「癒しの島」に見える沖縄は、実は肥満率は男女とも全国1位、中高年男性の自殺数も1位、失業率もワースト1、離婚率もトップ…。なぜ、こうなったのか?

●五大長寿郷では、欧米に見られる高蛋白・高栄養の食べ物などが入り込んできて、伝統食離れが進んだことが寿命の低下に大きく影響している。
 沖縄では、長い間サツマイモを主食に薬草など含む緑黄色野菜や豆腐、昆布など伝統的な食生活に、長寿の秘訣があった。それが、戦後のアメリカ統治下、食生活が大きく変化した。伝統を守る女性は別として、男性は、外食の機会が増え、クルマ社会による運動不足、お酒の飲みすぎなどが、平均寿命急落の理由といわれている。

だからこそ、健康と長寿にとって、食生活など生活習慣の改善があらためて見直されている。

●五大長寿郷の長寿に共通しているのは、南米エクアドルのビルカバンバ以外は、シルクロード沿いに散在しており、ビルカバンバも含め、@主食がナンなど挽きぐるみの未精白穀物(焼いたパン)で、副食に野菜、A生まれた土地を離れず、その土地で収穫できる作物を食べている、Bミネラル豊富な水と塩を使っていることだ。
 五大長寿郷の食事は、「ナンとチャ(緑茶を発酵させて真っ黒になった黒茶)」をほとんど毎日三食にしているほどだ。日本でいえば、玄米と野菜中心の食事になる。

●玄米といえば、アメリカのサティロラ博士著『私は玄米食でガンを治した』がアメリカでベストセラーになったことがあった。また、五大長寿郷を20数年にわたって、現地調査した国際自然医学会会長の森下敬一先生自身、「森下クリニック」の患者さんたちが「玄米・菜食だけで驚くほど治癒力が高まり、ガンをはじめとする慢性病、難病が治っていく」のを目の当たりしたという。(全日本鍼灸学会雑誌53巻5号)

●玄米と野菜の中で、注目されているのが大豆。
「@大豆食文化発祥の地・中国の貴陽(貴州省)では、納豆や豆腐、乾豆腐などを日常食とし、長寿が多い。
 A逆に、沖縄からブラジルに移住した人たちが豆腐や野菜、魚を食べるという日本の伝統食習慣をなくしたために、短命になった。」など、世界60地域を約20年間調べた結果、日本の伝統食、大豆が「長寿と健康のみなもと」であるという報告がある。
(家森幸男・京都大学名誉教授、「しんぶん赤旗」2004年1月4日付)。

●日本の伝統食をあらためて見直すことと、伝統食を育んできたコメを中心にした日本の大地、豊かな海を育ててきた森林…、まさに「土壌→食物→身体の生命エネルギーの循環」(森下)、「健康と長寿のみなもと」を、これ以上荒廃させずに、大切に守っていきたいものだ。

●最後に、健康と長寿に特別の秘薬があるわけではなく、やはり、日頃の養生が欠かせない。養生法には様々あるが、無理したり、働きすぎたりせず、疲労を少なくすることが一番。当たり前のことだが、二千数千年来、試されてきた、@食べ物の質と量をよく吟味する(食べる養生)、A適度な運動を行う(動く養生)、B静かに呼吸し、あまり考えすぎず、十分な睡眠をとる(精神の養生)、ことにあるようだ。


                 母の郷のりんご畑
            りんごの驚異的な栄養に舌鼓を打って

                            
2004年9月23日

 この絵は、私の実姉が2〜3年前に描いたものだ。
 私たちの母は、すでに10年前に他界しているが、「母の郷」はいま、りんごが真っ盛り。奥羽山脈から湧き出す地下水をいっぱい吸いこんで、たわわに実ったりんご畑は、小さい頃、よく木から直接もぎとって丸かじりした思い出がある。毎年、母は都会にいる私たち子どもたち(3人)に、りんごを送り続けてきた。いまでは、85歳になる一人暮らしの父が、引継ぎ、毎年、りんごが届くのを楽しみしている。

 ただ、今年は、台風18号の被害がどれほど影響しているのか心配だ。青森では被害総額が139億円にものぼり、91年の台風19号の被害額741億円、85年の台風13号の159億円に次ぐ。大阪のスーパーなどでは、落下りんごが1個68円ほどで売られていた。

 ところで、りんごの驚異的な健康と長寿に及ぼす栄養が注目され続けている。最近では(昨年10月)、新たなりんごの威力が発表され、医学会を驚かせた。
それは
「りんごポリフェノール」で、老化防止やガン抑制の抗酸化作用が確認されたという。


@まずは、整腸剤だ。
 『りんごの食物繊維は、腸の中を非常にきれいにする。あるいは弱った腸を丈夫にするという働きがある。』『りんごは大腸ガンを抑えるという事が分かってきた。(富山医科薬科大学 医学博士 田沢賢次教授)。

 とくに、おすすめは、りんごとヨーグルト。両者は相性がバッチリで、ヨーグルトビフィズス菌・乳酸菌などの善玉菌を持つため、“りんごヨーグルト”にすれば腸の中で善玉菌がさらに増え、非常に効果が大きい。

A次に、コレステロール減少。
 『りんごのペクチンは悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やすという作用がある。』(農水省果樹試験場 農学博士 田中敬一先生

B3番目は、なんといっても、高血圧対策に効果抜群。
 現代人の健康を阻害している大きな症状のひとつであり、人間ドックの上位にある「脳血管障害」の大きな原因になっている高血圧。その要因は、いうまでもなく、塩分塩分の摂り過ぎからから守ってくれるのは、りんごに多く含まれる成分「カリウム」『りんごに含まれているカリウムは身体の中のナトリウムを排出し、血圧を下げる。』(同上)。

C注目は、りんごポリフェノール
 ワインのポリフェノール発見から始まった様々なポリフェノールを含んだ食品の仲間達に新たにりんごが加わった。りんごにも
抗酸化作用があった。体内で細胞に傷を付け老化を促進させてしまう悪者として、活性酸素がやりだまにあがっている。それを退治してくれるのが抗酸化物質SOD物質だ。本来、体内ではSOD物質がつくられているが年齢とともに減少。次第に活性酸素が猛威を振る舞う。その結果、「ガン」「心筋梗塞」「動脈硬化」等を引き起こす。そこから守ってくれるのが抗酸化物質
 そこで、新たに登場したりんごのポリフェノールとは、エピカテキン。エピカテキンはお茶のポリフェノール「カテキン」の中でも一番活躍しているもの。
 
『りんごに特徴的なのは、エピカテキンの多量体です。』信州大学農学部 農学博士 濱渦 康範先生)。
 そして、エピカテキン含有量が多いのは、果皮で、なんと果肉の4!りんごの抗酸化パワーをより強力にゲットするには、皮つきが1番。まさに丸かじりがいい。

 
しかし、皮がベトベトしている!?という人、ご安心あれ。
ベトベトの正体は、リノール酸オレイン酸。りんごの中から染み出したもので、乾燥を防ぎ、新鮮さを保つための成分。もちろん害はなく、むしろ新鮮さの証。

 そして、なんとりんごの食物繊維ペクチンにも抗酸化作用があるという、驚くべき研究が発表された。
 しかも、ペクチンは熱を加えるとパワーアップ。その抗酸化力の差はなんと
9!!
今、新たなりんごパワーが次々に明らかになってきている!!

 あなたも、いますぐ落下りんごを大量に買って、毎日丸かじりしてみては?!。 



2004年10月25日

薬より、まず免疫高め、体のバランスをとる

 冬に備えて   風邪、冷え性、こむら返りなど、そして花粉症も !!

冬にかけて急増する病気!?

 暦(旧暦)の上では、11月7日は冬の気始めて立つという「立冬」である。その後、「小雪」(22日)、「大雪」(12月7日)を経て、日低く極まる「冬至」(12月21日)がやってくる。しかし、寒さはむしろそれ以後、本格化し、2月頃まで続く。

ところで、秋から冬にかけて急に増えてくる病気は、風邪。そして、危険なのは心筋梗塞脳卒中などだ。シベリア寒気団の影響で気圧が下がり、体内の水分分布が変わって、血圧も上がりやすくなる。また、寒さは、関節をこわばらせ、リウマチ性関節炎なども悪化させやすい。

心筋梗塞は、気象条件の急激な変化を引き起こす寒冷前線や帯状高気圧などの通過が深く関連しているという(広島市医師会では、気象条件などをもとに「心筋梗塞予報」をインターネット上で始めている)。心筋梗塞や脳卒中の予防に、風呂場やトイレなどへの出入りの際、気温の急激な変化に気をつけたい。熱いお風呂や寒い脱衣場などの環境の激変は、高血圧の人や高齢者にとっては危険だ。脱衣場を暖かくし、ぬるめのお湯にじっくり入ることをおすすめする。

風邪は万病のもと

二千余年前の中国古典医書=『黄帝内経素問』に「冬は蔵す」とあるが、生活機能が潜伏閉蔵する季節だ。だから、激しい運動をして、体内の陽気を掻き乱したり、いたずらに皮膚を出して汗を出しすぎたりしないようにすべきだと養生論を展開している。

 『素問』に、「風なる者は、百病の始めなり」(生気通天論篇)とあるように、昔から、「風邪は万病のもと」といわれてきた。つまり、人体には、体を守る「衛気」というのがあり、これが傷()られ、風の邪が体内に侵入すると、寒さにふるえ、汗が出る、頭痛や身体が重くなったり、悪寒がする。邪の風は千態万状のものであり、変化していろいろな病気を引き起こす。「風邪は万病のもと」の所以()である。

 かぜは、東洋医学では「感冒」と呼ばれ、鼻粘膜の急性炎症のことをさす。英語のCommon Coldは共通感冒(Coryzaとも)と訳されている。しばしば、咽頭炎とか喉頭炎も併発する。原因は約90%がウィルスだ。

 冬にかけて発症頻度の高いのは、ライノウィルスで、潜伏期は2〜4日。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咽頭痛があり、微熱は約半数に出る。大人は頭痛やしゃがれごえ(嗄声)になることもある。たいていは1週間だが、2週間以上に及ぶこともある。

冬本番は、やはりインフルエンザだ。昨冬、流行したのはA香港型(67%、他はBが33%。一昨冬の01〜02年はAソ連42%、A香港39%、B19%)で、ここ数年では、年末から1月に多い。B型は2〜3月に流行することが多かった。症状は突然の発症、高熱、全身に現れる強い症状、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、くしゃみ、鼻づまり、乾いた咳、しゃがれ声など、短期間に悪化。ひどくなると、肺炎になり呼吸困難やチアノーゼを現すこともある。

原因はウィルスであっても、誘因となるのは

@    寒気にさらされたり、汗などで濡れた衣服などで体温が急変を受ける(一般免疫の低下など)、

A     鼻・のどの粘膜の血管運動神経が失調したり、構造的欠陥などによる感染巣の常在、

B     アレルギーや自律神経失調などの体質、

C     肉体的・精神的な疲労などがあげられる。

薬は大丈夫??

 何より、普通のかぜか、インフルエンザかの識別が大事。インフルエンザなら、抗ウィルス薬は確かに欠かせない。しかし、A型、B型に有効なザナビル(成人で吸入)、オセルタナビル(成人と小児で内服ドライシロップも)など、副作用として幻覚や意識障害、異常行動などの精神症状を引き起こすケースがあり、要注意。また、多くの医師がいまだ処方している抗生物質は予防効果が薄く、控えるべきだ(日本呼吸器学会)。

家にある古い解熱剤も、症状を悪化させることもあり、服用はやめるべきだ(厚労省)。抗菌薬は正常な腸内細菌まで殺してしまい、バランスを崩し、下痢等かえって体調を悪くしてしまう。「良医は抗菌薬を使わず」だ。市販の総合感冒薬には解熱・咳止め・鼻炎薬が配合され、乳幼児への副作用が心配だ。

 このなかで、かぜ薬の代表的な漢方薬・葛根湯の効果が注目されている。中国・後漢の医学書『傷寒論』以来、その効用は有名だが、最近、抗ウィルス効果もあるという西洋医学的な解明がすすみ、生体防御の免疫能力を高めることが実証されている。感染の急性期、初期感染に有効だ。

家庭でのかぜ対策

●熱が出たら、体を温めること。 かぜのひき始めには、梅干しの黒焼き。紙にくるんだ梅干しを真っ黒になるまで焼いて、番茶に入れて飲む。

●汗をかいてきたら、着替えをし、風通しを良くして涼しくする。

●せき、鼻水、鼻づまりには、薬より湿気の方が効果的(加湿器など)。はり灸の効果は抜群

●何よりも、安静・休養が一番。偏食はだめ、新鮮な野菜や果物がいい。そして、オキシドール(3%希釈水)などでのうがいが大事。

※かぜの諸症状には、はり灸の効果もある。K.S




2005年1月5日

酉と鳥と予防・健康


酉の由来は?

 今年の干支(えと)は“酉”。なぜ、“鳥”または“鶏”って書かないで“酉”と書くのか? この酉は、トリとはなんの関係もなく、お酒を盛る器を表わした象形文字からきていて、干支に登場するときにだけ“トリ”と読まれる。占いの本『高島暦』には、中国で成立した十二支が1年の12ヶ月を表わしたもので、未開の地に伝えるためにわかりやすい動物の名前を読みに充てていった」とある。ちなみに1月は“子”、2月は“丑”…で、後年、“寅”が1月、“卯”が2月…、“酉”は8月になったという。

夜明けを告げる希望の鳥

 酉の刻は、夕方6時頃と前後2時間をいうが、鶏や小鳥は夜明けに鳴き、さえずり始める。だから、夜明けを告げる鳥は希望をあらわし、空を飛ぶ鳥は自由やあこがれのしるしに例えられる。
  昨年が災害や戦争の年とも言えるだけに、今年は希望あふれる平和な年にしたいものだ。

 ところで、鶏は、健康や病気の予防にも結構、役立っている。かぜが流行りだす時期だけに、まずは体力を維持するのに欠かせない食べ物として。
  新年には、お酒を飲む機会もあれば、子どもや孫の面倒をみたりといろいろ疲れがたまったりする人もいる。疲労が蓄積すると、慢性化し、体調を崩し、病気への抵抗力も衰えてくる。これにストレスも加われば、運動をしたわけでもないのに疲れを感じ、だるくなったり、食欲がないなどの気分になる。

そうしたときには、まず、充分な睡眠と良質の蛋白質、ビタミン、ミネラルを含んだ食事を摂ることだ。また、冬の間に血液を増やし、循環を良くするよう心がけること。そうすることで、風邪を引かないなどの予防だけでなく、春に痿厥=「手足に力が入らず、冷たくなる病気」にならず、春の「生気」に適応できるようになる。(『黄帝内経・素問』)

鶏料理で、気力・体力・かぜ予防

そこで、@まず気力を取り戻す気力増進食に、鶏肉と朝鮮人参のスープなどがいい。Aまた体力をつけるには、鶏砂肝とニンニク炒めもいい。Bかぜの引き始めには、卵酒と決まっているが、鼻炎などには鼻づまりに効果のあるダイコン、ニンジンを使った卵雑炊や鶏のねぎ味噌焼きもいい。


体を温め、病気の予防を

2005年03月01日 (火)

体を温めて、免疫力アップと病気の予防を

あなたの体温は 高い? 低い?

 体を冷やすと、免疫力が低下し、様々な病気をつくりやすくする。
・「体温が1℃上昇すると、免疫力が30%以上に増強する」
・「体温が35℃で、ガン細胞の増殖がすすみ、39.3℃以上になると絶滅する」
(医学博士・石原結實著『どんな病気でも「温めれば治る!」』)。

 日本人の平均体温は36.8℃(医学大辞典)というが、実際はかってみると、そんなに高くはない。わが治療所のスタッフ10数人中、36.8℃前後が2人、あとは36.0〜36.3℃がほとんどで、35℃台は2人(陰性体質)。高い人は、日常筋力トレーニングなどを行ない、筋肉質タイプ(陽性体質)にみられた。あなたの体温は、どれぐらいですか?

●体を温めることは、免疫力を高め健康的な身体にするし、体温36℃以上を保ってガンなどの病気の予防や治療に大いに役立つということだ。
■体を冷やす原因の主なものをあげると、
@ 下半身の筋肉不足(筋肉の7割は下半身に)
@ ストレスによる血行不良(適度な緊張は必要)
A 体を冷やす食べ物・食べ方
B 間違った入浴法(シャワーだけとか、長すぎたり、熱くて短すぎたりもダメ)
C 薬の飲みすぎ(化学薬品は基本的には体を冷やす。鎮痛解熱剤などは冷やすためのもの)
D 冷房の悪影響         などなど。

【体を温めるアドバイス】

● 上手な入浴に心がける(38〜41℃で、20〜30分)
● 筋肉を鍛えて体熱をつくる
   (ウォーキングや家でもできる簡単な運動を続ける)
● 何よりも、食べ物や飲み物
◎ 指圧・マッサージ
◎ お灸・テルミー(温熱刺激療法)、足サウナ等々

血行をよくし、お灸などは免疫力を高める。

以上、当院へご相談ください。


  薬に頼らず、お灸でいろんな病気に対処

2005年03月09日 (水)

  温かく気持ちいいお灸、熱いお灸、いろんなお灸があります。
    
お灸(やいと)の本当の効能、ご存知ですか?? 

 病気を治すというイメージより、“お灸すえたろか”と使われる方がむしろ多いのか、“熱い、苦しい”イメージが先行しているようだ。二千数百年前の中国・春秋時代の思想家・孔子との問答の中に「病気でもないのに自分に灸をすえる」(『荘子』)とあるが、「しなくてもよい余計な苦しみを味わう」例えだが、この頃すでに艾(もぐさ)を使った灸治療が行なわれていた。灸療法の源流は、中国北方の山稜地帯・厳寒地方の遊牧民族で、寒さのために慢性病を引き起こしやすいことから発達したといわれ、日本でも、古くから慢性疾患などに使われてきた。平安京に遷都後200年経った西暦984年、典薬寮医・鍼博士である丹波康頼の著『医心方』(現存する最古の医書)にはじめて出てくる。

 お灸をすることで、「風邪を引かなくなった」「丈夫になった」とよく言われるが、灸療法に科学的な根拠を示すための研究は、明治から昭和初期まで盛んに行なわれ、その後1970年代に中国の針麻酔をきっかけに鍼の研究が世界中で行なわれるなか、一方で地道に医学的な研究が重ねられてきている。 

お灸のやり方には、大別すると2種類ある。

 一つは、灸の温熱刺激。千年灸などといわれる温灸や直接焼かないでニンニクや生姜を薄くスライスしたものを使って行なう隔物灸(温熱+薬理作用)、もぐさの火を途中で消す知熱灸などだ。当院では、さらにイトーテルミーという温熱療法も行っている。こうした療法は、血液の循環をよくしたり、生薬の効能を温熱刺激で体内に吸収させることで、病気の治療や健康維持に役立つ。焼け跡が残らない(無痕灸)し、気持ちがいいから人気がある。

 もう一つは、アチチッ!という透熱灸による施灸。いわゆるお灸だ。これはほんのちょっと軽〜く小火傷させる(本来の火傷とは違う小火傷・小炎症を人為的につくる)ことで、生体の自律神経系、免疫系、内分泌系に働きかけて、「生体の防御機能を増す」ことだ。焼け跡を残す場合と残さないやり方があり、熱さも調節できる。わざと火傷を大きくつくって化膿させる、いわゆる弘法の灸というのもある。イボ・魚の目などを焼ききる方法(焦灼灸)はけっこう有名だ。

【エッ!こんな症状にも効くの??】

●かぜ予防、疲労回復、胃腸病治療に足三里のお灸●

 松尾芭蕉の『奥の細道』の冒頭に“三里に灸をすえて旅に出る”とある。また、唐の時代には中国で旅する官吏はツボに灸をすえ、マラリアや伝染病の予防にした。さらに、三里と背中の胃の六つ灸と合わせると、胃腸病には抜群の効果がある。

★安産、逆子、不妊症 にも、お灸が効くってほんま?!★

 出産は自然分娩がいいです。不妊や妊娠中毒症、つわりから安産、産後の肥立ち、生まれてくる子どもの健康にもいいです。副作用がないから、いいんです。

■爪水虫(爪白癬)に、なんとお灸が効果■

 寒い時期にこそ効果があり、いまからなら、3〜8ヶ月かかるが、梅雨の季節まで1/3ほどきれいになったら、大成功。足の爪なら1ヶ月に0.5cmほど伸びるので、全部生え変わるのに1年かかります。とにかく薬がいりません。

 その他、さまざまな効能やお灸に関することは、メールでも電話でも、お答えいたします。


韓国・ソール 韓方病院体験記(お礼のメール)

2005年03月27日 (日)

※ これは、韓国に行って、韓方病院の体験的な診察を引き受けていただいたキムさんへのお礼のメールです。

慶煕大学附属韓方病院・外国人診療室 キム・ミファ 様

 3月21日に、貴病院に、体験をかねた診察をしていただきました佐藤啓二・妙子と申します。
 
 忙しいなか、貴重な時間をさいて、診察をしていただき、ありがとうございます。
 こちらの勝手な都合で、お約束の時間に大幅に遅れてしまい、大変申し訳なく思っています。ほんの少しの時間でしたが、貴重な体験をさせていただき、心から感謝しています。また、キムさんには、お支払いなどでのご親切な対応に、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。先生にも、ぜひお伝えください。


(注):病院に着いたのは、午前10時20分頃でした。受付で、外国人診療室に連絡してもらい、数分後にキムさんがあらわれ、診療室へ連れて行ってくれました。早速、問診にあたる「アンケート」に記入。終わったら、キムさんがすばやくコンピューターに打ち込み、データ化する。それが終わるころ女医さんがあらわれ、キムさんの通訳でデータと照合しながら問診、脈診などを行ってもらいました。時間があれば、ベッドサイドで触診など全身をチェックし、細かく診察していくところだが、飛行機の時間に間に合いそうもない、ということで、簡単な診断をしてもらった。
 そのあと、支払いの窓口へ行ったら、日本円が使えないということで、急遽、キムさんが病院内の銀行へ案内してくれて、何とかウォン交換の段取りまでしていただいた。

 韓国への旅は今回が2回目です。1回目は、今年の2月10〜12日でした。実は、11日が私たちの結婚25周年で、それを記念した銀婚記念ツアーでした。はじめての韓国旅行だったのですが、行く前に、事前のインターネットで偶然、貴病院のことを知り、旅行の目的のひとつに、薬令市場の探索とあわせて、体験&診察をさせてもらおうと計画していました。
 ところが、ホテルから貴病院の外国人診療室の直通電話に何度か電話を差し上げたのですが、通じなくて、ガイドさんに貴病院の代表電話へかけてもらったら、旧正月で日本語を話せる先生(ドクター)が日本へ行っていて、対応できないということで、断念しました。また、薬令市場も結局時間がなく、行くことができませんでした。
 
 実は、妻がおそらくストレスからくる不整脈などに悩まされていたのですが、この3日間で、お粥や韓国の家庭料理、コリアハウスでの宮廷料理、サラリーマンたちが食べている食堂での食事、寛勲洞の薬膳料理(知味房)、それにパック旅行ではなく、ちょっとぜいたくなソールプラザホテルでのゆっくりと過ごせたこと、また心臓によいといわれる「蓮茶」(仁寺洞の茶生園)を購入し、日本へ帰ってから、それを飲んでからか、実際に効いたのかどうかわかりませんが、それ以降、不整脈が出なくなりました。
 そこで、ぜひ、もう一度韓国へ行って、まだまだ食べたいものがあり、薬令市場の探索、そして貴病院の見学と診察をしたいと話し合ったのです。仕事の関係で、長い滞在は無理ですので、連休を使っての旅行になります。日本では、振替休日などで月曜日が休みになる連休が3月、7月、9月…、それぞれ1回づつあり、一番早い3月に行くことになり、国際電話で貴病院へ予約の電話をさせていただいたわけです。仁寺洞のクラウンホテルから、はじめて地下鉄とバスに乗り、なんとか病院にたどりつくことができました。ソールでは繁華街を抜けると、ハングル語の世界になり、話す言葉も字もわからず、大変でした。回基駅からのバスは学生さんがいっぱいで、病院に着くと患者さんも多く、びっくりしました。地域に定着しているんだなぁー、と感じました。

 西洋医学も併せ持つ韓国の伝統的な医療、韓方内科とか鍼灸科とかがあり、どのような診察と治療を行なうのか、貴病院に興味と関心をもちました。日本では残念ながら、西洋医学と東洋医学が統合して、あるいは併用してきちんと位置付けられている病院はありません。
 日本ではようやく、昨年から医学部に漢方薬が正科として位置付けられたばかりで、東洋医学を医学生が学ぶことになります。もともと日本の伝統医学である漢方医学全体(漢方薬と鍼灸、指圧マッサージなど)を学ぶことは、それぞれの医師の自由に任されています。鍼灸は、法的には「医事類似行為」として位置付けられ、「鍼灸医」や「鍼灸医学」という言葉を看板に掲げたりすることは法律で禁じられています。しかし、「医師類似行為」として、鍼灸師・指圧マッサージ師・日本独自の柔道整復師(整形外科的な治療)は国家資格を持つことで、合法的に診察・治療が行なわれるようになっています。

 鍼灸医学は、漢方医学とともに、中国から、あるいは、朝鮮半島から持ち込まれ、それが日本的な発展をとげ、予防やさまざまな病気の治療に使われ、草の根の治療家によって脈々と引き継がれてきました。しかし、歴史的には、百数十年前、徳川幕府が崩壊し、封建制の江戸時代から、天皇を中心とした近代国家としての明治時代に移行する過程で、すでに持ち込まれていたオランダ医学やドイツ医学などが相次ぐ国内での戦争に大いに役立ったということもあり、そして富国強兵の近代化政策のもとで、漢方医学と並存する道ではなく、それを民間療法へと追いやって、かわりにとってかわっったのが西洋医学という、きわめて政治的、歴史的事情があります。その後、朝鮮半島はじめ東アジアへの間違った侵略戦争が拡大するなかで、生体実験など西洋医学が戦争のために動員されたいう苦い経験も生まれました。また、第2次大戦後、アメリカ軍(GHQ)が鍼灸を野蛮な行為であるとして、禁止令を出したりしたときもありました。

 最近では、鍼灸でいえば、専門の大学が4〜5校、専門学校としては60余絞も存在し、毎年数千人の資格者が誕生しています。しかし、開業したり、鍼灸を専門に従事したりする人は資格者の割りにはそれほど多いとはいえません。

 2回目の韓国旅行中、竹島の帰属をめぐる領土問題や日本政府のとる侵略政治へのあいまいな態度や姿勢に対する盧武鉉大統領の演説などの記事を見ましたが、日韓の関係が早くいい方向で解決できたらいいなと願っていますし、また、医学の面でも日中韓の関係が今後ますます交流・発展しなければならないと痛感しています。中国との関係では、中医薬大学や漢方医との交流をよく耳にしますが、韓国との関係では医学部の教授レベルや韓方薬界などでの関係はあると思いますが、日本で急増する鍼灸師レベルでの交流は、実際はどうか知りませんが、私の感覚ではそれほどすすんでいるようには感じません。

 「冬のソナタ」ツアーばかりではなく、医療面も含めた文化的交流がもっともっとすすめば、いいなと感じました。朝鮮半島はじめ東アジアへの侵略を、命がけで反対した日本人が存在し、その流れをくむ人たちは今日に引き継がれ、アメリカばかりに目を向けているような国ではなく、日中韓など東アジアでの民間レベルでの交流がもっともっとすすみ、引いては政府レベルでの真の交流へと発展すること、そのためにも朝鮮半島の統一の実現と、私自身、医療面での交流の発展に微力ながら貢献できるよう願って、長々とした拙文ですが、お礼のメールとさせていただきます。


ガン化を防ぐ免疫システム

2005年05月09日 (月)

誰でも毎日つくられるガン細胞---ガン化を防ぐ免疫システムがカギ

 2〜3年前、阪大医学部の現役学生が院内の教授、看護師、患者さんたちの応援を受けて、癌に関する本を出版して話題になった。友人に貸していて、その本はいま手元にないが、それにはこんなことを書いてあった。

 癌とは遺伝子の病気であって、癌そのものは遺伝しない。家族で癌が遺伝しやすいといわれるのは、それが生活習慣など似通った環境にあるためだ。どんな人間でも毎日4〜5000個もの癌細胞が体内で誕生するといわれるが、健康な人間なら、免疫細胞がやっつけてくれる。
 「健康な人間」とは、カロリー控えめなバランスのよい食事をとり、ストレスをためず適当な休息をとり、適度な運動を行なって、家族や友人などとのコミュニケーションもとって、夜は普通の時間帯に睡眠をとれる、等々、心身ともに健康な生活を過ごしている人である。実際、こういう人は私も含めてそう多くはない。もうひとつつけくわえるなら、年齢には無関係に人生の目標や夢などを持つことも、健康を維持する秘訣ともいえる。

 ところが、ストレスや生活習慣の変化で、自律神経やホルモンのバランスなどがくずれ、徐々に健康な体がむしばまれていく。免疫システムの崩壊が癌細胞の増殖を助けてしまい、体内の器官などに居座ってしまい、正常な体をだめにしてしまう。
だから、「健康な体」を維持し、あるいは創出していくか、つまり病気の予防に心がけることに尽きる。放っておけば重篤な病気になるが、そうなる前にいかに察知し、病いにならないうちに予防する(未病治)。

 中国3大古典医学書に、「上工(良医)は未病を治す」(『難経』)、“聖人は已病を治さずして未病を治す”(『黄帝内経素問』)とあり、まず微かな徴候を見てはっきりした病気の行く末を察知する(“見微知著”)。しかも、機械に頼らず、脈を診たり、触診や体表観察などで察知するのが鍼灸・東洋医学の真髄ともいえる。

 指圧や鍼灸はストレス解消、血行改善、交感・副交感神経のバランスの調整などで免疫システムの維持、健康な身体づくりと予防に一役買っている。だからこそ、未病治にむけ、日々、その修行に励み、ますます精進しなければならないと自問自答している。


新医協関西研究集会に参加して
                                              2005年07月12日 (火)

 近いうちに東南海地震が襲ってくるだろうという予測がとりざたされているなかで、阪神淡路大震災や新潟地震から、何をいかに学ぶか、他人事ではなく、とくに医療に携わるものとしてどのような対応が必要なのか、問題意識を整理しておきたいということで、はじめて新医協の研究集会に参加させてもらいました。

 阪神大震災で、医師として救助活動にあたられた東神戸病院の大西和雄先生は同時に被害者という立場にありました。お話しのなかで、「医療」だけでは救いきれない死に直面したこと、被災者も救助者も被災当時はほとんどみんなが“躁状態”になり、それが何日も続き、時間が経つに連れ、鬱へと変わっていってしまうこと、したがって5日間で元の生活状態に戻すなどの教訓は、被災時における医療従事者としても胸に刻んでおくべきことだと思います。もちろん、震災関連疾患がやはり災害弱者を襲い、CWAP(子ども、女性、お年より、病弱者)という災害弱者の安全な避難について、行政も、医療従事者としても、その対処のあり方が大きく問われ、いますすんでいる経済格差の拡大やコミュニティ崩壊など、政治的にも社会的にもなんらかの解決方向を明確にしておかないと今後いっそう深刻な問題になるのではないかと思います。さらに、パイプラインの問題以上に、復興過程で孤独死が二百数十名にも及ぶということからライフラインの確保の問題は深刻です。アルコール依存症や年収100万円以下の、とくに40〜50歳台の男性に集中した孤独死が続いたことから、日常のコミュニティのあり方とのかかわりが新潟の経験からも大事であることが指摘されました。医療従事者として、災害への対処の仕方やマニュアルづくり、ボランティア活動などを通じて、災害救助へのかかわり方など、新医協などで、こうした研修や企画などをしていけるように、期待しております。
 現在、先生は震災経験からホスピス医となって、直面している問題もとりあげられましたが、癌を宣告された患者さんとどう向き合うか、いま行なわれている病院からの「追い出し」ともいえる医療政策のあり方にも、いろいろ示唆されました。

 この研究集会には、大阪は八尾で妻とともに、鍼灸整骨院とデイサービスセンター、訪問介護を運営しているものとして、第T部の「安心と安全、健康な街づくりめざして」はもちろん、第U部の「鍼灸・マッサージをとりまく最近の話題から」についても、大変興味を抱き、参加させていただいた大きな動機です。10年ほど前に、新医協の会員が鍼灸団体の総会で、鍼灸の保険適用を主張したために、政府にたてつく発想だとしてひどい仕打ちにあったということですが、いまではその団体が保険適用の拡大を政府に求め、年々医療費の中に占める、鍼灸マッサージの保険請求が急増しているという報告に、ある種の感慨を覚えました。そして、予防(未病)における鍼灸治療の医療費削減効果について、市民生協の職員を対象に住江鍼灸センターが取り組んでいることなどは、大変興味深いものです。
 「東洋医学」には無知・無学と自称される元尼崎医務監の山本繁先生の文書発言にあるように、「『西洋医学』の整形外科とは違った予防・治療・リハビリ」はじめ、「全人的な見方・視点」に、「『東洋医学』スタイルの活躍が期待される」という提言をいただき、気を強くしているところです。

※ 関西研究集会は、2005年7月10日、京都市勧業館みやこめっせで行なわれました。



片頭痛には、鍼治療も有効!
                                      2005年07月17日 (日)

「しんぶん赤旗」編集局 御中

 いつも日曜日に掲載される医療等の科学分野の記事を楽しく読ませてもらっています。わが鍼灸整骨院でも、患者さんとの対話や、場合によっては、健康や医療に関しての適切なアドバイスなどいろいろ役に立つことがあり、活用させてもらっています。

 ところで、本日の「しんぶん赤旗(社会・総合)」14面の「片頭痛に有力治療法」を読みましたが、確かに偏頭痛の「原因がよくわから」ないのですが、「従来は鎮痛剤を飲んでがまんするしかありません」という内容には納得いかず、1面的な内容としかいいようがありません。片頭痛に限らず、さまざまな頭痛に有効な治療法として、鍼治療がすぐれていることは、日々の臨床の経験からもはっきりといえることです。東洋医学的には、片頭痛の鍼灸治療はおもに発作期より緩解期における予防効果を目的とした治療が中心になる場合が多いといわれていますが(例えば、埼玉医科大学東洋医学科・山口智、日本頭痛学会誌26、1997。同31、2004など)、少なくとも、鍼灸師の「適切な治療を受けることによって(も)、苦痛を減らすことができ」ます。

 「赤旗」の記事で、健康や医学の分野を扱うときに、今回のようにときどき西洋医学だけからの記事になっている場合が多く、日本の遅れた、歴史的にはきわめて政治的な背景をもつ日本の「医学」のあり方がそうしているものかと思いますが、日本ではどうあれ、東洋医学はいまではWHOはじめ世界中で文字通り「医学」として位置付けられており、貴紙で医学を扱うときには、少なくとも日本古来からの伝統医学、東洋医学からのアプローチも念頭にいれた報道をすべきではないかと、常日頃考えていました。WHOでは、鍼灸の検討対象になっている疾患名に、「1.神経科および整形外科疾患 headache 頭痛  migraine 偏頭痛 trigeminal neurulgia 三叉神経痛 …」があげられていますが、実に多くの疾患に対応できます。アメリカなどでは、鍼灸を含め東洋医学のカテゴリーに属する治療法の有効性の検討のために、国立衛生研究所(NIH)などに、毎年100億ドルをこえる予算が計上され、また高度医療とちがい、有効性とともに医療費の抑制に大きく寄与することからも、国家的に位置付けており、日本より、東洋医学への考え方や政府の位置付けはあまりにも遅れています。

 蛇足ですが、いま、鍼灸に関する専門学校が急増(60数校)し、毎年、国家資格をもった鍼灸師が3千人を越えていると思います。医学部と違い、わずか3年間の教育しか受けていませんし、ある意味では誰でも入学し、資格を取れます。鍼灸師でなく、「鍼灸医」として、通じるようになるには、今日の制度の根本的な検討抜きには考えられず、現在資格をもつ鍼灸師でも、「鍼灸医」として認められるようになるには、日本鍼灸学会が検討を始めているように、さまざまなハードルが必要になってきます。ちなみに、1万人をこえるアメリカの鍼灸師の3分の1は、医師です。
 日本共産党として、日本古来から発展してきた伝統医学の位置付けや、明治以降の狭い、間違った医学制度の歴史的検討など、東西の枠を超えた21世紀の日本の医学制度のあり方を根本から検討した日本共産党の21世紀ビジョンをつくってもいい時期に来ているのではないかと思います。

                  新日本医師協会会員、大阪府鍼灸師会会員、はりきゅう師・佐藤啓二(大阪府八尾市在住)



      全人的医療=統合医療への挑戦
――幅広く応用できる陰陽論がおもしろい――

                                                   2005年08月01日 (月)

 「大地がぐるぐるまわるような感じで気持ち悪い」「食欲がなく、吐き気がする」「肩引きのあたりが凝って、頭も…」。

 猛暑の中で、肩こりからめまい、便秘や腹下り、咳や微熱、不眠…と実にさまざまな症状を訴える人が少なくない。西洋医学的に見ると、これらの症状は一見別々に独立したもののように診られる。症状がひどくなると内科、整形外科、耳鼻咽喉科などいくつかの病院をまわる羽目になり、場合によってはたくさんの薬を処方される。

 現代医学は、確かに一つひとつの病気への対応、遺伝子や分子のレベルなど微細な身体のしくみを解明する分野でめざましい発展と成果をあげてきている。
 しかし、いま、医学界で注目されているのが、人の身体を全体的に診る統合医療だ。全国の大学病院などでは、「統合内科」などを開設しているところも出てきている。

●東大病院医局長などの肩書きを持つ帯津良一先生は、「自分が歩んできた西洋医学の限界を見つめ直し、漢方、鍼灸、気功、食事療法…などを駆使してガンに立ち向かい、…ときには奇跡的な治療効果を上げている」(村尾国士著『どんなガンでもあきらめない』)。
 
●「これだけ進歩をとげた西洋医学が、慢性疾患については、ほとんどお手上げ…。…近年、統合医療、統合医学、あるいは全体医学とよばれる、身体全体を捉える医学が大切だという声が大きくなってきている」として、免疫学という最新の科学的研究を駆使しながら「全人的医療をめざ」し、免疫療法を提唱している安保徹・新潟大学大学院医学部教授もいる。などなど。

 「統合医療」とは、現代西洋医学の優れた面と東洋医学などに代表される相補・代替医療の優れた面を、個人の患者に適したものを選び、個人の病気の治療に応用するという考え方で、第3の医学ともいわれている(『全日本鍼灸学会雑誌』第52巻5号、渥美和彦・東大名誉教授)。

 ところで、人の身体や病気(の原因)を全体的に診て、治療にあたるという東洋医学、中国伝統医学は、その基本理論に「陰陽論」をおいている。この「陰陽論」はけっこう医学に限らず、幅広く応用できるからおもしろい。
 その極めつけは、宇宙理論の元になっている「量子力学」である。宇宙の誕生は「ビッグバン理論」がいまのところ定説になっている。ぎゅうぎゅう詰めの物質がその臨海を越えて爆発、巨大なエネルギーになって、宇宙を構成している。つまり、エネルギーはそれのみで存在することはできず、引力、電気、磁場などの物質が場に及ぼす歪みとしてしか存在しない。一方、物質はエネルギーが一定に保たれて初めて安定した存在となる。宇宙はエネルギーと物質の相互依存によって保たれているということになる。

 これを「陰陽論」にあてはめると、物質は陰、エネルギーは陽になり、この宇宙をつくっており、その調和で宇宙が維持されており、小宇宙である人体も陰陽から構成される(天人合一)。陰と陽の二つが対立関係にありながら、相互に関連(依存)しあう関係にもある。
 ノーベル賞物理学者である湯川秀樹博士にしても、ニールス・ボーアにしても、陰陽論との相似性を認めていることに興味を抱かざるを得ない。
                                

             太極図:陰陽対立しつつ、分け難く、陰中陽あり、陽中陰あり、陰陽互根等々。


 さて、東洋医学では、人体の構成要素を「気・血・津液」に分類しているが、「陰分」である「血・津液」はいずれも「陽分」である「気」のエネルギーによって機能を発揮し、これら円滑に働くこと(陰陽平衡)で、健康体を維持している。
 逆に、この陰陽のバランスが崩れた状態(陰陽失調)がいわば病的状態となる。原因は、内因・外因・不内外因によってかく乱され、正気と邪気(虚実)の相対的関係が結果として「陰陽失調」を来たす。また、これが、五臓六腑など身体のどの部位で起こっているかを見分ける。
 陰陽の相対関係論は、西洋医学的に見るとホルモンや自律神経のバランス関係、胃潰瘍などに表現される攻撃因子と防御因子の関係等々に相通じる。

 かくして、全人的医療、統合医療はこうした面から、今後の発展に大いに期待される。


耳ツボダイエット”って、効く??
                                   2005年10月01日 (土)

 「肥満に効くツボってあるんですか?」とか、「耳ツボを使ったダイエットって、ほんまに効果があるんですか?」という質問をよく受ける。

 「あるツボに鍼を打って、痩せられるなら、病気で肥満になったりした人以外、太った人などこの世に存在しなくなる。そんな都合のいい話はない」とはっきりいうことにしている。
 しかし実際は、古くから、健康のために、鍼灸や指圧・マッサージなどで、肥満防止や一定のダイエット効果に少なからぬ影響を与えていることも事実だ。

 東洋医学的に見ると、肥満に関しての古典の記載は少ない。2千数百年前の中国最初の古医書『黄帝内経素問』には、「肥貴人」とあり、「脳卒中や息があがってぜぇぜぇしたり、手足に力が入らず冷えたりする病気は、肥った高貴な人が罹るもので、贅沢な生活をし、肉食のご馳走を食べたために生じる疾患」(通評虚実論篇)とある。昔は、肥貴人=肥満は高貴な人に特有な病気として扱われ、一般的にはあまり問題にされるような食レベルではなく、庶民的に問題になっていなかったようだ。とはいえ、全身の関係するツボを使った鍼治療、すなわち、あるツボを鍼灸や指圧・按摩などで刺激し、食欲を抑えたり、消化や代謝をよくするなどして、病的肥満に対処してきた。現代では、ごく普通の庶民の生活習慣となり、肥満は、明らかに生活水準の向上による食生活や自然サイクルに逆らった日常生活の乱れなどが肥満状態をつくり出している。そして、死の四重奏(上半身肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病)という肥満に伴う疾病へ発展する。

 それでは、誇大宣伝のきらいもある「耳ツボダイエット」や他の“ダイエット術”などはどうか。

 「耳ツボダイエット」に関して言えば、確かに、耳にもツボがあって、「胃」「神門」「内分泌」「肺」などというツボを刺激すると、食欲が落ちたり、消化やホルモン分泌などが進む人もある。鍼だけではなく、金粒などを耳に貼って行なう場合もあり、効果は鍼と同様に認められる場合もあり、鍼灸などの国家資格がない人でも誰でも行なえる。しかし、生活習慣の見直しやカロリー消費のための適度な運動などの努力なしには、ありえないことだ。問題なのは、この後の部分だ。高価なサプリメントも否定はしないが、そんなお金を使ったりする必要があるのかどうか、よく見極めることではないか。
  
 ところで、「肥満」とは、病的な肥満(※1)とちがって、単に脂肪が体内に標準以上(※2)に蓄積していることをいい(単純性肥満)、「皮下脂肪型」と「内臓脂肪型」(※3)がある。内臓脂肪型は、健康障害の発生率が高く、これを放っておくと将来いのちにもかかわる可能性があり、こうした病態を「肥満症」といって、肥満と区別する。肥満症は医学的に減量を必要とする。つまり、動脈硬化症になって、心筋梗塞や脳梗塞の引き金になることが懸念されるからだ。

 要するに、肥満(症)防止やダイエットには、@甘いものや油っこいものの偏食などで過剰な脂肪摂取をさけること、つまりカロリーオーバー状態をつくらないこと、A食べたものを消化し、生命維持にとって不可欠な最低限の栄養にできる代謝の促進をはかること、そしてB適度な減食と運動は避けられない。Aについては、鍼灸やマッサージでお手伝いできるが、大変なのはBではないか。@については、過分にストレス状態も関係するので、やはり鍼灸やマッサージによる“癒し”効果などに期待してもいい。
 
 過激なダイエットはやめて、低脂肪・低カロリー食品の摂取に心がけ、脂肪を取り過ぎないようにする。中性脂肪を抑える酢の物やキウイなどタンパク質分解酵素を含むもので肉料理に付け合せたりして,“馬肥ゆる秋”を堪能したいものだ。

  (※1) @クッシング症候群、ステロイド中毒などの内分泌障害。A髄膜炎、脳腫瘍、頭部外傷、視床下部性疾患など中枢神経障害。
  (※2) BMI(体重s÷身長m÷身長m)が25以上。
  (※3) へその高さのウェスト周囲が男性85p以上、女性90cm以上、Aウェスト:ヒップ比が男性0.95、女性0.80以上が目安。

(K.S)



逆子と安産にお灸の効果
                                 2006年01月29日 (日)

「早く産まれないかな〜。怖いけど楽しみ。毎日3時間歩くのはとてもハードだけど、病院じゃなくて助産院で水中出産したいのです。」

 天然精油のせっけんを製造・販売(MOONSAOP)している東京の姪から、こんなメールが届いた。
 この2日後の1月29日、姉から携帯にかかってきた電話で、女の子が誕生したことを告げられた。予定日より10日ほど遅れての出産で、3,530gと大きめなのに安産だった。もちろん、水中出産で。

 姪は、昨年の10月に、仕事のついでに我が家に泊まっていったときにすすめた安産用のお灸を、出産ギリギリまでしていた。お灸は足の内側にある脛骨内縁部(内踝の上、4横指)の「三陰交」に、毎日1回5壮すえるよう指示しておいたのだ。直接焼くと火傷するので、艾(もぐさ)・線香とともに、「灸点紙」も渡しておいた。この「灸点紙」とは、1円玉ぐらいの大きさで、外側が紙、中の丸いところがアルミ箔でできており、真ん中に1ミリほどの穴が空いている。そのうえから、艾をおいて、灸をするが、焼け跡は残らず、効果は直接焼くのと変わらない。

 「先生、逆子が治りました」と電話の向こうで、ご主人のはずむ声がした。
 昨年末、「逆子に、お灸が効くと聞いたので…」ということでやってきたMさんは、もうすでに妊娠29週目。艾を手に入れて、自宅でご主人にお灸をしてもらったが、足の小指の爪根部(外側)にある「至陰」穴に、小豆ぐらいの大きさで真っ黒に焼けた跡が生々しく残っていた。
 Mさんは「主人にしてもらうと、熱くて、どうも緊張して、お腹がかえって張るんです」。「これで、ほんまに効くのか。このお灸でいいのか」不安でやってきたのだ。

 至陰穴の場所は、間違いなかったが、@艾の大きさを半米粒ほどの大きさにすること(これがはじめての人には至難の技なのだが)、A燃え尽きる手前で、指で軽く挟んで消す(九分灸というがこれも少々難しい)。B1日15壮を目安にすえる。C「三陰交」穴に、灸点紙を貼って、至陰とともに、毎日5壮すえる。Dゆっくりと呼吸をする。など実地で教えて、周に1〜2回来院するようにしてもらった。来院時には、施灸だけでなく、三陰交と腰部への鍼をして、心身ともにリラックス状態を作り出してあげることも大切だ。
 ほかに、昔から伝わる逆子体操や逆子治療もしてやった。

 昨年秋、逆子治療でほかに2人来院されたが、いづれも8ヶ月にかかろうとしている妊婦さんばかりで、この時期の成功率は40〜50%ぐらいであることを告げて治療にあたった。その結果、逆子矯正ができたのはMさん含め、2人だった。
 できれば、逆子がわかった時点で来院されるほうがいい。遅くなればなるほど、矯正の確立が低くなる。

 鍼灸は、薬なしで矯正できる上に、出産まで続けると安産になることが期待される。それに、妊婦の健康にとってもいいし、何よりも、ご主人にお灸を据えてもらうことで、出産がさらなる夫婦の絆を強くしてくれるのではないか。


夜間のトイレ減って、不眠解消!
前立腺肥大症による尿障害も改善


2006年4月15日

 夜中に4〜5回もトイレに行くのは、不眠症のもと。実にたくさんの方がつらい思いをしているようだ。
 ところが、女性でも男性でも、鍼灸を1〜2回しただけで、夜間のトイレの回数が減ってとても喜ばれている。もちろん、お昼のトイレの回数や男性なら、チョロチョロしか出ない“おしっこ”が普通に出るようになったり、女性ならむくみの解消も加わるという効果がある。

 75歳の男性は、前立腺肥大症と腰痛で来院されたが、10年来、いろんな病院をまわっても薬漬けでいっこうに排尿障害は改善しなかったという。「日経」夕刊に東洋医学で改善している記事を見て、日経新聞に電話をしたところ、当院を紹介していただいて、週1回のペースで来院されるようになった。腰痛は1回でましになったが、排尿障害は2回目で改善の兆候が実感でき、およそ1ヶ月ほどで、夜中に4〜5回トイレに行っていたのが、2回ほどになり、半年経った冬の時期にも1〜2回に減ったという。

 排尿異常は日常生活にさまざまな不快感となってあらわれる。とくに、尿道が短い女性の場合、くしゃみなどちょっとしたことで尿漏れ・尿失禁に悩んでいる人も少なくない。多くの女性が経験している膀胱炎・尿道炎などを原因とし、@排尿回数が頻繁に起こる頻尿、A排尿痛、B尿の色が少し濁る(尿混濁)などの兆候が出る。多くは、大腸菌やぶどう球菌を原因とする感染症だが、細菌だけでなく、トイレを我慢しすぎたりして尿停滞を起こす、あるいは骨盤内充血などによる抵抗力が減弱することで、急性の膀胱炎になることもある。急性の初期には、抗炎症剤なども必要とするが、菌が減少すると鍼灸治療は効果がある。もっとも、あったかいお茶などをたくさん飲んでもらい、お灸も使い、膀胱炎を治療したこともあり、3日ほどでほぼ治癒した例もある。
 膀胱炎は刺激性のある食物や消化によくないものなどを避け、便秘傾向にならないように注意する。もちろん、過労は悪化させることもあるので、安静にすべきだ。

 男女問わず、尿失禁の多くは、括約筋の衰えによる。高齢者に多い「切迫性尿失禁」は介護予防の重要な筋力向上トレーニングのメニューに位置づけられている。とくに、大腿骨の内側の筋肉(内転筋群)などを鍛えるためのバイバイ運動(足を伸ばして、足先を内外に回す運動)などは誰でも気軽にできる。
 原因は膀胱の筋肉を使いすぎたり、収縮力が低下したりして起こる。さらに、脳卒中や認知症、パーキンソン病などから脳の活動の変化(橋排尿中枢のコントロール障害)が関連して起きることも多い。膀胱に少しでも尿がたまると排尿中枢が興奮して膀胱が収縮しやすくなる、いわゆる「過活動膀胱」になり、昼夜を問わず、頻尿となる。

 先にあげたように、男性の前立腺肥大症は、その初期(第1病気)には、尿道が刺激され、排尿の開始が遅れる(出にくい)、排尿時間が長くなる、勢いがなくなる。この時期なら、鍼灸の効果は大いに期待できる。さらに、第2期になると、前立腺結節が増大して残尿感がいつもあるような状態で、量は多くなく、頻尿が激しくなるとはいえ、全身状態は良好。過労や飲酒で排尿不能になったり、排尿痛に襲われることもある。鍼灸は排尿を助け、頻尿を減少させることができるが、手術などが必要となる。

腰痛・膝痛の解消と予防

2006年6月5日

 東大阪にある介護施設(ケアハウスなど)の入居者やスタッフの鍼灸・指圧の治療で週2回ほど訪問している。その介護施設で6月5日、主にスタッフを対象にした「腰痛学習会」が行なわれた。

 いつも治療にあたっている当院・当社の代表が『腰痛と膝痛の治療と予防』と題して、1時間余りの話と腰痛・膝痛体操と治療の実際について実演した。

 まず、腰痛・膝痛の健康チェックを、15人ほどの参加者にしてもらった。ほとんどの人が腰痛の“やや危険”度にランクされていることがわかった。つまり、「腰痛のメカニズムを正しく理解し、腰痛防止のための生活改善に努力する」べきランクにある人たちである。膝のほうも、このまま放っておけば、将来、変形性膝関節症になりかねない人もいた。

 まず、腰痛になりやすい人の特徴として、@肥満、A腹筋・背筋が弱い、B同じ姿勢で仕事をする、Cストレスが多い、などがあげられるが、腰痛の原因の4割ほどがストレスからくるとの話しには、それぞれ感じるところがあったらしい。

 そして、骨や筋肉、あるいは神経などが痛みの発生原因としてあるが、ストレスとも関連して、体内の生理的な変化による激しい痛みが生じる場合もある。男性にもあるが、とくに生理前後など女性に多い骨盤内充血などとも表現される、気血の渋滞に関連した激しい腰痛だ。立ち上がりや中腰姿勢などで痛みが激しくなり、立ち上がりができない場合もある。この場合、いくら腰の痛んでいるところやその周辺に、鍼や指圧を加えても、多少は痛みの軽減があっても、ほとんど症状は変化しない場合がある。月2〜3人は、こうした症状で来院される。

 しかし、ほとんど1回か、多くても2〜3回の軽い鍼治療と他動的な腰捻り運動で、ほとんど痛みはなくなる。鍼が恐いとか、嫌いという人でも、痛み個所と遠くはなれた足や下腹部にまず、針を刺したかどうかわからないような治療をするので、あとから、「針をしたんですか」とよく聞かれるが、それでほとんど痛みは軽減する。そのあと、まだ腰痛の重い感じが残っていなければ、他動的な腰捻りで、ウソのように腰痛は消えていく。一様に、患者さんはびっくり、きょとんとしている。

 当日は、こうした腰痛持ちはいなかったが、右の腰が痛いという20代の女性がいたので、脈診などで診察すると、やはり気血運行に問題があっての痛みの誘発も考えられたので、痛み個所から遠く離れた患側の足に、針を刺入したかどうかまったくわからない程度の針1本と、腰の捻り運動で痛みは消えた。不思議そうに、しかも爽やかな顔をした女性の術後の感想に、参加者の拍手をいただいた。

 腰痛が生じる日常生活のさまざまな動作について、未然に防ぐ姿勢や、デスクワーク、介助や荷物運びなどでの注意点を実技を交えてお話し、最後に、お年よりもできる腰痛・膝痛体操をみんなで実演。

@両膝横倒し
A両膝抱え
Bヒップアップ(背筋)
C肩甲骨浮かし(腹筋)
Dハーフスフィンクス(肘立て顔おこし)
Eねこの脅しの姿勢
F立ったまま腰ひねり
G座ったままの膝伸ばし
Hストレート&サイドレッグレイズ
Iスクワット運動
        などなど。



健康チェックと体力テスト、ストレッチで健康・予防のすすめ

3月18日(土) 午後2時〜5時  ウィング(八尾総合体育館)でやりました。

内容:@映像で見る血液バイタルチェック、血圧測定など     
    A気軽にできる体力テスト(あなたの体力年齢は?)
    B東洋医学的診察、その他               
    Cストレッチ体操、ソフトバレーボール大会、などなど


主催:大阪府中小企業同友会八尾支部
協力:さとう鍼灸整骨院、泣Eィズ  











さまざまな病気や予防に対応…9月の疾患
2006年10月02日 (月)

 9月に来院された鍼灸治療の患者さんの主訴と治療は以下のように、肩こり・腰痛・膝痛の3大疾患以外に、実にバラエティでした。

1.肩こり……………………………………21.3%
2.腰 痛……………………………………17.0%
3.膝 痛……………………………………10.6%
4.眼疾患(近視・眼精疲労など)………… 7.4%

5.坐骨神経痛/不眠/下肢浮腫/上腕痛/
  排尿障害(前立腺肥大、婦人科系)…… 6.4%

6.手足のしびれ/胃痛/頭痛・めまい/
  心疾患/耳鳴り・難聴/スポーツ傷害
  /婦人科疾患(子宮筋腫など)………… 5.3%

7.喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)……… 4.3%

8.五十肩/前立腺肥大症/弾発指/不妊症
  /小児(疳の虫など) )………………… 3.2%

9.脳卒中後遺症/アトピー皮膚炎/肘痛
  顔面麻痺/甲状腺低下症/咽の痞え/
  突発性難聴/脊柱管狭窄症/歯痛…… 2.1%

10.鼠径部痛/胆のう系疾患/痔疾患…… 1.1%

 治療の結果、

@顔面麻痺、排尿障害や鼠径部痛、肘痛など著名な効果を得たもの。

A慢性の肩こりや腰痛、膝痛などは、その場で軽快するが継続治療が必要。

B治療続行で軽快の方向にありながら経過観察のもの(アトピー性皮膚疾患、突発性難聴、脊柱管狭窄症、腱鞘炎、バネ指…)。

C効果がすぐに現れず、継続治療が必要なもの(子宮筋腫や不妊症)。

などであった。


つらい下痢…潰瘍性大腸炎に灸
2006年11月29日 (水)

 「潰瘍性大腸炎」という「難病」がある。この難病にかかっている患者さんが鍼灸治療で来院されている。
 1日の排便回数はだいたい10回から多いときで、20回にも及ぶという。まだ40代なので、働き盛りだが、仕事中に10数回もトイレに行くのは、さぞかしつらいことだろう。

 最近、仕事が一段落したからといて、また来院されるようになったが、お灸だけの治療で、翌日はトイレの回数が半分くらいに減って、腹痛もなくなり、ずいぶん楽になるそうだ。完治するのかどうかわからないが、現代医学では、難治とされている疾患でも、ステロイド剤などの薬品なしで、症状は軽くなる。

 ところで、高度医療や医薬品に莫大なカネをかける日本の医療費が国家財政を「圧迫している」からといって、無駄遣いを尻目に、医療費の一部を国民の負担増や難病などの医療費助成のカットなどで切り抜けようとしている。とんでもないことだ。

 そのひとつが、潰瘍性大腸炎とパーキンソン病のうち軽症者について、助成を打ち切るという。そもそも、「難病」とは、いわゆる「不治の病」に属する病気であって、「治療がむずかしく、慢性の経過をたどる疾病」と定義されている。病気の軽重で、簡単に打ち切っていいものかどうか。

 難病については、昭和47年の難病対策要綱に、「(1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病、(2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」と定義されている。

 また、難病のうち、原因不明で、治療方法が確立していないなど治療が極めて困難で、病状も慢性に経過し後遺症を残して社会復帰が極度に困難もしくは不可能であり、医療費も高額で経済的な問題や介護等家庭的にも精神的にも負担の大きい疾病で、その上症例が少ないことから全国的規模での研究が必要な疾患を「特定疾患」と定義している。

 潰瘍性大腸炎の症状は「大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。この病気は病変の拡がりや経過などにより下記のように分類されます。

1)病変の拡がりによる分類:全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎

2)病期の分類:活動期、緩解期

3)重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症

4)臨床経過による分類:再燃緩解型、慢性持続型、急性激症型、初回発作型 」

とある。

 患者数は、現在、77,073人(平成14年度特定疾患医療受給者証交付件数より)と報告されており、毎年おおよそ5,000人増加している。米国の100万人と言われている患者数に比べると10分の1以下だそうだ。

 八尾市では、5〜60人ほどいるらしい。

 当院の患者さんは、中等症だから、助成の打ち切りはないと思うが、もし症状が軽減して、1日10回以下の排便になれば、打ち切られる可能性がある。実際、お灸で確実に排便回数が減ってきている。場合によっては、4〜5回の日もあるという。そうなると、助成の打ち切りの対象となる。治療する側にとっても、患者さんにとっても、現在の日本の医療制度のあり方が根本から問われるような思いだ。

 難病情報センターにも一言いいたい。以上の情報ソースは、この難病情報センターからのものだが、そのなかで治療法という項目に、鍼灸の治療法についてはいっさい触れられていない。日本の医学の伝統医療を法的に認めていない、いまの日本の医学の現状だ。

 パーキンソン病の患者さんも何人か来院されているが、次回に報告したい。


パーキンソン病と鍼灸
2007年01月25日 (木)

パーキンソン病と鍼灸、指圧マッサージ

 「先生が見つけてくれたおかげで、だんだん良くなってきて、ほんまに助かってる。」とパーキンソン病と診断された60歳代のKさんが、こういってくれた。
 Kさんは以前にも何度か来院されていた人で、友人たちと山に登っては、よくこけたりして、「腰が痛い。足がつって寝られない」などと、ときどき来院されていたのだが、いま考えてみるとパーキンソン病の前駆症状だったのではないかと思う。

 昨年9月頃、歩く姿や表情、軽い振るえなどの症状を見て、明らかに「パーキンソン病」(※1)だろうと思い、いつもお世話になっているクリニックを紹介。その先生はリハビリも専門とし、パーキンソン病患者を手がけていることもあって、鍼灸治療の「同意書」と症状の詳細な診察内容・所見等をいただいた。

 結局、ドーパ剤などの薬(※2)の処方とともに、リハビリ治療も合わせてしていくこととなった。もちろん、パーキンソン病特有の筋肉が固くなる「筋固縮」などを緩解させていく目的で鍼灸治療や指圧マッサージも続けることになった。途中で、病院を変えて以前お世話になっていたという大きな病院に転院したが、鍼灸治療は続けている。鍼灸は、とくに手足の筋肉がつったり、固くなったりしている部分への通電鍼治療と、振戦の抑制や脳の神経回路の活性化を目的にした鍼灸治療も行なっている。

 ところで、これまでのパーキンソン病の治療薬とは異なった効き方をするというてんかん治療薬=ゾニサミドを少量処方すると運動機能が改善するという「国立精神・神経センター」の研究結果が新聞で報道され、早速、この病院の医師にいうと、情報は承知していたらしく、従来の治療薬に加えて処方してくれたという。

 最近、Kさんは、あまり調子が良いということで、愛犬の散歩に頻繁に行くようになったが、ある日、手から逃げ出した愛犬を追いかけ、転倒して、軽い怪我をしたときもあった。
 「急に動き出せないのが、この病気の特徴なんやから、無理したらダメやで」と、何度か忠告しているが、足の痛みがましになって、仕事も、愛犬の散歩もするようになったのはいいことなのかな!?といっしょに喜んでいる。

 この病気は、徐々に進行することも言い添えてあるが、鍼灸治療や固縮した筋肉の指圧マッサージなどは少しでもその進行を遅らせるのが目的だし、早い薬物治療をしていけば、平均寿命は一般と変わらないという報告もあるからと元気づけ、週1〜2回は治療している。とくに、パーキンソン病の初期なら、この患者さんのように進行を遅らせるだけでなく、諸症状の改善にも役立つのではないかと思う。しかし、病状が進行した場合の状態ならどうか、いまのところはっきりしていない。
 気をつけなければいけないのは、パーキンソニズム(※3)(パーキンソン病を含めパーキンソン病類似の症状を示す神経疾患全体を指す。パーキンソン症候群ともいう)との鑑別である。Kさんだけでなく、パーキンソニズムと思われる患者さんは、これまで数人診療してきたが、鍼灸医学への無理解や誤解などから、Kさんのように持続した治療ができずに、中途半端に終わっているケースも少なくない。西洋医学と鍼灸医学(東洋医学)の統合医療めざしている当院にとって、今後の課題でもある。
 
※1:パーキンソン病は、@振戦(手のふるえ、自分で動かそうとすると止まる)、A筋固縮(筋肉が固い)、B無動症(運動が遅い、)が3大症候で、進行すると、C顔の表情が固くなる(仮面様顔貌)、また肘などに抵抗を加えると歯車様にガクガクと断続的な動きをする、D前傾前屈位姿勢(前かがみ)、E突進現象(歩き始めに足が出にくくなり、歩き出すと突進するように歩く)、F歩行も小刻みに、歩幅も狭くなる、G手や指の振るえも、丸薬を丸めるような動作、などなど。
 原因は、中脳の黒質にあるメラニン細胞の変性萎縮が主な変化。この細胞でつくられる神経伝達物質の一つ、ドーパミンが産生されにくく、運動調整をする錐体外路系の機能障害がおこる(『家庭医学大全科』などより)。

※2:線条体に入ってドパミンに変わるL-Dopa製剤、ドパミンの代わりをするドパミンアゴニスト、ドパミンとアセチルコリンのバランスを直す抗コリン薬、ドパミンの分泌を促す塩酸アマンタジン、脳の中でノルアドレナリンに変わるドプスがある。これらを組み合わせて使うのが現在のパーキンソン病の内科的治療法。その他に外科的治療法があり、ひとつは視床の一部を破壊する方法でふるえに効く。もうひとつは、淡蒼球を破壊する方法で、動作緩慢、歩行障害、L-Dopaの副作用である不随意運動に効く(「難病情報センター」より)。

※3:パーキンソン病のほかに脳炎、血管障害、一酸化炭素中毒によるものや薬物(消化性潰瘍に使用されるスルピリド、脳循環改善剤のフルナリジンなど)によるものなど、10種類ほどの症状がある。

 それにしても、厚生労働省は昨年、医療費抑制のために、難病指定のパーキンソン病と潰瘍性大腸炎の「軽い」症状について、特定疾患の助成措置から除外しようとしたが、世論の批判にあって、いったんは引っ込めざるを得なくなった。
パーキンソン病でいえば、「日常生活、通院に介助を要する」という「生活機能障害度」がU度以上を治療対象疾患として認定し、助成を行なってきた。

 当院のKさんは、症状や日常生活からして、U度のなかで、ステージ3「姿勢保持障害が見られる。活動はある程度制限されるが、職業によっては仕事が可能である。機能的障害は軽ないし中等度だが、1人での生活は可能である」(Hoehn & Yahrの重症度分類)ぐらいなのではないか。おそらく、厚労省はこのステージ3以下を除外しようとしていたらしく、もし、認定されている人が助成対象から除外されたら、医療費を払えなくなる人も出てくるのではないか。進行してからでは、その治療や介助などで、余計に医療費がかかることは目に見えている。Kさんのように、初期段階で発見し、早く治療を開始すれば、進行も遅らせることができるし、医療費もその分抑えられる。
 その点で、こうした病気の予防や健康に、地域に根ざした鍼灸医学・東洋医学のこれからの貢献度は大きい。日本の“ほねつぎ”はいまや、世界に「柔道セラピー」として紹介され、鍼灸はすでに世界中に広がり、代替医療としての地位は揺るぎないものになりつつあるのに、日本は世界の流れからして、大きく立ち遅れている。
(2007年1月25日)

【追記】
 大阪市内に通院のKさんは病院の先生に、「見違えるようによくなっているね!」といわれて、「ここで(さとう鍼灸整骨院)、一生ご厄介になるね」といってくれました。まだ、筋肉があちこち硬くなり、指がつったり、ふくらはぎがつったりするときもあるが、最近、確かに、顔の表情も豊かになり、気持ちも晴れ晴れしているようだ。これからも、パーキンソン病という難病に立ち向かっていきたいものだ。(07年3月1日)

刺さない鍼(皮膚刺激鍼)で劇的な効果
                              2007年02月14日 (水)

 最近、刺さない鍼が筋肉痛や神経痛、あるいはさまざまな内科疾患などの治療に効果を上げ、患者さんから「鍼が気持ちがいい」「すごく楽になった」と喜ばれている。

 もともと、鍼には症状によって、刺激量の大小や刺し方などを変えた使い方があり、古代中国の最初の鍼灸医学書(黄帝内経『霊枢』;「九鍼十二原篇 第一」)にも書かれている。いわゆる、補瀉の効果といわれ、「東洋医学においてもっとも重視されている治療技術」((社)東洋療法学校協会編『東洋医学概論』P146)である。人体も自然の一部であり、自然現象と同様に不足しているものは補い(補法)、充実しているものは取り去る(瀉法)のが望ましく、それによって、機能しなくなった体内の調整能力を取り戻していくのである。

 実際、脈を診て、睡眠不足やストレスなどで心の気が弱い人はほとんど、胸中の乳首間の中央にある「だん中」穴に圧痛があり、手首の真ん中にある「大陵」(厥陰心包経の原穴)に、鍼をあてながら(刺さずに)、数十秒、軽くまわすように刺激を与える(補法)と、圧痛はとれるし、次第に気持ちが楽になり、呼吸も吸い易くなってくる。また、胃痛や胃重感のある人に、同じように腹部の真ん中にある「中かん」穴に施術すると、楽になるなど、いろいろ応用してきた。
 しかし、ときに刺激量が多すぎたり、診断があいまいで補瀉法の選択が不十分であったり、ときには「痛い!」思いをさせてみたり、紆余曲折、試行錯誤してきての今日の到達である。この間、患者さんにある意味、迷惑をかけてきたところもある。

 ところで、肩こりや腰痛などの筋肉痛や、脳血管障害の後遺症や脊椎ヘルニアなどによる神経痛など、一見充実しすぎている(虚ではなく実)と思われるようなさまざまな疾患にも、この方法が効果を上げていることを実感している。

 それは、ある患者さんの治療中に、はっきりとした感性の変化に気付いてからである。

 07年2月6日、右鎖骨に骨折と思われる患者さんがやってきた。
 76歳のおばあちゃん(Oさん)で、その日の朝、自宅で右肩から転倒したらしく、病院へ行かずに、当院へやってきた。診ると、右鎖骨の中央部、いわゆる「中外3分の一」の部位が盛り上がり、腫れあがって、軽い内出血もしていた。骨折は明らかで、とりあえず、アイシングをして、骨折ヶ所の整復を試みたあと、胸を開かせ、8の字帯に固定して、近くの病院へ車で搬送し、レントゲンを撮りに行った。

 病院では、しっかり治療するには手術が必要で入院を勧められるが、本人は入院をしたくないらしく、再び来院。当院で治療をしたいということだが、吐き気も内臓や神経への損傷が見られなかったので、「しっかり整復できず、変形したまま治癒(変形治癒)」することを説明して治療をしていくことにした。
 その際、胸の筋肉や肩周りの筋肉がピーンとはっていたので、緊張をとるつもりで軽く2ミリ程度の鍼をした瞬間、鍼を支える左手(押し手)の示指と拇指に、ビリビリと軽い電気刺激が伝わってきた。その瞬間、ピーンとはっていた筋肉が、まるでバターが溶けるようにやわらいでいくのが伝わってきた。Oさんの圧痛もとれた。「これだ!」と思って、鍼を刺さずに皮膚に触れるだけの治療をしてみたら、同じような結果になった。
 こうした鍼灸治療は、何人かの鍼灸医が「超浅刺」(0.5ミリほどの刺入)として臨床で行なっているが、実はあまり信じていなかった。しかし、その後、来院される患者さんに、この方法で、というより、超浅刺でもなく、ただ鍼を皮膚に触れさせ、数十秒間、軽く捻るような治療でも、十分に痛みをとり、筋肉の硬直や緊張をとることができるようになった。

 骨折したOさんに感謝しているが、このOさんの方は、2日後に別の病院でレントゲンをとり、診断してもらったら、「手術しないでも、いまの方法で十分」といわれた。しかし、レントゲン写真を見せてもらったら、なんと右肋骨も数本、骨折していると思われる画像だった。これも、固定しながらの治療しかないが、1週間治療していて、おそらく腎臓の病変も加わって、手足のむくみがなかなかとれないので、とりあえず、入院して様子を診ることにした。Oさんは、骨折周辺の痛みが鍼によって緩和されるので、早く退院して「また診てほしい」と、しぶしぶ検査入院的な説得に応じてくれた。

 ところで、折りしも、昨年末、京都で「全日本鍼灸学会国際シンポジウム」が「EBM(医学的根拠)に基づく鍼灸治療の現状」と題されて開催された。ここでも、鍼治療も浅鍼もともに有効な治療(ドイツのKlaus Ljnde氏、Technical University Munich)であり、「触れる鍼や浅い鍼による脳報酬系への効果」(スウェーデンのThomas Lundeberg氏、Rehabilitation Medicine,Kalolinsuka Hospital)などが報告され、議論されている(『医道の日本』07年1月号)。実にタイムリーである。

 さらに、東洋医学的に見ると、皮膚の表面に近いところ(脈外)をめぐり、皮膚の収縮と弛緩、外邪から防衛する「衛気」と、臓腑や手足などの諸器官を栄養し、血とともに脈中をめぐる「営気」があるが、皮膚鍼はこの衛気・営気を通じて、体内の調整能力に働きかけるのではないか。もちろん、体内をめぐる経絡と経穴は、体の反応を見ながら、正確にとるようにしている。
 実際に、EBM的に紹介すると、防衛医科大学解剖学講座の竹内京子先生のご指導で、「皮膚に鍼を接触させ、刺さない軽微な鍼でも変化が現れることをエコーを使い、体中の水の流れ(リンパ)を分析し」て、「数個の経穴に触れただけでも、水の流れの変化をとらえることができ、その結果を全日本鍼灸学会」に報告されている(一の瀬宏、『医道の日本』06年11月号)。

 院内のスタッフには、皮膚鍼によるビリビリ感の伝導は、筋肉の最小単位であるミオシンとアクチンが疲労などによりくっついており、それを皮膚に鍼を接触するだけで、スムーズに動き出すときに、微量の電流などが流れるために、押し手に伝わってくるのではないかなどと、説明している。また、鍼灸ジャーナリストの松田博公氏によれば、資生堂ライフサイエンス研究センター主任研究員の傳田光洋氏が『皮膚は考える』の本の中で、「皮膚は同じように刺激が加わったときに、神経伝達物質が直接出る…。つまり神経が来ていないけれど、皮膚は脳とまったく同じように、全身に信号を発する能力を持っていることを明らかにした」(『医道の日本』07年1月号)といっていることも紹介している。皮膚刺激鍼が伝わるときと、まったく伝わらないときがあるが、皮膚鍼のあとに、明らかに体に変化が起きているので、実感できる。
 ただし、深く刺しても、皮膚鍼でもまったく反応がない患者さんが2人現れ、いろいろ診察すると、腕や肩、背中の痛みは実は呼吸器系の疾患などが原因で生じているようなので、病院で精密検査を受けるようすすめたが、鑑別がいる。

 皮膚の刺激を感受するメカニズムは、表皮の部分に感覚神経の終末をもつマイスナー小体(無毛部)と毛包受容器(有毛部)が主に触覚、真皮にあるメルケル盤やルフィーニ終末が圧覚の受容器である。また、振動刺激は真皮の一番深いところにあるパチニ小体という受容器があって、それぞれ脳に伝わる。皮膚刺激鍼は、少なくとも押し手による触圧覚とともに、表皮に触れるか触れないかぐらいの微妙な接触鍼で体内に明確な変化をもたらし、痛みなどの鎮痛効果があがっている。こうした感覚受容器が脳に伝わり、反射として働く機能(自律神経反射と体性−運動反射)などのメカニズム、あるいは東洋医学的な人体をめぐる「気」というエネルギーの捉え方や経絡、経穴なども合わせて、皮膚刺激による鍼灸治療、「気持ちのいい鍼」「痛みをとる鍼」「病気の治療に役立てられる鍼」などまさにこれから臨床と研究を重ね、解明していかなければならない。
(佐藤啓二)




2007年大阪「戦争と医学」展に参加して
4月22日 大阪府八尾市 さとう鍼灸整骨院 佐藤啓二

「医の倫理」と両立し得ない「医学犯罪」にどう向き合うか

 「戦争と医の倫理」と題する国際シンポジウムが4月8日、大阪・たかつガーデンで行なわれ、この種の企画にはじめて参加しました。大阪保険医協会や民医連はじめ新医協も参加する“第27回日本医学会総会総会出展「戦争と医学」展実行委員会”によるものです。
 「医の倫理」にすえられた問題は、戦時中における「731部隊」による「生体実験」です。「731部隊」は正確には、「関東軍防疫給水部」と称され、日本が朝鮮半島や中国に侵略を開始してすすめられた「15年戦争」期における「人体実験」「生体解剖」は決して忘れることのできない、まぎれもない歴史的事実です。そして、これにかかわったのは、戦前の日本医学会・医師会であり、医学者・医師です。「国民総動員」下の戦時中の出来事で、多くの医師・科学者・研究者らは、軍への協力を拒否することのできない状況下であることも、理解できないことではありません。しかし、医学者・医師として、「医学研究」をすすめようとする明確な意思で、あるいは戦時中の他国への侵略にのって率先して「生体実験」等を行なった医学者・医師たちが存在したということ、いわゆる「医学犯罪」が明確にあったことに、どう向き合うか、今後どうすべきかが、今日鋭く問われているのではないかと思います。

 現在、医学・医療におけるさまざまな角度からの「医の倫理」問題が提起されているなかで、過去に行なった「医の倫理」と決して両立し得ない「生体実験」や実際に進められた細菌戦術への真摯な反省がないまま、不問に付していて、現在の、そして将来の「医の倫理」など問えるはずはありません。
 しかし、今日、この「15年戦争」に医学会・医師会が加担したことや日本の医学者・医師により行なわれた「人体実験」「生体解剖」等については、戦後医学もそれを受け継いでおり、いまだ正式な反省も、全容の解明への努力もなされていないことについて、大いに問題意識をもちました。
 ときあたかも、従軍「慰安婦」問題で安倍首相が「強制連行の証拠はない」と述べたことが、世界中から批判を浴びているときです。同じように、「医の倫理」と絶対両立しない「人体実験」「生体解剖」をすすめた事実を、政府は「当該部隊の具体的な活動状況についての確認できる資料は存在していない」という答弁を1990年代に繰り返して行ない、こうした過去に犯した戦争犯罪の隠蔽に躍起です。従軍「慰安婦」問題でとちがって、「生体実験」という医学犯罪の方は、日本医学会や医師会などの態度やアメリカの戦略的な意図があって、日本国内はもちろん世界中に明らかになるまでには、まだまだ地道な取り組みが必要であると痛感しました。とくに、ドイツでは同じような医学犯罪に対し、「ナチズムの中で医師層が果たした役割と、忘れることが出来ない犠牲者の苦しみを思い起こ」し、「ベルリン医師会はその過去の重荷を負う。」とした声明にみられるように、「過去の克服」に真摯に進めていることと対比したときに、なおさら、日本における侵略戦争への反省への態度とあわせて考えざるを得ません。

中国「731部隊罪証陳列館」館長の話

 シンポジウムでは、「731部隊」の被害者である中国側から、「侵華日軍第731部隊罪証陳列館」の王鵬(Wang Peng)館長が報告に立ちました。1980年代に森村誠一氏の『悪魔の飽食』や「731部隊にかかわった人たちの証言などを引用しながら、731部隊の行なった具体例を告発しました。王氏は、人体実験について、中国古代の名医=華陀や明時代の李時珍、胃潰瘍とピロリ菌の関係を自ら実験して証明したオーストラリアのバリー・マーシャル教授などの例も出し、純粋な医学研究や人類の健康のために、自発的に自らの身体を使って行なう以外は認められないとして、とくに、731部隊が行なった「人体実験」が、@残忍な実験方法で傷つけられ、最終的に殺されたこと、A医学研究が細菌兵器の製造研究で、細菌戦を目的にしていたこと、B完全な無理強い、C必死で隠し、この歴史が永久に人に知られないようにしたことを指摘して、人体実験に関しては、@医学、全人類の幸福のため、A本人の同意が必須、B倫理道徳の遵守の3点の基礎の上にのみ成り立ち、これ以外は認められるものではない旨、話を締めくくりました。731部隊罪証陳列館の中国国内での位置付けや見方や外国人見学者も含めた感想なども聞きたいところでしたが、会場の参加者が数百人と大勢の参加や時間の制約もあり、十分聞けなかったことが残念でした。

アメリカ人の視点からみた731部隊の戦後史

 次に、「アメリカ人の視点からみた731部隊の戦後史」と題して、報告に立ったダニエル・ウィクラ―(Daniel Wikler)・ハーバード大学公衆衛生学部教授は、現在WHOの複数のプログラムのコンサルタントをやり、国際生命倫理学会の創立メンバーの一人で、2代目会長を務めた人です。
ウィクラ―氏は、戦後すぐ合衆国細菌戦調査団による731部隊幹部との面会を行い、部隊の幹部への刑事免責と引き換えにデータを引き渡し、合衆国機密資金から、731部隊の科学者たちに報酬を支払ったことなどをレジュメに沿って報告されました。また、日本におけるアメリカの戦争犯罪法廷についての報告では、@九州大学医学部で行なったアメリカ人捕虜への人体実験に関する横浜裁判で、731部隊についての言及がない、A東京裁判では、南京での医学実験に関しても「レベルの低い人体実験」として審理され、被告の戦犯たちが「そんなひどいことをやるはずがない」との異議申し立てが認められたという。
 731部隊については、1981年に、パウエルが最初の詳細な報告を出版し、1997年に731部隊の医師たちが米国への入国拒否される国防省の戦犯「監視必要者リスト」に掲載、アメリカは隠蔽したことを否定はしないが、遺憾の念を表明したりはしていないということ。不正な医学実験の背後には、外国人への嫌悪と人種差別主義があったこと。イラク人などの捕虜へのグアンタナモ基地で行なわれたのがいい例だ。国家安全保障のための研究は、通常秘密裏に行なわれるが、731部隊での「研究成果」の引き換えによって、米国政府が「後に厄介ごとに遭遇する」というリスクを背負った。1860年に奴隷制が廃止されたが、いくつかの州知事や議会で実際に謝罪を行なうまでに1世紀半かかったことをも紹介しながら、若い世代を隠蔽から解放したいと結んだことに、共感を覚えました。

『道徳的責任』はその行為を行なった人自身に存在する

 最後の報告者は、「15年戦争と日本の医学医療研究会」の?昭三・名誉幹事長で、戦後60年、あらためて「戦時中の医学犯罪」を問う意味について示唆されました。医学犯罪が医学者等の組織的関与があったことなどを具体的に紹介しつつ、特に印象に残ったのは、数千人にも及ぶ人々が殺害されたという医学犯罪やどうして犯罪的な「人体実験」を行なったかという問題に対する考察です。
 戦後、?先生が医学生時代に病理学を習ったという石川太刀雄博士は、731部隊の第一部石川班を構成した人です。鍼灸の分野では、皮膚血管反射を活用した皮電点理論を築いたこともあって、無関係とは言えない気がしました。「普通の医学者であり、殺人をするような人格には見えず、“生体手術練習”をした軍医たちは、日常生活の場では人殺しなどするはずもない善良な人々なのであろう。しかし、どうして…?」という問題提起に、@戦時下という「時代感覚が犯行を矛盾なく行なわしめた」、A「軍事秘密というベールを利用し、…医学や武器の進歩になるのではないか?…つまり、『先端的研究』は倫理的制約によって妨げられるべきではないという考え方」、B何よりも、「『上官の命令』であろう」と、自答しています。そして、命令による医学犯罪への当事者の責任について、第一次世界大戦でのランドベリー・カッスル号事件に関する判決を下したライプチッヒ最高裁の判例を引用し、「行為の『法的責任』は命令した人にあるかもしれないが、その行為の『道徳的責任』はその行為を行なった人、自身に存在する」という立場を明確にして、自ら行なった医学犯罪への責任や対処をすべきだという訴えは納得です。

731部隊元衛生兵の勇気ある発言

 このシンポジウムには、「病原菌の生体実験を毎日2〜3人、多いときには5人も解剖した」という731部隊の元衛生兵だった人(三重県在住、88歳)が参加されました。早稲田大学の生物・物理でペニシリン、ブドウ糖の研究をしていたことから、昭和19年に「731部隊の病理試験」に所属させられ、リケッチア、コレラ、ペストの菌を人体投与し、その反応などを調べたり、従軍慰安婦の梅毒の検査などもしたといいます。子持ちの慰安婦を解剖したこともあったといいます。まさに、「道徳的責任」を感じられ、大勢の前で、勇気を出して証言されたことに感服しました。
 さらに、たまたま、1ヶ月前に京都の観光に来たときにもらったチラシでこの国際シンポジウムのことを知り、もう一度日本に足を運んで参加した韓国の職業病管理財団の理事長という人は、「過去に辛くても、未来社会に向けて、こういう企画に感謝している。ぜひ、韓国でも開いてほしい」と感想を述べていました。

 今回の企画は、戦争に関係した多くの人たちの勇気と良心を奮い立たせるような内容だと思います。また、医学者・医療家にとって、「人の命を損なわない」という医の倫理を実践していく上でも、貴重な内容でした。
以前から参加したいと思っていた「戦争と医学」展、あるいは、講演やシンポでしたが、こうした機会をいただいて感謝しています。

初めての台北3日間、そして台北鍼灸事情

 2007年 GW後半の4日間、はじめて台湾・台北に行ってきた。

 新装したばかりの故宮博物館、九ふんなどの観光案内とフリータイム(新北投の温泉など)の旅程だった。

 時差1時間遅れで、台北に着いたのは5月3日、午後4時頃。昨年9月、陳水扁総統がすすめる台湾民主化の一つに「蒋介石時代への告別」としていろいろ名称変更され、「中正国際空港」も「台湾桃園国際空港」となった。「中華」や「中国」の名称を「台湾」に変更する「正名運動」だという。台北市内へは、バスで約45分ほどだが、高速道路は車の台数が多く、舗装の状態も良くない。確かに緑が多く、ところどころに「5月の雪」と称される「アブラギリ」の白い花は印象的だった。

 日程の最初は、例によってツアーのお決まりコース、民芸品店(茶芸館)に連れて行かれた。試飲の台湾茶(烏龍茶、プーアール茶、杜仲茶)は、噂にたがわず、香り高く、上品な味で、健康にはよさそうだ。台湾ではどの家庭でも茶具を揃えているらしく、お客さんをおもてなする際に欠かせないし、みんなでお茶を飲む習慣があり、それを「国飲」と呼ぶらしい。結局、ここでは何も買わずに、人通りいやバイクと車の多い排ガスでいっぱいの繁華街にあるホテル華泰王子大飯点(GLORIA PRINCE HOTEL)へ案内された。「最高級」ではないが、「高級」ホテルだけあって、応対もよく、部屋もややゆったりで落ち着く雰囲気だ。

 夕食は、ホテルから歩いて10分ほどのところにある「素朴な台湾料理を楽しめる店」としてガイドブックに載っていた「好記坦仔麺」(ハウチイタンチイミエン)へ行った。店頭に価格表示された料理が並び、店員さんにあれこれ注文する。日本語はなかなか通じないが、「大腸」、「清蒸九孔」(トコブシ、300元)、「三杯鴨舌」(250元)、小妙大雪鋤茹(大きなシイタケ?、250元)を台湾ビールで味わい、最後に坦仔麺をおいしく食べたが、2人でしめて1,300元、約3,800円ほど。人気の店らしく、観光用のバスで案内されたり、もちろん台湾の人たちの「飲み屋」として賑わっていた。 

   

 ホテルへの帰り道では、さすが「海鮮天国」というだけあって、魚介類が店頭に並べられた店で食事したり、南国フルーツもいっぱい並べられている。夜食用に、ファミリーマート(全家)で、台湾ビールと竹葉青酒(漢方酒)、お茶を買う。

【2日目】

 マイナス1hの時差に、セットするのを間違えてしまい、現地時間の朝5:30頃起きてしまった。朝食は6:30〜で、朝のシャワー後に一番でバイキングを食べることになった。果汁・牛乳に、野菜たっぷりの朝食で健康的かつバライエティでうれしい。

 ツアーとしては初日で、集合時間が8:40と前日ガイドさんがいっていたのを聞き逃してしまい、旅行会社のガイドブックに書いていた時間の8時頃と思い込み、ガイドさんに電話したら、まだ寝ていた様子で申し訳なさで恥ずかしい気がしたが、妻の「まだ眠れたのに…」と怒られてしまった方が胸にズキットきた。

 ホテルで2万円(→2,545円×2)をチェンジ。

  
   忠烈祠  街角で迷彩服姿の人を見かけることがありますが、台湾では徴兵制がしかれており、男性は2年間の兵役が義務付けられているのです。台湾の置かれている複雑な社会情勢を垣間見ることができます。しかし、休日には帰郷できるなど、兵役義務期間中の服務はあまり厳しくありません。

 まず向かったのは【忠烈祠】で、選び抜かれた台湾軍のエリートたちが行う衛兵の交代式を見学。門には微動だにしないよう訓練されている衛兵が2人銃剣を構えて、仁王立ちしていた。男前の衛兵の方で妻が並んで写真を撮った直後、その衛兵は、ギョロット目を動かし、僕らの方へ“流し目”をしてくれた??。目も動かしたらダメ、汗も拭いてもいけない、はずだったのに…、つい二人で微笑んでしまった。それにしても、朝早くから、大勢の観光客が来ているのに驚いた。

 次は、今年の3月に建て替えリニューアルされたばかりの【故宮博物院】だ。中国6千年の歴史を追うには、あまりにも観るには時間が短すぎた。でも、宋代や民、清の時代の皇帝などに奉げられた芸術品には、ただ驚くばかりだった。

  

 案内された時代はバラバラだったが、@唐の三彩として有名な陶器、A清の時代の彫刻。3代にわたって100年かけてつくられたという象牙の弁当箱や清太后が愛した翡翠、とくに清廉潔白を象徴する白菜と子孫繁栄の象徴であるキリギリスを巧みに彫りあげた「翠玉白菜」は確かに最高傑作だ。B明の時代の陶器や磁器。コバルトの下絵に豆彩という色付けをした「万暦官五彩花鳥蒜頭瓶」やアラビア文字が書かれている「正徳窯」など、C時代ははるかに遡って、殷周時代の青銅器で作られた鼎。もっとも権威ある礼器であり、権力と身分を象徴した鍋で「毛公鼎」には、内側に500字余の銘文が掘られている。

博物院には、主に清朝の宮廷のコレクションを中心に、宋・元・明・清の四王朝の宝物や紀元前6〜7世紀からのさまざまな所蔵品約65万点のほんの一部が展示されていて、その後随時展示していくそうだが、全部見るには何年かかるかわからない。

 民芸品のあとは、お待ちかねの小龍包の超有名店=“鼎泰豊”で昼食。上海や香港、日本にも多くの支店を持つほどで、地元でも大人気で、昼食どきには40〜50分待ちはザラだそうだ。そのため、ガイドさんは、混み合う前に、店に連れて行ってくれたおかげで、着くなりジューシーな小龍包(170元)を食べれた。それでも広い店はいっぱいで、店を出る頃には、行列ができていた。

 この日4か所目は、車で50分ほどの「九ふん」へ。映画のロケ地として有名だが、百余年前に金鉱が発掘されて、日本統治期に「アジアのゴールドタウン」と呼ばれたところだが、高台に切り拓かれた坂と階段が迷路のように巡り、繁華街は派手なお土産店、食堂などがひしめき、まるで石切り参道を長く、入りくねったようにした感じの商店街に歓楽街をつけたしたような、レトロな雰囲気をかもし出していた。ここでは、ジャスミンとブルーベリー、心臓に効くというお茶を買った。


    

 夕食は、“欣葉”という台湾家庭料理の店で、一行10人が丸テーブルを囲んだ。紹興酒を頼んで、熱燗にしてもらったが、イカ団子の花枝丸、台湾風春巻の潤餅、空心菜の炒め物など、それなりにおいしかったかな?

 最後は、土林夜市。地元名産など活気溢れる露店をイメージしていたのだが、若者向けの派手な夜店がずらっと並ぶだけで、みるところなし。帰りは、現地解散だったので、はじめて電車(MRT=都市鉄道を使ってホテルまで帰った。電車賃は20元。剣潭駅から三つ目の雙連駅で降りて、ホテルまでの途中の漢方薬へ立ち寄り、日本に留学していたという主人にいろいろ見せてもらい、目的の高麗人参を粉末にしてもらったものを2両購入した。1両は37.5gで、500元。帰国して、早速、必要な患者さんに分けたが、効能はいい。

   

 漢方はいくつかの生薬を配合して、方剤とするのが普通だが、高麗人参は、単味で「独参湯」といわれ、肺脾気虚を改善する補益薬の代表だ。とくに、虚労内傷に対する第一の要薬。「虚」とは、病が長びいて体が弱ることで、「内傷」は臓気を損なう病症である。

 「独参湯」は、大病や慢性の病気、激しい吐瀉などで元気が虚衰しているときに、大量に服用する(『中医臨床のための中薬学』より)。また、気血津液の不足すべてに使用でき、倦怠感、無力感、寝汗や自汗、心神不安の不眠や多夢などの症状があるときに、粉末を小さじ半分ぐらいを週2〜3回服用すると良い。実際、以上のような症状のある患者さんに服用してもらったが、確かに効能はすばらしい結果が出ている。

 夜9時から、送迎付きのマッサージへ行った。120分コース+足つぼマッサージで、1500元×2人。凝った肩や腰はそれなりに楽にはなったが、期待するほど上手とは言えなかった。

【3日目】

 フリータイムの日だ。この日は、朝から雨。一行のほかの人たちは、世界一高い「TAIPEI 101」タワーなどに出かけるみたいだが、いろいろどこへ行こうかと悩んだ末、市街地の空気があまりにも悪すぎるから、郊外にある北投温泉へ行くことにした。

前日、ガイドさんに紹介してもらった「水美温泉会館」がいいと聞いていたが、どこにあるのやら、とにかく、MRTを使って行くことにした

 朝食は、昨日の轍を踏まないように、9時過ぎにゆっくり食べれるように起床。ホテルを出たのが11時頃だった。ホテルから歩いてMRT雙連駅までは、10分足らず。駅に近ずくにつれ出店が立ち並び、野菜などいろいろなものが売られていた。昨日食べた「空心菜」らしき野菜があったので、聞いてみたら、やはりそうだった。北投駅は、雙連駅から10番目。地図にあった、「北投温泉博物館」を目標にして20〜30分、けっこう往来のある歩道を歩いていたら、たまたま「水美」の字が書いてある看板が目に入ってきた。

      中華と和食のレストラン「隨逸料理餐廳」

 「水美温泉会館」は、開放的なホテル風の建物で、あまり日本語が通じない受付で、食事付き入浴が1,099元×2人ということがわかった。泉質の説明はないが、ガイドブックに秋田県の玉川温泉のような効能があるということらしいが、それほど硫黄分がきつくなく、肌に柔らかく、泉質は良い。男性用は最初、広い浴室を独り占め。あとから一人入ってきたが、サウナも含め、温泉気分を堪能した。1時間ほど入浴してから、食事。このとき、「食後にもう一度入りたい。日本の温泉はほとんどがそうなっている」旨伝えても、1回温泉から出たら、再入浴はだめという。

 ランチはコースで、3,000円ほどにしたら、豪華だ。メニューは日本語でも書かれていた。

 ・泰式拌章魚(トマトのタコサラダ)

 ・菱角燉?湯(鶏と菱の実スープ)

 ・芋香蒸豚肉(里芋と豚肉の蒸したもの)

 ・酥香?鯛魚(スモーク魚の切身)

 ・韭?燻鴨麺(アヒルと野菜そば)

 ・精緻甜點盤(フルーツと甘いスープ)。フルーツで、火龍果はおいしい。これに、台湾ビール。結局、「入場券」の合計金額は、2人で2,198元に餐飲費120元、服務費12元が加わった。

 雨が小降りになっていたが、温泉会館の目の前は緑が生い茂った公園で、その一角に「北投温泉博物館」がある。けっこう、人が多く、受付のおばさんが「今日は日本人が多いよ」などと声をかけてくれたが、多く目にしたのは台湾の、しかも先生に連れられた小学生の一行や、若いカップルたちだった。「北投の400年」の歴史を展示していたが、1896年、日治時代開始の翌年、大阪商人の平田源吾が温泉旅館として始めて建てたらしい。1913年、公共浴場としてレンガ造りと木造りをミックスした建物として建てられ、1998年に内政部が博物館として保存。伊豆の温泉をモデルにつくられ、当時としては、アジア最大の公共浴場だったという。「北投石」の名はよく聞くが、ここで産出されたものなのか?。地獄谷から流れる熱水の中に含まれるBaやRaなどの鉱物元素が北投渓の岩石に結晶付着したものが北投石だという。会館のまわりは緑につつまれ、広い庭があり、周囲の温泉街の雑踏から仕切られた静かな空間として、親しまれているようだ。建物の周囲には、クチナシの花が菩提樹のような木とコントラストに咲いていた。

  

 会館を出た少し離れた所に、池を挟んで木立に囲まれた大きなロッジ風の建物がある。3階建ての市立図書館だ。抜群の環境のもとで、子供たちが勉強しているのが見えた。さらに少し離れた道路を隔てた「文化会館」らしき所で、なんやら民族楽器を使ってにぎやかな歌がきこえてきたので、のぞいてみると原住民の文化を継承する人たちが数10人の若者たちを前に民族衣装を着て、踊っていた。この先住民族会館(凱達格蘭文化館)で、原住民に伝わる工芸品のなかから、すてきなカバンを妻に買ったが、元が足りず、円と合わせて1万円+1,300元で商談がまとまった。愛媛県の坂出市に祖母が住んでいるというスタッフのおばちゃんが、上手な日本語で通訳してくれて、1万円=2,550円(ホテルでは2,524円)のレートにしてくれた。子供たちへのお土産もここで買った。

   
 凱達格蘭文化館(ケタガラン文化館)

 帰りは、北投駅からひと駅だけ枝分かれした駅が新北投駅で、原住民会館からは歩いて2〜3分。ここから、ホテルまでMRTで帰ってきた。ホテルマンの推薦で、近くの小龍包専門の店で夕食を済ませたが、周辺は路地裏などにいかがわしいホテルやら、あちこちで覚醒作用のあるビンロウの実(「檳榔」)の看板などが目につく。「檳ろう」自体はシ科のビンロウジュの種子で漢方薬の一つだ。行気薬として食積気滞、截瘧(マラリアなどの悪寒・発熱の疾患)や殺虫の効能がある。

 郊外の道路脇などでビンロウ(檳榔)の実を売る若い女性がいるという。「ビンロウ小姐」といわれている。覚醒作用のあるビンロウの実を長距離トラックの運ちゃんなどが愛好しているらしいが、注目すべきはその売り子さんたちの露出度の高さ。運転手の目をひきつけようと、肌の露出面をどんどん高くして行ったところ、わき見運転で事故を起こす車も続出(最近ではだいぶ控えめになったようですが)。彼女たちの存在を道徳的に批判する意見が強いものの、これもまた新しい台湾文化として擁護する声もあるという。


【4日目】
 最終日。朝、5時50分ホテルロビー前集合で、空港へ向かい、帰国の途へ。
 2〜3日後、台北の空気の悪さが影響したのか、鼻をやられてしまったようだ。鼻せつが出てしまった。もともと花粉症ということもあって、とくにディーゼルの粉塵などが混じった花粉など大気汚染が、鼻にさまざまな病気をもたらしてきた。確かに日本でのヒノキによる花粉症への影響はないとはいえないが、台北でぶらぶらしていた頃から、鼻がぐずつき、鼻水に悩まされていたことを考えると、台北のディーゼル粉塵の混じった大気汚染によるとしか考えられない。


【台湾の鍼灸事情】

 台北のホテル周辺を歩いたり、台北市街地をバスや電車などから見渡しても、“鍼灸”の文字が見当たらない。わずかに、北投を歩いているとき、現代医療(医院)の案内掲示板に、“美白針”とあったのと、民間療法的な看板に“刺血”などの看板が電車から見えた程度だ。

 中国の鍼灸は、清の末期〜中華民国の初期に近代主義者の間に、伝統医学抹殺論が熱心に論議され、民国3年(1914年)、政府は中医中薬の廃止を布告。これに対して、中国全土から、反対運動が展開されたが、中華人民共和国が成立し、伝統医学の再検討が提唱される1950年までの36年間、中医学の受難時代があった。台湾の鍼灸事情には、その影響がどのようにあったのかどうか、わからない。

 台北鍼灸学会によると、台湾の鍼灸術は「師徒伝承」の個別伝授法だったが、1955年台北市鍼灸学会が政府機関の認可を獲得した後、体系的な習得法になった。しかし、20年経った1975年に「新医師法」が実施されて、それまでの鍼灸師は無資格となった。そのために、多くの鍼灸師は国外へ流出したという(『全日本鍼灸学会雑誌、06年第56巻2号』)。それ以来、鍼灸の資格制度はなく、「中医師」の試験に合格した者が「漢方薬の処方も、鍼灸師の資格と開業を許される」という制度になったという。中医師の試験に鍼灸科目が加わったのが1989年で、実技試験はないため、中医病院の鍼灸治療はハリ専門の実技研修を受けたベテランたちが担当していて、中医師ではないという。

 台湾では、西洋医学の総合病院で鍼灸科がある病院はいくつかあるが、中医病院には大小にかかわらず鍼灸科がある。もともと、伝染病の多い地域だっただけに、漢方薬やお灸などはよく使われてきたし、今日でもそうした伝統は生かされているようだが、台湾で鍼灸のよさを認められるには、日本における鍼灸の研究と留学生の受け入れなどの国際交流をもっと発展させる必要があるようだ。日本でも、鍼灸はその理論や医術としては場合によっては西洋医学にも勝るとも劣らぬ効果があり、世界中の鍼灸の成果を集めて科学的な根拠(EBM)がさまざまな角度から探求されている。日本政府が「鍼灸医学」を文字通り医学として認められるようにするには、鍼灸師はじめ業界の団体の努力と広範な国からの認知が必要だ。

当院では、自称“鍼灸へのイメージ革命”ともいえる、針を使って刺さずに皮膚にあてながら旋撚する鍼術、痛くも痒くもなく、むしろ心地よいひびきのある鍼術、経絡治療を生かし、皮膚の持つメカニズムを活用した「皮膚触鍼」を広め、東西医学が統合されて、互いのよさを生かされた統合医療として認知されるよう希望を抱いている。

(2007年6月1日 さとう鍼灸整骨院  佐藤 啓二)


外反母趾に、皮膚触鍼とお灸
2007年06月11日 (月)

 外反母趾で、足の親指の付け根が痛くて歩くのに支障が出る人には、刺さずに、触れるだけの鍼とお灸が効果を上げている。痛みがほとんどなくなる人もおれば、ひどい方でも痛みが半減する。

 お灸は、灸点紙を置き、一瞬「熱い!」かな、と思うぐらいで、むしろ痛みの個所では心地よい刺激になる場合の方が多い。もちろん、灸点紙のおかげで焼け跡はつかない。
 自宅でも、「千年灸」をしてもらうと、さらに効果が持続する。

予防のために、

@両足の内側をそろえて、親指にゴムバンドなどをかけて、足先を外側に広げる運動を行う。

A足の指で、床にしいたタオルをたぐり寄せる運動を行う。

B足の指をそろえて、つま先立ちを行う。





 医者としての本居宣長、そして鍼灸との出会い

                                                   2007年4月29日

  「本居宣長・第2回目八尾講演」(07年9月23日)に向けて4月29日、同講演実行委員会の藤原義春事務局長らメンバー10人で、「宣長記念館」のある三重・松阪市を訪れた。

 三重県松阪市は、戦国時代に“お伊勢参り”の参宮街道を城下に引き入れて拓かれた城下町で、近江商人を源流とした豪商の三井家・小津家があるところで有名だ。古くは、伊勢地方最大の前方後円墳もあり、歴史の古い地域だ。

 その松阪駅で迎えてくれたのは、400年余の歴史を持つ老舗中の老舗=お菓子の「柳屋奉善」出身の歌手兼舞台プロデューサーの岡美穂子さん(東京在住)だ。早速、岡さんに案内してもらったが、透き通るような晴れ渡った晴天に恵まれ、松阪城址の生垣をバックに咲いていた「なんじゃもんじゃ」の木や新緑、咲き乱れる花たちといっしょに歓迎していただいたのは、松阪城址にある記念館館長の高岡庸治氏だ。高岡館長に、宣長にまつわる一通りのレクチャーを受けたあと国特別史跡の「宣長旧宅」を案内していただいた。旧宅では、特別に中2階にある宣長の書斎=「鈴屋」にまで入れていただいた。岡さんは中学生時代、この旧宅の「鈴屋」にまで入り込み、友といろいろ話し合ったことがあったと話していた。この部屋には、宣長が師と仰いでいた賀茂真淵を讃える「懸居大人之霊位」の掛軸がかかってある。

 記念館内では、吉田悦之主任研究員に、宣長の著書、蔵書、遺品、板木などの「国重文」の収蔵品について説明していただいた。見事な筆致などに目を見張るが、なかでも、個人的に関心があったのは、医者としての宣長だった。

 館内には、小児科医として医術で生計を立てていた「日常生活」を展示していて、直筆で「久須里婆古」などと書いた「薬箱」がある。宣長が往診時に使ったというその「薬箱」には、生薬丸薬を入れた薬袋が3段重ねになり、一番下の引き出しには、調剤用の木葉匙などのほかに、治療用の鍼も見えた。 『21世紀の本居宣長』によれば、「銀鍼」と書かれている。あとで、吉田研究員から、何人かの先生(たぶん、森ノ宮医療学園ではないかと思う)が調査に来られ、この医療箱にある「4本の鍼」と長男=春庭が使用していた鍼を詳しく分析した資料をいただいた。それによると、宣長は専ら漢方薬を用いていて、鍼治療に関しての理解はあるが、現存する書物のなかには具体的な鍼治療の記載はない。長男の「春庭」が32歳のころに失明し、京都で鍼修行しており、宣長著作の刊行に尽力するかたわら、鍼治療もしていたようだ。これは、『日本鍼灸学会誌』(1999年6月、49巻2号、Vol.9)にも発表されている。ほかに、「医者としての帳簿。29歳頃から晩年に至るまで書き続けた、患者と投薬およびその薬代」(より)などが書かれていて、宣長の几帳面さがよく伝わる。
           ⇒  
風変わりな撫子(なでしこ)
 2007年4月29日、松坂市を訪れたときに立ち寄った400年のお菓子の老舗「柳屋宝善」の喫茶室にあった風変わりな撫子の花。
 同年5月19日〜31日、松阪市中心部で「松阪撫子(なでしこ)どんな花?祭り」(中日新聞社など後援)が開かれた。
 松阪三珍花といわれる松阪撫子は、徳川藩士の継松栄二が河原なでしこを栽培中、花弁が糸のように細く切れ長く垂れ下がったものを発見、以来、改良を重ねてきたという。当時の天皇に愛でられ、「御所撫子」ともいわれ、現在も子孫が京都宝鏡寺と松阪保存会で栽培されている。
 撫子祭りに向けた「ミス松阪」(なでしこ姫)に選ばれたのは、「柳屋宝善」が経営する茶房「揚柳園」の娘さんで、岡美穂子さんの姪御さんだ。この写真は、茶房「揚柳園」で、“なでしこ姫”の姪御さんにみせてもらったときの写真。
 岡美穂子:「柳屋奉善」出身の歌手兼舞台プロデューサー(東京在住)。ミュージカル風『宣長さんと八尾の伊勢物語』の公演を手がけ、2006年5月に八尾市民会館プリズム大ホールで、公演を成功させた。
  
 『宣長さんと八尾の伊勢物語』に出演した中小企業同友会八尾支部のメンバーと江戸時代の医者役で出た佐藤社長
宣長さん八尾伊勢物語 PART 2 2007年9月23日上演

いにしえから現代へ、人から人へ、
伝えられ、つくりゆく文化


●本作品は、史上初めてといえる、文化をテーマとしたエンターテイメントに富んだ創作舞台!
“アイデンティティー”、「もののあはれを知る心=感性の心」を唱えた松坂の本居宣長。

どんな人だったのだろう? お伊勢参りの「おかげのさまの心」とは?

街道筋にあたる八尾の文化と歴史を融合させた公演として、ワクワクと楽しく歴史を紐解く舞台。

●いにしえから「ものづくり」で栄え、現代も日本に誇る「ものづくり」の八尾、この町で、岡美保子先生のご指導のもと、
八尾市の中小企業家を中心とした多くの市民、そして八尾児童合唱団や混声合唱団が、プロの役者(劇団赤鬼)と歌い手に指導されながら、いっしょに歌と劇に出演。
ユニークなミュージカル風な楽しい舞台です。

■ときは、元禄?年(本居宣長没後、10数年)の八尾街道すじ。
関西から伊勢へ行き交う峠茶屋。
主人の浪さん、おかみのおときさんに、村人と語り合う八尾の昔話や歴史…。
子どもたちの手遊び唄も現れ、村人たちも宣長の和歌を唄い、そして桜の精がオリジナルの和歌曲を響かせ…。

■時は現代…。ラップ曲も飛び出し、宣長さんの描いた日本の心、四季ある自然の美しさ、家族…を思い、会場と一緒にのりにのって…。

転倒で手首・前腕の損傷に皮膚鍼
2007年07月07日 (土)

転倒で手首・前腕の損傷に刺さない鍼で治癒

 家で転倒した際に、右手首を捻挫したらしく、母指・示指と手首、前腕を動かしたり、触れたりするだけで激痛が走るSさんがやってきた。すでに2週間経過してからである。

 整形外科では、ただ湿布するだけで、「そのうち治るやろ!?と、いわれるものの、いっこうに痛みも取れないし、これでは仕事ができない」と。

 触診しながら、激痛が走る損傷個所に、1寸の1番鍼で皮膚接触鍼をしていくと、痛みが徐々に緩解していった。

 Sさんには、鍼を刺さずに、皮膚に軽く触れているだけの治療に、痛みが取れていくのに、「不思議やな!針の痛さも感じないのに、なんで痛くなくなるんやろ」としきりに不思議がっていた。

 損傷の様子は、ちょうどアメリカ大リーグの松井秀樹選手が外野への飛球をキャッチする際に骨折した時のようなかっこうだという。松井選手は左だが、Sさんは右手で、骨折まではいかないが、前腕の屈筋群(長掌筋、浅刺屈筋、母指球など)の損傷がひどい。

 3週間ほどで、ぞうきんなどがしぼれるようになり、日常生活に支障がなくなって、とても感謝されている。

 損傷個所への鍼施術は、本来なら、刺入するだけでも痛いところだが、あらためて、皮膚接触鍼の威力を感じている。




鍼灸助成制度の拡大と鍼灸の保険適用へ

そして、鍼灸学生へのメッセージ

07年 新医協関西研究集会

 「後期高齢者医療制度を考える」(T部)などをテーマにした新医協関西研究集会が78日、森ノ宮医療学園(大阪市)にて40名が参加して開催されました。
 主催者として、住之江鍼灸センター所長の上田ルナ氏が、また共催者として協同組合兵庫県保険鍼灸師会の森井尊士氏とNPO全国鍼灸マッサージ師協会の藤岡東洋雄氏がそれぞれあいさつを行い、T部の「後期高齢者保健制度を考える」として3人の方が報告。


75歳以上の人が3割、年20回の鍼灸助成制度を守るために

 まず、「尼崎市国保による鍼灸適用の独自措置とこれからの課題」とて、尼崎市市議会議員の松村ヤス子氏は、尼崎市の鍼灸助成制度が1回1,000円で年20回まで受けれること、しかも年齢も問わず、35年間続けてきた制度であり、他市の年23回の助成や年齢も65歳以上の自治体が多いことと比べてすぐれていることを紹介。しかし、来年4月から実施される「後期高齢者医療制度」によって、この助成制度を受けていた人で「国民健康保険から抜ける人はどうなるのか?社会保険などに加入している人で75歳以上の人は?」などの議会での質問に対し、「保険で適用できるようになっている」、「保健事業でやれるようにしたい」との答弁を得たことを紹介しながら、後期高齢医療制度が「兵庫県広域連合」に委託されるようになれば、年20回の鍼灸助成度が他市なみに減らされる可能性もあるということです。

 松村氏によれば、平成18年度の市の予算でみると、鍼灸助成に国保会計から7,147万円支出され、そのうち75歳以上の人が32%占めているといいます。国保全体に占める割合は17%だが、「広域連合」になるとこの制度の維持が困難になる可能性から、仮に市の一般施策から助成すると2,700万円ほどになることを示し、健康や予防、病気の治療にもすぐれた効果をあげ、かつ医療費抑制にもつながる鍼灸の助成制度を「今後も維持し、市独自の施策としてやれるようにがんばっていきたい」との意を表明。

「はり灸、マッサージ、指圧の療養費取り扱い、従前と変わらず」

厚労省の回答 

 高齢者医療制度にかかわる鍼灸分野でのとりくみについて報告に立った藤岡東洋雄氏(協同組合兵庫県保険鍼灸師会副理事長)は、平成204月から実施される老人保健の75歳以上の被保険者が後期高齢医療制度へ移行されようとしているなかで、「はり、灸、マッサージ、指圧の療養費取り扱い」について73日、厚生労働省老人医療企画室宛てに「照会」文を提出。それに対して、同省老人医療企画室より76日付で「従前の取り扱いと特段変わることはありません」との回答を口頭で得、「協同組合兵庫保険鍼灸師会理事長 木戸弘」名で会員に配布する文書を「厚生労働省老人医療企画室の指導のもとに作成し公表」できたことが報告されました。国が医療費削減をすすめているなかで、「かかりつけ医」のもとでの包括化などの方向性とあいまって、はり灸マッサージ指圧の療養費の切り捨ても危惧されるなかでの「回答」は、口頭とは言え、新制度による詳細についてほとんど明確にされていないだけに、いい報告がなされました。

 最後に「すべての世代の人権保障としての高齢化への挑戦が世界の流れ」として、「高齢化への医療の対応」を鍼灸分野から報告に立ったのは、尼崎鍼灸センターの福元一夫氏です。@加齢に対応する医療、A高齢化を保障する基本としての平和な社会の構築、B高齢化を保障する社会環境などから、高齢者への鍼灸による医療費削減の効果を示している欧米での動きも紹介しながら、鍼灸治療が大きく見直されてきていることを紹介。そして、発展途上国の急速な高齢化から、@医療費の効率化、A生体に優しい、B副作用がないということから、とくに南米などでは鍼灸が見直されていると最近の動きが詳しく報告され、日本での医療制度のさまざまな後退現象があるなかで、鍼灸技術など日本鍼灸のすばらしい特徴をいかして高齢化への挑戦が必要と説き、国内はおろか世界で果たしていく鍼灸の役割と新しい医療の創造について、「多くの力を結集して、大志を胸に日々の臨床にとりくもう」とよびかけました。

 会場から、鍼灸助成制度と同意書による療養費制度との関係などについて質問があり、松村氏は「鍼灸治療を体験している立場から、医師の同意書をもらうこと自体が患者さんにとって負担になる場合がある。しかし尼崎のような制度なら使いやすい」と発言。福元氏は鍼灸が保険適用されるには「安全性と科学的根拠があるものに限る」という厚労省見解をクリアしなければならないが、鍼灸の医学的治療、予防医学、リハビリ、癒しとしての効果の幅広い国民的認知やさまざまな疾患に効果を認めているWHOレベルに日本の医療水準を引き上げ、医療としての鍼灸を確立していく広大な運動が必要だと力説しました。

鍼灸師をめざす学生へのメッセージ

U部は、「鍼灸師をめざす学生へのメッセージ」として、4人の臨床家から熱いメッセージがありました(座長に、さとう鍼灸整骨院の佐藤啓二)。

■「あらくさ鍼灸院」を開業して4年目になるという和歌山県の安宅知己氏は、病院勤めの経験を生かしながら、しかし医療としてできなかった歯がゆさから、鍼灸の専門学校をめざしたこと、近くで開業されている病院勤めのときにお世話になった医師が「医療は私らだけでは無理がある」と鍼灸の同意書にも快く応諾していただいていること、ときには車で50qも走りながら山間部への往療にも出かけていて、山間部でも鍼灸が必要とされているなど情熱的に話してくれました。

■大阪は平野区で開業している梶浦鍼灸院の梶浦慎一氏は、まだ開業して2年半。自宅改造の際に大工仕事を手伝いながら、開業資金を少なく抑えたこと、近くの開業医にお願いして、手軽に同意書がとれるようにしたり、スポーツ仲間がきてくれたり、徐々に患者さんも増え、鍼灸師のスタッフも増えて、なんとか家族を養っていくところまできたことを紹介。@低コスト、A近くに同意書に応じてくれる医師との連携の2点がまず大事と、会場に参加している学生などにメッセージを送りました。

 ■昨年20周年になる兵庫県の尼崎鍼灸センターの新代表になったばかりの田中千里氏は、現在9人の鍼灸師がいて集団化で運営しているとし、@鍼灸は“もうかる業種ではない”が「生き方としてのすばらしさ」を追及、A往療と保険を柱にしているが、近くの開業医に同意書をもらうには自ら健診をすることも必要、B家賃をかけずに運営すること、C若手を育成しながら、次世代に引き継いでいってもらうことなど、センター運営の苦労話も交えて語ってくれました。そして、鍼灸資格者が急激に増えているが、開業しても閉院したり、資格があっても鍼灸のよさを生かせていないなどの現実があり、“臨床家としてどうして生きるか”が大事だとよびかけました。

 ■最後に住之江鍼灸センターに就職して6年目になるという向井敬子氏は、「お姉ちゃん」とか「看護婦さん」とか呼ばれたり、質問されてもしどろもどろだったり、鍼やお灸も汗が出てきて、まともに治療できなかったことなど最初の2年ほどは汗かきかきのアシスタント中心でしたが、3年目になって中2の男の子をはじめて担当、それが「初治療記念日」として忘れられないと感動的に話してくれました。「患者さんとの会話や鍼一本で生体が良くなる、本当に鍼灸師になってよかった」といいつつ、「鍼をするだけが治療ではない」として、センターの「友の会」の機関誌づくりやサークルなどの交流を通じて、「全体として診ること」の大切さも学びながら、「チャンスを逃すな」「自分がどう変わるか、ワクワクドキドキ」した毎日を送っていると結びました。

 会場からは、尼崎の指圧を学ぶ会の患者さんや夜間の鍼灸専門学校に通っている保育士と「鍼灸への揺らぎはないが、現実の学校の試験が危ない?」という鍼灸専門学校生などから、感想的な発言もありました。

 懇親会には、29名が参加し、ここでも、全員の自己紹介や感想などで盛り上がり、「新医協関西鍼灸部会」の設立に向けて準備していくことも確認されました。この日、新たに新医協に3人加盟していただきました。

2007715日  大阪府八尾市 さとう鍼灸整骨院  佐藤啓二(鍼灸師)


刺さない鍼(NPA鍼法)の効果
2007年08月05日 (日)

               J-MAP STUDY             2007年8月5日さとう鍼灸整骨院 佐藤 啓二

刺さない鍼(NPA鍼法)の効果について

はじめに

 最近、刺さない鍼が筋肉痛や神経痛、あるいはさまざまな内科疾患などの治療に効果を上げ、患者さんから「こんな鍼、はじめてや!?」「ほんまに鍼を使っているの?」「鍼が気持ちいい」「すごく楽になった」などと喜ばれている。

 ところで、『医道の日本』06年11月号で、「巻頭座談会――刺さないこともありき」が特集された。それが、『接触鍼の実際』というDVDまで発売されるに到った。そこでは、「生活環境の変化にともない日本人の体質も変わり、弱刺激があう体質の人が増えている…。こういった体質の患者さんには亳鍼による刺激は強すぎ、?鍼や?鍼等の接触鍼による弱刺激が適している」として、4名の治療家の接触鍼(長柄鍼、?鍼、三稜鍼、?鍼)を紹介している。

 さらに、昨年末、「全日本鍼灸学会国際シンポジウム」が「EBM(医学的根拠)に基づく鍼灸治療の現状」と題されて京都で開催された。おもに、OAの鍼治療の有効性・科学性・安全性などについての報告が中心だったが、鍼治療も浅鍼もともに有効な治療(ドイツのKlaus Ljnde氏、Technical University Munich)であり、「触れる鍼や浅い鍼による脳報酬系への効果」(スウェーデンのThomas Lundeberg氏、Rehabilitation Medicine,Kalolinsuka Hospital)などが報告され、議論されている(『医道の日本』07年1月号、P211〜223)。

 当院では、亳鍼を使って、刺さない鍼、いわゆる「皮膚接触鍼」治療を行っている。これには、小児鍼なども入っている。もちろん、鍼に抵抗を感じていない人には、亳鍼や三稜鍼、皮内鍼、円皮鍼、耳ツボ用短鍼、中国鍼、灸頭鍼などで、刺す鍼も症状などに応じて使い分けをしている。

1.豪鍼による皮膚接触鍼(NPA鍼法)
 ●使用鍼は、亳鍼(セイリンの寸−1番または0番)。
 ●豪鍼を使って刺さずに、皮膚に触れるだけの鍼術。  → Not Pierce Acupuncture(NPA)鍼法
   「超浅刺」(首藤傳明先生)、「接触鍼」(井上恵理先生)などなど。
 ●対象は、@筋肉痛や関節痛、A神経痛、B幼児、小中高生などの運動疾患やけがの治療、C鍼が怖いという人や抵抗感のある人、D身体のバランス調整(経絡治療)、等々。

2.皮膚接触鍼の鍼術――「押手」と「高速旋撚刺法」
 @適格にツボを捉えること(トリガーポイントも含む)
  ・痛みを解かってあげること。原因と結果。生活の全体の把握。
  ・筋肉・骨格・関節などの構造と経穴、そして経絡。  
  ・臨床経験を積むことと陰陽論。身体全体をみること。自然の一部。

 A刺さずに、皮膚に触れるだけの鍼で「高速旋撚刺法」

症状や反応によっては、5〜30秒。場合によっては、触れた瞬間で緩解するときも。

切皮などの鍼の弾入をしない。

 B「押手」による感性を磨くこと
 皮膚の感触、身体内部の響きなどの感知、筋肉の緊張(実)、ゆるみやくぼみ(虚)…

3.利点と課題 
【利点】 
 @全く痛くない、怖くない、気持ちがいい。 → “鍼のイメージ革命”
 A早い効果、治療時間短縮。
 B安全、清潔。
【課題】
 @接触鍼でもドーゼオーバーになることもある。  → 「四診」等の診断力など。
 ANPA鍼法が効かない場合がある。  → 鍼術の問題か、体質の問題か…?
 B術者の疲労(細かい高速旋撚法による)。  → 技術力の向上など。
 C科学的根拠と普及。
 D技術向上と効果あげるためのNPA鍼法用の鍼の開発  → 金鍼、銀鍼、他。

4.鍼にまつわる基礎講座
 ●『霊枢』より  もともと、鍼には症状によって、刺激量の大小や刺し方などを変えた使い方があり、古代中国の最初の鍼灸医学書(黄帝内経『霊枢』;「九鍼十二原篇 第一」)にも書かれている。いわゆる、補瀉の効果といわれ、「東洋医学においてもっとも重視されている治療技術」((社)東洋療法学校協会編『東洋医学概論』P146)である。人体も自然の一部であり、自然現象と同様に不足しているものは補い(補法)、充実しているものは取り去る(瀉法)のが望ましく、それによって、機能しなくなった体内の調整能力を取り戻していくのである。

「豪鍼は、鍼先が蚊虻の嘴のようで、静かに気を候って徐に刺入し、鍼身が細いので、置鍼して気を養うことができ、痛痺を治療するのに用いる。」(『霊枢』;「九鍼十二原篇」)

 ●私の体験から  実際、脈を診て、睡眠不足やストレスなどで心の気が弱い人はほとんど、胸中の乳首間の中央にある「?中」穴を押すと嫌な痛み(圧痛)を感じることが多く、手首の真ん中にある「大陵」(厥陰心包経の原穴)に、鍼をあてながら(刺さずに接触させる程度)、数十秒、軽くまわすように刺激を与える(補法)と圧痛はとれるし、次第に気持ちが楽になり、呼吸も吸い易くなってくることが多い。また、胃痛や胃重感のある人に、同じように腹部の真ん中にある「中?」穴に施術すると、楽になるなど、いろいろ応用してきた。 『難経』六九難の応用。

 しかし、ときに刺激量が多すぎたり、診断があいまいで補瀉法の選択が不十分であったり、ときには「痛い!」思いをさせてみたり、紆余曲折、試行錯誤してきての今日の到達である。この間、患者さんにある意味、迷惑をかけてきたところもある。

 ところで、肩こりや腰痛などの筋肉痛や、脳血管障害の後遺症、脊椎ヘルニアなどによる神経痛など、一見充実しすぎている(虚ではなく実)と思われるようなさまざまな疾患にも、この方法が効果を上げられることを実感している。

■症例
07年2月6日、右鎖骨に骨折と思われる患者さんがやってきた。
 76歳のおばあちゃん(Oさん)で、その日の朝、自宅で右肩から転倒したらしく、病院へ行かずに、当院へやってきた。診ると、右鎖骨の中央部、いわゆる「中外3分の一」の部位が盛り上がり、腫れあがって、軽い内出血もしていた。骨折は明らかで、とりあえず、アイシングをして、骨折ヶ所の整復を試みたあと、肩を後ろへそるようにして胸を開かせ、8の字帯に固定して、近くの病院へ車で搬送し、レントゲンを撮りに行った。

 病院では、しっかり治療するには手術が必要で入院を勧められるが、本人は入院をしたくないらしく、再び来院。当院で治療をしたいということだが、吐き気も内臓や神経への損傷が見られなかったので、「しっかり整復できず、変形したまま治癒(変形治癒)」することを説明して治療をしていくことにした。
 その際、胸の筋肉や肩周りの筋肉がピーンとはっていたので、緊張をとるつもりで軽く鍼をし、1〜2ミリ程度刺入した瞬間、鍼を支える左手(押し手)の示指と拇指に、ビリビリと軽い電気刺激が伝わってきた。その瞬間、ピーンとはっていた筋肉が、まるでバターが溶けるようにやわらいでいくのが伝わってきた。Oさんの圧痛もとれた。「これだ!」と思って、今度は鍼を刺さずに皮膚に触れるだけの治療をしてみたら、同じような結果になった。
 こうした鍼灸治療は、何人かの鍼灸医が「超浅刺」(0.5ミリほどの刺入)、あるいは接触鍼として臨床で行なっているが、実はあまり信じていなかった。しかし、その後、来院される患者さんに、この方法で、というより、超浅刺でもなく、ただ鍼を皮膚に触れさせ、数十秒間、軽く捻るような治療でも、十分に痛みをとり、筋肉の硬直や緊張をとることができるようになった。

 骨折したOさんに感謝しているが、このOさんの方は、2日後に別の病院でレントゲンをとり、診断してもらったら、「手術しないでも、いまの方法で十分」といわれた。しかし、レントゲン写真を見せてもらったら、なんと右肋骨も6〜7本、骨折していると思われる画像だった。これも、固定しながらの治療しかないが、1週間治療していて、おそらく腎臓の病変も加わって、手足のむくみがなかなかとれないので、とりあえず、入院して様子を診ることにした。Oさんは、骨折周辺の痛みが鍼によって緩和されるので、早く退院して「また診てほしい」と、しぶしぶ検査入院的な説得に応じてくれた。
3ヶ月後、退院してきたOさんは、すぐに当院にやってきた。上部胸椎が大きく後湾しており、鎖骨も変形治癒していたが、心肺機能と肝腎機能を高める治療とともに、骨折による痛みなどの後遺症の治療では、日ごとの回復が顕著だ。いまでは、ほぼ毎日の通院が楽しみらしい。

 ●NPA鍼法の東西医学的根拠へ  東洋医学的に見ると、皮膚の表面に近いところ(脈外)をめぐり、皮膚の収縮と弛緩、外邪から防衛する「衛気」と、臓腑や手足などの諸器官を栄養し、血とともに脈中をめぐる「営気」がある。皮膚鍼はこの衛気・営気を通じて、体内の調整能力に働きかけるのではないか。もちろん、体内をめぐる経絡と経穴は、体の反応を見ながら、正確にとることだ。

 EBM的に紹介すると、防衛医科大学解剖学講座の竹内京子先生のご指導で、「皮膚に鍼を接触させ、刺さない軽微な鍼でも変化が現れることをエコーを使い、体中の水の流れ(リンパ)を分析し」て、「数個の経穴に触れただけでも、水の流れの変化をとらえることができ、その結果を全日本鍼灸学会」に報告されている(一の瀬宏、『医道の日本』06年11月号)。

 ●NPA鍼法の効果に対する今後の研究課題
 @筋スパズムのシステムの解明
 皮膚鍼によるビリビリ感の伝導は、筋肉の最小単位であるミオシンとアクチンが疲労などによりくっついており、それを皮膚に鍼を接触するだけで、スムーズに動き出すときに、微量の電流などが流れるために、押し手に伝わってくるのではないか。
 A「皮膚科学」からみるNPA鍼法(傳田光洋著『皮膚は考える』から)
「皮膚は同じように刺激が加わったときに、神経伝達物質が直接出る…。つまり神経が来ていないけれど、皮膚は脳とまったく同じように、全身に信号を発する能力を持っている」。

 1.皮膚は最も大きな臓器=「外臓」である。 表皮の厚さ=0.06〜0.2ミリ。
 2.電気仕掛けの皮膚機能。生きている表皮細胞のエネルギーによる電位、表皮内イオン分布など。
 3.情報伝達を生み出す。ケラチノサイト細胞の持つ仕組み。(神経系伝達、免疫系・ホルモン系)
 4.皮膚はセンサーである。外肺葉由来の意味。イオンチャネル受容体。
 5.皮膚は脳である。

★皮膚表面での電場の局所的変化(ケラチノサイト細胞とイオンチャネル)

★表皮から神経系に作用→情報伝達物質の合成・放出→神経系・免疫系・内分泌系への作用

★お灸による温度刺激(イオンチャネル受容体=TRPV→電気信号→神経)

 B皮膚の刺激を感受するメカニズム 
 表皮の部分に感覚神経の終末をもつマイスナー小体(無毛部)と毛包受容器(有毛部)が主に触覚、真皮にあるメルケル盤やルフィーニ終末が圧覚の受容器である。振動刺激は真皮の一番深いところにあるパチニ小体(高感度、接触を最初に感知する)という受容器があって、それぞれ脳に伝わる。

 皮膚刺激鍼は、少なくとも押し手による触圧覚とともに、表皮に触れるか触れないかぐらいの微妙な接触鍼で体内に明確な変化をもたらし、痛みなどの鎮痛効果があがっている。こうした感覚受容器が脳に伝わり、反射として働く機能(自律神経反射と体性−運動反射)などのメカニズム、あるいは東洋医学的な人体をめぐる「気」というエネルギーの捉え方や経絡、経穴なども合わせて、皮膚刺激による鍼灸治療、「気持ちのいい鍼」「痛みをとる鍼」「病気の治療に役立てられる鍼」などまさにこれから臨床と研究を重ね、解明していかなければならない。



 
彼岸花の功罪 2007年09月23日 (日)

 今年の夏は、もろに温暖化の影響が出た。八尾市の8月の平均が全国一だそうだ。それでも、お彼岸になると、ヒガンバナが咲き、少しは涼しくなるものだ。
 以下、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』からかいつまんで紹介する。

  ヒガンバナ(彼岸花)は単子葉植物綱ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草である。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれる。…日本には中国から伝来した帰化植物と考えられる。道端などに群生し、9月中旬に赤い花をつけるが、稀に白いものもある。生長の仕方は独特で、夏の終わりから秋の初めにかけて、高さ30〜50センチの花茎が葉のない状態で地上に突出し、その先端に5〜7個前後の花がつく。開花後長さ30〜50センチの線形の細い葉をロゼット状に出すが、翌春になると葉は枯れてしまい、秋が近づくまで地表には何も生えてこない。開花期には葉がなく、葉があるときは花がない。球根。

 また、日本に存在するヒガンバナは全て遺伝的に同一であり、三倍体である。故に、雄株、雌株の区別が無く種子で増えることができない。(遺伝子的には雌株である)中国から伝わった1株の球根から日本各地に株分けの形で広まったと考えられる。

[編集] 概要
 全草有毒、特に鱗茎にアルカロイド(リコリン)を多く含む有毒植物。誤食した場合は吐き気や下痢、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死にいたる。 墓地や水田の畦(あぜ)に多いのはネズミ、モグラ、虫などがその鱗茎の毒を嫌って避ける(忌避)ように人手によって植えられものが多い。墓地の場合は土葬後これらの動物によって掘り荒されるのを防ぐためである。 この毒は長時間水に晒せば抜くことが可能であり、澱粉に富むため、古くは救飢植物として食用とされた事もあるが、毒抜きの時間が不十分であったり、長期間食して毒物が蓄積したために中毒を起こしたケースが多々存在するため、絶対に真似してはいけない。また、花が終わった秋から春先にかけては葉だけになり、その姿が食用のノビルやアサツキに似ているため、誤食してしまうケースもある。

 鱗茎は石蒜(せきさん)という生薬名であり利尿や去痰作用があるが、有毒であるので素人が民間療法として利用するのは危険である。

 これに関しては、『日本薬草全書』では、「民間薬として生の燐茎をすりおろし、足の裏の湧泉穴に貼って、胸膜炎や肝硬変、癌の腹水・胸水、関節炎の水を尿に排出させる。さらに、これにトウゴマの果皮を剥いた白い胚乳部分同量を砕いてすり混ぜると一層効果があるとされている」とある。

 『ウィキペディア(Wikipedia)』にもどる。

 彼岸花(ひがんばな)の名は秋の彼岸ごろから開花することに由来する。別の説には、これを食べた後は「彼岸(死)」しかない、というものもある。上記の飢餓植物としての面から一考する価値はあると思われる。別名の曼珠沙華は、法華経中の梵語に由来する(梵語での発音は「まんじゅしゃか」に近い)。また、"天上の花"という意味も持っており、相反するものがある(仏教の経典より)。万葉集にみえる"いちのしの花"を彼岸花とする説もある。

 異名が多く、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)、と呼んで、日本では不吉であると忌み嫌われることもある。しかし、そのような連想が働かない欧米を中心に、園芸品種が多く開発されている。園芸品種には赤のほか白、黄色の花弁をもつものがある。

 また、韓国では彼岸花のことを「相思華」ともいう。 これは彼岸花が花と葉が同時に出ることはないから「葉は花を思い、花は葉を思う」という意味である。

 あまり日本では知られてはいないが、学名のLycoris(リコリス)とは、ギリシャ神話の海の精:ネレイドの一人、Lycoriasの名前からとられたものと考えられる。

 埼玉県日高市の巾着田は彼岸花の名所として知られ、巾着田の最寄り駅である西武池袋線高麗駅に多数の臨時列車が停車したり、彼岸花のヘッドマークをあしらった列車を運行する。

 秋の季語。花言葉は「悲しい思い出」「想うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」。

 俗信では、家に持って帰ると、火事になる花とも言われている。




手術を宣告された涙目に鍼で軽快  2007年09月24日 (月)

 腰痛や肋骨打撲の治療で来院されていた50代の男性=Gさんが、2か月ぶりに来院。最初は、急性の腰痛だったが、こちらの方は1回目の治療でほぼ緩解。
 その間に、涙目がひどくなったというので、眼科に行ったら、「鼻涙管が狭くなっているので、手術して治しましょうか。」といわれ、ビックリ。「ちょっと考えさせてください」といって、その場から飛び出すように帰ってきたという。当院のイトーテルミー治療を受けている奥さんが「鍼の先生に相談してみたら」という助言で、2回目の来院時に詳しく事情を聞き、涙目やドライアイ、眼瞼の痙攣などに鍼治療の効果のあることなどを説明しながら、早速、涙目(鼻涙管閉塞症 or 狭窄症?)の治療を行う。

 治療は、もちろん眼の周囲を中心に、“刺す鍼を使って刺さない鍼治療(NPA鍼術)”だ。その結果、1回目の治療の翌朝、いままで左の外眼角あたりがヒリヒリしていたのがなくなり、視力や目の周りが軽くなったといい、よろこんで2回、3回と連日来院。涙目も、腰痛も、3回の治療でほぼ軽快。
 最初も2〜3回目も、脈診では案の定、目を司る「肝の気」が弱く(肝虚)、治療は足の母・示指間にある「太衝」穴、手の母・示指の「合谷」穴、そして内眼角にある「晴明」穴、「攅竹(さんちく)」穴、「陽白」穴などにNPA鍼術による鍼治療を行った。治療中に、Gさん「本当はハリが怖かったんです。」といいながら、痛くもかゆくもない鍼に安心しきって、鍼の効果に感心していた。

 これまで、視力の老化対策にブルーベリーなどをよく食べていたらしいが、あわせて手軽に購入できる「クコの実」も食べることをすすめた。クコの実は、漢方では「枸杞子」といい、滋陰薬で肝腎陰虚の視力減退や風に当たると涙が出る(迎風流涙)、腰や膝がだるく無力などの症候に効くといわれている。よくデザートの「杏仁豆腐」などに添えられているので、女性にとってはなじみ深いと思う。

 当院では、流涙治療のほかに、老眼の進行で新聞が読みづらいという60歳を迎えた女性に、視力回復の治療で、老眼鏡がいらなくなった例や自動車免許の更新前に少しでも視力回復をと通院されて更新できた人なども数人いる。もちろんパソコンの仕事などによる眼精疲労の治療は枚挙にいとまがない。いづれも、NPA鍼術なので、痛くもなく、怖くもなく治療できるので安心して受療していただいている。



狭心痛が治った?? 2007年10月08日 (月)

心疾患の診察と治療に鍼灸効果

 脊椎圧迫骨折による腰痛治療で今年3月に来院されたMさん(60代の男性)は、実はひと月に10回ほど舌下錠を飲んでいた狭心痛持ちの患者さんだった。ほかに、ひどい喘息、いやどうも肺気腫とも思える症状も呈していた。

 脊椎圧迫骨折による腰痛治療の方は、週3回の治療をし、1週間ほどで寝返りできるようになり、その後自転車で買い物にも出かけるようになった。毎日、出かけて大好きなお刺身をスーパーで買い、ビールといっしょの夕食が実にうまいと喜んでくれている。それ以上に、治療1か月ほどで持病の狭心痛がほとんどなくなったことの方がもっと嬉しく、安心して夜も寝れるようになったと感謝されている。

 以前にも、脈診や聴診器で診察した60代の女性も、虚血性心疾患か、弁膜症の症状が推察でき、今は亡くなったご主人がかかっていた心臓専門医のところへ行くように勧めた。
 「確かに軽い弁膜症だ。それにしても、聴診器や触診などでよくわかったなぁ。」と医師が感心していたそうだが、「いますぐ、命にかかわることはない」とお墨付きをしてもらい、現在、鍼灸による心疾患治療で、動悸や息切れ、胸の痛みなどがほとんどなくなり、以後定期的に通院してくれている。

 治療のほとんどは、左の手の厥陰心包経の原穴である「大陵」穴と手のひらの少陰心経の「少府」穴の2穴に、刺さない鍼治療(NPA鍼術)で十分な効果を得ている。胸の圧痛がとれない場合は、これに「?中(だんちゅう)」穴を加える。さらに、伏臥位(うつぶせ)で第5胸椎下の「神道」穴や「心?(しんゆ)」穴、左の「淵液(えんえき)」穴などにNPA鍼術を行うとほぼ1回で息が吸いやすくなり、気持ちが楽になる。

 50年来煙草を吸い続けてきたMさんのほうに話を戻すが、喘息よりも、肺気腫っぽい空咳と朝方の痰、30分ほど歩くと息切れとしんどさが出てくる症状が続いていたので、「たばこをやめない限り治らないよ」といってみたものの、禁煙はそう簡単なものではない。
 ところが、喘息・肺疾患治療を試みながら、実は耳穴探索機を使った耳鍼(マグネット粒の貼付)も並行して行った結果、6ヶ月で全面禁煙に成功した。案の定、咳や痰がみるみるうちに少なくなり、呼吸しやすくなったといい、「もう吸わなくてもいける。しかし、お金は貯まらんなぁ。」とぼやきつつ、「狭心痛による左肩・左頸の痛みが出ると、きまって胸の締め付けられる痛みが出ていたのが、いまではほとんど出なくなり、気管支の方も楽になった。」と週3回の治療を愉しみしている。



30週以後の逆子治療の妙味!
2007年10月28日 (日)

 先日、33週に入った逆子の治療にと、来院された27歳のNさんを治療していて、

 「ご主人にお灸を据えてもらうのが一番いい」とアドバイス。

 早速、帰宅していたご主人に来院してもらって、一通り、実演をしながら、お灸の指導もした。
 奥さんのお腹は、施灸前より、だいぶ緩んできたのが実感でき、女の子という胎児は2〜3回激しく蹴りまくったりもした。
 これなら、いけそうかなとも思える。

 奥さんはあと10日ほど、大きいお腹して会社へ通勤したり、毎日1万歩前後歩いているという。体重も10kg増え、歩くと右ひざが痛い、というので、刺さない鍼の治療で、膝の痛みはすっかり消失、楽になった。
 ご主人は、ごっつい手をしていたが、意外と器用で飲み込みも早い。逆子体操の指導も含め、毎日、お灸をするようにいって、とりあえず、帰宅してもらった。

 ところで、以前、このホームページで

 「逆子治療で2人来院されたが、いづれも8ヶ月にかかろうとしている妊婦さんばかりで、この時期の成功率は40〜50%ぐらいであることを告げて治療にあたった。
 その結果、逆子矯正ができたのはMさん含め、2人だった。
 できれば、逆子がわかった時点で来院されるほうがいい。
 遅くなればなるほど、矯正の確立が低くなる。」

 と書いた。 

 あらためて、文献などを読み返してみてわかったことだが、むしろ胎位が定まって動きにくくなる8ヶ月(32週)以降にこそ、逆子治療の妙味があるということにハッとさせられた。
 確かに、正常胎位になる確率は低くなるが、その状態を治すからこそ、逆子治療であって、胎児が下がりはじめる8〜9ヶ月にかけての矯正治療がむしろ、一番いいのではないか、と思える。

 今回来院されたNさんの胎児は、お尻を下にしている逆子で、来院時には右上方に頭がある状態だった。
 ときどき、胎児の頭が左に行ったりして、それまでけっこう動いていたらしい。
 この状態あるいは、両足が先に出る全足位や、膝を曲げて膝から先に出る全膝位はけっこう出やすいので、一昔前なら、そうした逆子のまま分娩で取り出してくれる医師や助産婦がいた。

 現在は、逆子矯正が出来なければ、即帝王切開で取り出す。ここにも、産科医不足の現代日本の医学の貧困な現状が見え隠れする。できるなら、帝王切開せずに、産みたいという母親の願いに応えられるように、東西医学の垣根を越えて、社会が見直す時期に来ているのではないか。

 8ヶ月以降の逆子治療では

 1.両側の至陰に15分間、日に2回の灸。その際、「熱いのをできるだけ我慢してもらうのがポイント。

 2.鍼の処方も加える
  @少沢、後谿、腕骨
  A少商、魚際、尺沢
  B隠白、太白、三陰交
  C至陰、京骨、飛揚。
    (ちなみに、漢方薬として「保産無憂散」、俗称「保産十三太保方」ともいう。安胎の妙薬、胎位異常にも     良い効果が得られる)。
   至陰、三陰交に20分の置鍼。(三陰交に灸頭鍼でもよい)。

 3.胎位異常時の母体治療(胎動増加を目標)

  母体の肝鬱気滞(子宮の異常収縮と胎動減少)・脾気虚弱(胎児の胎動減少)・腎虚(胎児の元気不足)は、胎児の胎児の元気を損なうので胎位異常の病因になる。

   ※妊婦の禁鍼禁灸がよくいわれてきたが、昔の鍼と現在の鍼や灸の据え方はまるで違いがあり、現在の    毫鍼(鍼の太さ=0.16×30o)による治療にはほとんど問題はない。まして、当院では、無刺入のNPA鍼    術なので、それこそ、問題はない。) (2007.10.28)


【余談】

 韓国で視聴率60%を記録していたという「ホジュン」。16世紀の朝鮮王朝時代に「宮廷医官への道」を歩み、現代にも医師の“座右の銘”といわれている『東医宝鑑』(1613)を編纂した実在の人物。
 64話に及ぶ長大作の「ホジュン」には、さまざまな治療にかかわる逸話が出てくる。

<第38話>

 王の第一側室が産気づくが陣痛がない。
 羊水が青く臭い。

 「胎児の便だ。このままでは、胎児も母体も危ない」と医女がいう。

 鍼で陣痛を誘導するが、逆子であることが分かる。

 「逆産だ。
  お腹の上が硬く、下が柔らかい。
  尻が先なら心配ないが、足から出てきたら、細心の注意が必要だ。」

 足が先なら「逆産」。手・腕が先なら「横産」。子宮が胎児より先に出るのは「盤腸産」。

 逆産の治療には、「ウサギの脳髄や蛇の抜けがらが効くという説もある。
 気血がからまっていたら、牛膝、桂心、生姜などが効く。巴豆、菎麻子、麝香で「如神丹」をつくり、母体の臍下に貼る。

(※)「如神丹」は、日本では江戸期に歯の痛め止めに使われているのだが?。

 などのシーンが出てくる。



当院のアスリートたち
2007年11月01日 (木)

 当院に通院する“アスリート”たちを紹介しよう。

 一人は、京都の私立中学に通うO君(中3)。10月下旬に横浜を会場に行われた「オリンピックJr.」の陸上競技100m走で優勝。

 彼の最高記録は、「100m 10秒7」である。今回は、台風20号の影響で追い風のため、平凡なレコードに終わった。競技の翌日早速、当院にケアのために来院。左ハムストロングや土踏まずの使い痛みの鍼灸治療を行った。Jrオリンピックへ行く前日にも、腰や足の痛み軽減、緩和のために鍼灸治療と指圧マッサージを行って体調を整えてのことだけに、今回の結果はうれしい。彼の夢は、北京の次のロンドンオリンピックへの出場だ。そして、親の後を継いで、医者の道をめざしている。

Jrオリンピック:第37回ジュニアオリンピック陸上競技大会 、10月27日〜10月29日、日産スタジアム(旧・横浜国際総合競技場) 。



 もう一人は、日本テニス協会が主催あるいは公認する各地の「ベテラン大会」に出場を続け、頂点の「全日本ベテラン選手権大会」で6回優勝してきたFさん(72歳)。

 今年も関東オープン選手権の70歳以上のシングルスなど7大会でトップに立ち、これまで優勝数は75回を数える(『朝日新聞』第2大阪版2007年10月2日付)。
 Fさんは、昨年から今年にかけて、右の「五十肩」と右人差し指の弾発指、腰痛などの鍼灸治療と指圧マッサージを続け、この夏までにいづれも試合に出れるほどに回復、そしてほぼ治癒。故障している間でも、テニスの指導に駆けずり回っていた。

 11月には、九州での大会の後、ニュージーランドで行われるベテラン世界大会に参加する。そして、目標は「ベテラン大会での優勝100回」という。結果を期待したい。


手術せずとも、バネ指は治る!
2008年01月06日 (日)

 バネ指(弾発指)の患者さんも多い。

 この症状だけで来院される人は少ないが、他の症状の治療のついでに「先生、実は…」というケースがほとんどだ。ひどければ、炊事やテニスなどの日常生活に困るし、指を曲げたあと、伸ばすときにひっかかって伸びず、無理にするととても痛い。

 血の巡りが悪い人や使いすぎなどで、急に発症する。中指であったり、薬指であったり、ひと差し指(示指)であったり、さまざまだ。

 そういう私自身も、5年ほど前、年末の古新聞や本、段ボールなどの梱包をやりすぎて、右の示指がバネ指になった。使いすぎだ。
 もともと、小2の頃、ワラを切る「押し切り」という農機具で遊んでいて、この指の第1関節をほぼ切断状態になるほどのけがをした。4針ほど縫ったあとが残り、それ以来、第1関節は自動では曲がらない。

 友人の鍼灸師に鍼をしてもらったり、灸を据えたり、ほぼ半年で治癒した経験があるので、痛さや仕事などに障害が出たりして、バネ指のつらさはよくわかる。

 来院される患者さんの多くは、医師に手術を勧められたり、あるいは過去に手術をした経験のある人で、「もう手術はいや」といって、鍼灸治療に期待する。
 結果は、「手術しなくてもよかった。ほぼ治った」と喜んでくれる。

 これには、個人差があって早い人で2〜3ヶ月で治る人もいれば、1年ほどかかった人もいるが、刺さない鍼(NPA鍼法)なので、鍼灸治療は全く痛くないし、お灸も「九分灸」といって、ほとんど熱さを感じない。

 こうした治療を、整形外科の医師たちも取り入れるか、治療できる鍼灸院を紹介してもいいのではないか。病院経営もあるが、患者さんのことを思えば、最良の治療を選択してあげる度量がほしい。
 何でも手術すればいいというものではない。

 【余談】

 私の示指のけがの跡には、余談がある。
 子どもたちが小さい頃、よく寝かせつけるときに、いろんな話をしてあげたものだ。

「お父さんのこの指の怪我はな、小さい頃、オオカミに襲われて、戦ったときのあとやねん!ほら、噛まれたあとがあるやろ?」
といって、指の縫ったあとを見せる。


 「ウサギ狩りとかで山の奥に入り込んでな。迷ってしまい、どこか一晩でも過ごせるところがないか、探しとったら、洞穴があってな。そこで、一緒に行ったお兄ちゃんと焚き火しながら、じっとしていたら、遠くから“ウワォーン”という、オオカミの声がするんや。」

 「エー!」

 2人の娘の目は真剣そのもの。子どもたちが小さい時から、雪深い秋田にある実家に年に2回は帰省していたので、その雰囲気はけっこうリアルに感じとれるのだろう。
 
 「オオカミがうろうろしていて、洞穴に張り込んでこようとしたとき、焚き火の火を使ったりして追い出そうとしたときや!。ガブッ。」

 「キャー!」

 毎回毎回、話をするたびに、話の中身が大きくなったり、少し変えてみたりした。けっこう、何年かこの話は寝かせつけるのに役立った。

 だが、子どもたちが中学生頃だったか、帰省した時に、私の姉に、子どもたちが聞いたことで、この話はおしまいになった。

 「叔母ちゃんがいってたで。オオカミはとっくの昔に絶滅してるやんか。」

 ばれてしまったのだ。


「五十方」治療に思う
2008年02月07日 (木)

 四十肩、五十肩の患者さんは、実に多い。

 「夜中に寝返りしたときに、ものすごく痛くって、眠れない」

 「肩が痛くて、腕を後ろに回せないので、服を着たりするときに困っている」

 「腕を上げれないので、洗濯を干したりするのができない」

などなど。

 四十肩、五十肩は名前の由来どおり、40歳や50歳ぐらいになると、筋力が衰えてきたうえに、使い過ぎや、ときには肩への強い衝撃が引き金になったりして、急に肩関節に痛みと運動制限を伴った病態があらわれる。
 老化や体質も関係する。

 服の着脱や夜間疼痛などで悩まされ、けっこうやっかいな病気だ。
 60歳を過ぎ発症しても、「六十肩」とはいわず、やはり「五十肩」という。

 何ヶ月かすると、自然に治る場合もあるが、早く痛みを取り、治すのに、鍼灸治療は非常に適している。
 ただ、筋肉の腱板が部分的にあるいは完全に断裂している場合や、急に激痛が襲う石灰沈着性の腱板炎、骨折などは、しっかりとした鑑別をした上で、整形外科的な診断、治療が必要となる。
 整形外科的診断と対処のあとの治療は、やはり鍼灸治療に効果が期待される。

 当院では、「五十肩」の治療は、気血の流れなどの体質や老化機転、外傷性などの病因を考慮しながら、体内にある経絡からのアプローチで肩関節の筋肉などへの栄養分が行き届くようにすることとあわせて、肩関節周囲の圧痛点にも、鍼を使って“鍼を刺さずに”(NPA鍼法)痛みをとる治療を行う。
 場合によっては、鍼への抵抗感のない人には、痛くない方法で鍼を刺入し、そのうえにもぐさを使って温めたりすることもある。
 不思議なぐらい、痛さで硬直した肩が動き、痛みがほとんど感じなくなるほどに治る人もいれば、動きやすくなったとはいえ、かなりの運動制限が残ったり、動かすと痛みが残ったりする人もあり、治癒過程には個人さがどうしても残る。しかし、根気よく続けることで1ヶ月ほどで治る。

 よく、入浴中に肩をストレッチしたり、夜間に冷やさないようにしたり、自宅でできることなどをよく相談しながら、個人の治す努力は欠かせない。

 ところで、鍼灸治療を保険で行いたい場合、当院にある医師の「同意書」を患者さんにお渡しして、患者さんのかかりつけの病院や当院で紹介する病院で診察をしてもらったうえで、「同意書」を書いてもらうようにしている。

 先日も、「五十肩」でこられた患者さんに、「同意書」をお渡ししたら、行った先の病院でまずレントゲンをとられ、「骨には異常がない」としたあと、痛み止めの注射をされたという。治療はそれだけだった。「同意書」の方は、なんと1週間様子を見てから、という。
 確かに、痛み止め注射で、その場では痛みが取れ、結構肩を動かせるようになったが、その晩、寝返りしたときに激痛が走り、症状は以前と変わらないという。

 こんな話を聞きながら、鍼灸治療をした結果、痛み止め注射のときと同じぐらいの症状に軽減され、とりあえず、隔日に鍼灸治療をすることになった。

 こんな例は、膝関節痛や腰痛でも実に多く見られる。

 医師の「同意書」などとややこしい日本だけの制度にとらわれて、誰にでも安く鍼灸治療ができない現実に、煮えきれない思いと、もっと日本の医師が患者さんにとって、東西医学の垣根を越えて、効率的で効果的な治療方法としての鍼灸に理解をするべきで、欧米のように医師自身が鍼灸治療を取り入れられるようにすべきだとの思いがつのる。それが患者さんにとっても、また医療費を低く抑えられる方法としても、有効な道だと考えながら…。


宿便を治し、ダイエットに効くという『桃の花』
2008年03月03日 (月)

(再録)

 庭に咲いた一重の桃の花を摘んでは、一輪挿しで治療所に飾るようになって今年で3年目である。梅と違って、匂いはないが、ピンクの可愛いらしい花びらは一週間以上ももち、なんともいえない心の癒しとして、人の目を楽しませてくれる。八尾の山手の方で造園業などを営んでいた患者のUさんから4年前にいただいたものだ。Uさんいわく、花が咲いたら、枝の根元から3センチぐらい残して切り取ると、毎年、きれいな花をつけてくれるそうだ。だから、桃の実がなるのかどうかわからない。しかし、観賞用としてはとても高価な種類として、大事に育てているつもりだが、ほとんど手入れがいらず、いやわからず、放ったままでも、大丈夫らしい。

 さて、桃の花は、中国古来から、漢方薬として重宝がられてきた。開花前の薄いピンク色のつぼみを天日で乾燥させたもので、「白桃花」という生薬だ。宿便を治し、ダイエットに効くというから、女性にとっては、聞き逃すわけにはいかない効能がある。2000年以上も前の中国の医学書『名医別録』には、「白桃花は味は苦く、性質は穏やか(平)で、無毒。大小便を利し、三虫を下し、身を軽くする」とある。ただ、この白桃花だけなら、通便作用が強過ぎてお腹をくだすことがあるという。それを和らげるために、乾燥させたミカンの皮(陳皮)といっしょにして、お茶代わりに飲んだりするのがいいようだ。

 桃の花には、ケンぺロールやマルチフロリンなどのフラボノイド類や芳香性のあるクマリン類が豊富に含まれているという。ケンペロールは強い利尿作用があり、マルチフロリンは腸のぜん動運動を活発化し、排便を促進する作用がある。つまり、便秘やむくみの解消に強い味方ということだ。さらに、クマリン類は血液の異常な凝固を防ぎ、血管拡張作用があるという。こんな効果のある生薬がいとも簡単に造って、愛用することができるというのは、なんともすばらしいことではないか。
 ただ、残念なことに、ほんとにきれいな桃の花を、つぼみの段階で摘んでしまうか、咲かせて観賞用として、使用するか、悩むところだ。実際、庭に咲く桃の木は枝が5〜6本だけなのだから、しょうがない。でも、年々、一枝、一枝増えていくのが楽しみだ。

(2004年3月)

 桃の実(桃仁)の方が婦人病に用いる漢方薬としてはよく使われている。
 「桃仁」の単味でも、また「桃核承気湯」や「桂枝服茯苓丸」などの方剤として、冷えのぼせが強く、月経不順、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘や尿量減少、高血圧に伴う頭痛・めまい・肩こり、更年期障害、にきびや湿疹、坐骨神経痛、打撲や捻挫、それに伴う内出血、疼痛などに用いる。

 桃の葉は煎じて布に浸し、「あせも」につけて湿布するか、あるいは布袋に入れて浴剤として用いる。とくに子どもの「あせも」によく使われてきた。

(2008年3月8日)


胃が痛くてやってきた在米の一時帰国者
2008年04月03日 (木)

  「胃が痛くて、お灸をしてもらえませんか?」とやってきたTさん(女性、78歳)。

 前日、近くの鍼灸整骨院へ行って、マッサージをしてもらったという。
 しかし、胃痛が治まらず、当院へお灸を求めてやってきた。

 問診では「胃とみぞおちの辺りが痛いし、胸焼けはないが、食欲はなく、食べたら胃液が出てくるようだ。」とのこと。
 1週間前(3月27日)に、胃カメラ(内視鏡)の検査では異常なしだが、逆流性食堂炎ではないかといわれた。

 みぞおち(=心窩部)や腹部・季肋部などを触診すると、確かに心窩部と胃に圧痛があるが、心窩部は「ウッ!」とつかえる嫌な痛みがあり、腹部の真ん中(胃)は軽く押すと逆に楽になるという。いわゆる喜按だ。また、脈診では、心臓の働きにも弱さがみられる。

 胃の痛みは、寒さによるものとおもわれ、いわゆる寒邪に陽気が阻害されて、気機阻滞をおこしたもの。外感寒邪が胃に入り込み、胃気不和を起こして、胃痛となったようだ。それに食滞が加わっている。
 花冷えがひどく、急激な寒さに加え、ジュースなど冷たいものを飲んでいたために、急に痛みが出てきたようだ。
 漢方では「散寒止痛」という治療法で、「生姜黒砂糖湯」を処方する。重いものには「良附丸」などがいい。

 治療は、18金の?鍼(ていしん、刺さない鍼)を使って、まず、心気を高めてから、足の陽明胃経の経穴からアプローチしていった。

 ●左の手首にある「大陵」穴→掌の「少府」穴→肘の内側にある「少海」穴で、ほぼ胸の圧痛は消える。
 ●足の土踏まずにある「公孫」穴。ここまで刺さない鍼(NPA鍼法)。
 ●「足三里」穴と左手の「合谷」穴に寸−1の使い捨て鍼ではじめて鍼を刺すが、まったく気がつかない。5ミリ  ほど刺入、置鍼した。

 「胃が痛いのに、なんで足からやるんですか?」と患者さん。

 「“上病下取”という東洋医学の臨床経験があって、足の先から胃の経絡が通ってるところから、胃の痛みなどを抑えていくんですよ。心臓にも少し負担があるようなので、心臓の働きをよくする鍼もしておきましたよ。」

 「不思議ですね。」

 それから、ようやく腹部の方へ。

 ●腹部のみぞおち(「鳩尾」)の下にある「巨厥」(こけつ)穴と「中かん」穴にNPA鍼法とお灸を据える。
  ここまでで、胃痛はほぼなくなる。

 ■伏臥位で、左胸の「淵腋」(えんえき)穴、「心兪」(しんゆ)穴にNPA鍼法のあと、膈兪(かくゆ)・肝兪(かん  ゆ)・脾兪(ひゆ)、いわゆる胃の六つ灸をした。

 「あぁー、気持ちよかった。胸のあたりも楽になったし、息も吸いやすくなった。」

 Tさんは、アメリカのニュージャージーから一時帰国?しており、明後日アメリカへ帰る。

 「子どものころ、神戸から広島に疎開して、県境におったから、直接被ばくしなかったけど、被爆者が大勢やってきて、そこで2次被爆を受けたらしい。日本政府が発行する被爆手帳をもらっているけど、使えないね。」

 さらに、「むこうでは、歯医者はものすごく高いし、薬代は薬局によって値段が違い、安いところを探しまわったり、お年寄りは現役時代に貯めていたお金をほとんど医療費などでなくなっていくし…。」などアメリカでの医療保険事情などの話をしてくれた。

 最後に、

 「明後日、アメリカへ帰るんです。むこうでは、お灸をやっているところがなかなかなくて…」

 「アメリカはほとんどが中国伝統医学の影響が強くて、日本鍼灸のようなやさしい鍼にはなかなかお目にかかれないでしょうね。」

 この患者さんは、翌日も来院されて

 「昨日のはりとお灸で、ウソみたいに良くなった。お昼ごはんを食べても大丈夫やった。こんなに鍼が効くとは思わなかった。胃もみぞおちも痛みはない。お腹の調子はいい。」

 といって、別のスタッフが冷えを改善する「女三里」といわれる「三陰交」穴とむくみを取ったり、水分調整を行う膝下内側の左「陰陵泉」、背中の肩甲骨内縁部の「膏肓」穴などを加えて、前日と同じような治療を受けて帰って行った。

 いま、アメリカでは、大統領選挙の真っ最中。医療保険問題が経済問題、イラク戦争につづく重大な争点になっている。医療費はものすごく高く、医療保険を持たない「無保険者」が4,700万人にものぼっている。

 マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」(病気)は、高度な医療を築いているアメリカの貧困な医療制度を見事なまでに告発した。

 そんななかで、大統領選挙では、65歳以上の高齢者と障害者を対象にしている公的医療保険制度(「メディケア」)と同じような国が責任を持つ「国民皆保険制度の導入」が議論されている。これには全米の医師の59%が賛成している(『しんぶん赤旗』4月3日付、ワシントン=鎌塚由美特派員)。

 一時帰国者Tさんの話を聞きながら、アメリカはひどいがそのアメリカナイズの方向へ突き進んでいる日本の医療もいま危ない。
 75歳以上の高齢者を「隔離」するような新たな医療保険制度がこの4月から実施された。


広州・開平・香港・マカオ4日間の旅
2008年05月03日 (土)

2008年4月26日〜29日4日間、香港・マカオ・広州・開平を旅した。

■旅の動機

「香港・マカオは行ってみたいな」
「そうやな。行ってみたいね」で、今回はほぼ決まった。

 選んだ理由は、強いて言えば、特異な発展を遂げてきた歴史やエキゾチックな街のイメージに魅かれ、一回は見ておかないとね、ということで夫婦の意見が一致。
 それに、めざましい経済発展をとげている「南の窓」である広東省の省都、広州。そして、いまやラスベガスをも抜く勢いのあるマカオ。一国二制度の香港。バスやら船やら鉄道やら、なんとなく旅の気分があり、楽しそうだった。

 当然、“日程・価格”との折り合いがなければ、無理。そんなところへ、2月頃に送られてきた旅行雑誌(阪急交通社の「トラピックス倶楽部」)にあったのが右の企画だった。

■広州から世界遺産登録の開平へ(泊)【1日目】  
        
 関西空港、10時10分発、JAL605便。広州へは3時間45分のフライトだった。昼は機内食。
 関空は晴天だが、春がすみ。広州は、ややうす曇りだが、かすみ具合がちがう。広州の空を覆うどんよりとした大気は、大阪が大気汚染でかすんでいた頃を思い出す。

 ツアーの一行12人といっしょに、空港で迎えのバスを待っている間、暑い!蒸し暑い!。
 中国東北地方のハルピン出身のガイド、金さん。

「朝は19℃だったけど、いまは28℃ですね。でも湿度が高いんです。65%ほどありますね。」と流暢な日本語で教えてくれた。確かに、体感温度は30℃は超えているようだ。

■「中国は日本より確実に30年は遅れている」

 広州は、中山紀念堂(約30分)と鎮海楼(同)の2か所。

 空港からのバスで聞いた話を紹介すると、

 ●「広州は中国で3番目の大都市で、人口1,800万人。北京より2,400`のところにある(中国は南北5,500`、   東西5,000`)。」
  ネットで調べると、人口720万人とあったが、これはいつの時点なのか、とにかく急激に人口が増えている。

 ●「(香港に隣接する経済の大発展都市である)深?は人口1,300万だが、数年のうちに広州を追い抜くだろう。
  広州には日本企業が800社、深?は600社、広東省全体で3千社が進出している。」

 ●「広州の経済発展は、車のcvレート登録が1日800〜1,000台といわれ、車社会の勢いはすごく、高速道路  の建設などはあちこちでみられる。」

 ●「3年前から、広州市内でのバイクが禁止された」という。

 台北に行ったとき、街中にバイクがあふれ、ひどい排ガスに辟易したことがあるが、なるほどバイクはほとんどみかけない。しかし車の量が多いし、市内や郊外で吐き出される大気汚染も加わってか、空気の汚れや新旧いりまじったごちゃごちゃした街並みが印象的だ。ただ、北緯23度に位置する広州は亜熱帯で、北回帰線が横切っている。1年中温暖で多雨。高い草木が生い茂り、大気の汚れを洗い流してくれているようだ。

 あとで200`ほど離れた開平市に向かうことになるが、開平では逆にバイクだらけで、しかも3人、4人乗りはざら。なかには6人乗りも。

 広州は近隣の農村などから人口が集中してきており、住居は5〜10階建のアパートが多い。高いのは16階のものもあるが、アパートにはすべてエレベーターはない!!。
 東京で暮らしていたという金さんによれば、

「中国は日本より確実に30年は遅れている」。

■「公為下天」“世界はみんなのために”…中山紀念堂

 最初の観光先、中山記念堂は、周囲をモダンなビル街に囲まれながら、大きなガジュマルなどの木々や花の多い、ゆったりとした空間のある威厳あるたたずまいだった。バスの駐車場の上に覆いかぶさるような木は、金さんいわく、「マンゴーの木で小さな実がなってる」と指さしてくれた。ここのガジュマル(細葉榕)は広州の名木に登録されている。

 中国革命(辛亥革命)の父、孫文(字が中山)を讃え、広州市民と華僑によって1931年に建てられ、1998年に大改修された。紀念堂の正面にある「公為下天」という孫文の直筆による額は、印象的だ。「世界はみんなのためにある」というこの額の意味を、今の中国にあてはめると複雑な思いがする。
 中は、広々とした天井の高い演劇場になっていて、ちょうどコンサートがあるらしく、音響調整をしていたが、実にいい音がかもし出されている。正門を出たところに広州市の「愛国主義教育基地」という碑があったり、そのほかいろいろな装飾なども垣間見られたが、30分のスケジュールでは、まったく未消化状態だ。
 
■広州博物館の鎮海楼

 2000年を超える悠久たる歴史のある広州のシンボルだが、創建は明の時代の1380年。海賊の侵略に備えて建てられた5層の木造建築で、博物館は1929年に創設されている。

 1階は漢〜元、2階は明〜清、3階は清末〜民国初、4階は広州の風俗、5階は茶室と土産物店、テラスとなっていたようだが、ここもやはり駆け足で説明を聞きながらまわったので、鑑賞したり、歴史を考えたりする余裕はない。中庭には、アヘン戦争時代の大砲があるのだが、これも見る時間はなかった。隣にある建物へ移動すると、いろいろな民芸品が展示されており、それが、商品なのか展示物なのか、とにかく例の如く職員らしい服装の“売り子”がおり、商魂たくましい誘いの説明をなんとなく無視するそぶりに懸命だった。
 ただ、試飲で飲んだお茶はおいしかった。

 日本人相手の売り子さんたちは、「このお茶はメタボにいいですよ。」

 「メタボ!よう知ってるね。」

 みんなで顔を見合わせながら、日本の情報をしっかり生かす商魂に関心することしきり。
 そして、「お土産にどうぞ!」と上手な日本語でしっかり勧める。

■伝統中国医療で最古・最高の大学のひとつ、広州中医薬大学

 たまたま、車は広州中医薬大学前を通った。設立は1956年だが、中国伝統医療機関と広東省政府の両者で運営され、上海や北京などの中医薬大学とともに、最も古く設立され、敷地40万u、蔵書77万冊。第一・第二・基礎医療学部、薬学部、針灸学部、看護学部のほか、経営・社会・教育などの学部もあり、6つの病院、13の
研究機関などがある。学生は8千人を超える。

■田園風景を見ながら、高速道路を走って開平へ

 広州市をあとにして、乗り心地が決して良くない小型バスで12人と金さんを乗せて一路、開平市へ。

 高速道路だが、アスファルトではなく、コンクリートだろうか? 舗装の状態はよくない。窓からは、バナナ畑や野菜畑、田んぼ、点々と広がる池が目に入ってくるが、ガタガタ揺れる小型バスは居眠りのリズムを作ってくれているようだ。途中、GSでトイレ休憩中に、金さんがバナナや水を仕入れてきて、サービスの配給。

「楽しんでください。皆さんの喜ぶ顔を見るのが好きです」と気配りに余念がない。

 農薬混入のギョーザ事件や中国産への安全性の問題が国際的に問題なっているだけに、高速道路から見えた、畑で農薬散布している姿に、食事への一抹の不安もある。金さんは、飲みきれないほどの蒸留水をくれたが、荷物になるとはいえ、大事な水として、持ち歩いた。

■開平市内を流れる珠江の“半島”に立つ最高級ホテルと“郷土料理”? !

 そんなことを考えながら、地平線まで広がるような広い大地をぼんやり眺めているうちに、時差1時間遅れの現地時間夕方6時過ぎ、最初のホテル「潭江半島酒店」(EVER JOINT HOTEL)に着いた。
 34階建ての真新しい五つ★のデラックスクラスのホテルだ。
 部屋からは、潭江(Tanjiang)の流れと対岸の落ち着いた街並みが見える。

 夕食は、ツアー一行12人で円卓テーブルを囲んでの開平郷土料理。
 スポーツ関係の中国人たちや家族が遠慮のない会話をしながら、少々うるさいほど楽しく食事をしていた。

 最初に出てきたのは、アヒルの足とハチの巣、豚煮だ。
 1本600ml=38元(約500円)の地元のビール(珠江?酒)によく合う。“純生”のラベルに「釣魚台国賓館宴会用酒」とあった。「釣魚台」は北京にある、迎賓館。国家のお墨付きということか?

 最初の皿を一切れづつ、取っていくと最後の3人までハチの巣がまわらなかった。金さんに言うと、しばらくして、一皿追加された。金さんが、支配人に言ってくれたらしい。このアヒルの足、味はまぁまぁだが、あまり食べれるところがなく、実は、歯を痛めてしまった。これが旅の間、ずっと続くはめになった。

 次に運ばれてきたのは、トウモロコシを主にしたスープ。いい味している。そして、にんにくの芽とチンゲンサイ、里芋の炒め物。川魚や、水かきとわかるものまで入ったアヒル一羽全部使った料理、ビーフンの炒め物などが、そんなに濃くなく味付けし、それなりにおいしい。ご飯はタイ米でハスの葉でふかしたもので、香ばしい。最後に麺とデザート。
 確かに、郷土料理的だが、本場の広東料理なのか、わからない。

 食後、部屋へ向かう2階のショーケースを見ていたら、ホテルウーマンが電気をつけてくれた。乾しアワビや乾しキノコ(大花茹、ドライ・マッシュルーム)、乾しナマコ、狭心痛によいとされる田七(人参三七の根)、フカヒレ、高麗人参、鹿茸など高価な漢方薬が置かれていた。
 昨年、世界遺産に登録された開平市だけに、高級ホテルとしては外観もよく、ロビーや食堂、その他の施設は高級感?にあふれていて、ベッドの寝心地もいい。しかし、よくみると、建具の作りは雑さが目立つ。

■世界遺産登録の開平、そしてマカオへ【2日目】 
      
 朝6:30起床(現地時間)。7時から、朝食の広東風バイキング。やはりフルーツ類が多い。8時には、朝もやのかかるホテルを後にして、開平の世界遺産へ向かう。

 ●“古鎮悠悠”の「赤坎(Chikan)古鎮」へ。

 開平市内を車で数10分ほど乗ると、「商店街」(写真)と説明してくれたが、日曜日の早朝ということもあり、人通りはほとんどない。ときたま、食堂らしきところで、朝食を食べている風景に出くわす。着いた先は、開平市赤坎(ツーカン)。

 この辺は、赤坎鎮一帯を流れる潭江にかかる“下埠橋”を境に、堤東(東側)が「関」さん一族、堤西(西側)が「司徒」さん一族、と住み分けをしているという。バスは堤西路側に止め、影視城から堤東路を望む。写真左から2枚目の左の方に木の陰になっている塔は「司徒氏図書館」で(赤坎鎮下埠堤東路)、塔の上部に“時計塔”があるというが見えない。1925年、アメリカとカナダ、マカオなどで成功した華僑の司徒一族が建てた。地下1階地上3階建て。1926年に時計塔を増築した。現在の蔵書は約37,000冊。(赤坎鎮上埠堤西路には「關族図書館」があり、1931年、やはり海外で成功した華僑の関一族が建てた。蔵書は約22,000冊あるらしいが、現在は光裕中学校の一部になっている。)

 写真右から2枚目の左側にあるのが「居楼」で、3方を騎楼(民家)に囲まれてしまっているため、全容は見えない。橋から川に沿って欧陸風情街が異国情緒をかもし出している。

 ■華僑の豪邸「立園」

 立園(Li Yuan Garden)はアメリカ華僑・謝維立という個人が1920年代に造った庭園で、入場門をくぐると広々として、手入れが行き届いている。謝維立さんのセカンドハウスというが、中に入ってみると、開平市の世界遺産の写真などが展示され、5階建ての邸宅は、バスタブや洋式トイレ、釜戸、応接間、バルコニーや屋上など、贅沢な限りを尽くし、調度品もそのまま。
 バラが好きだったらしく、庭にはバラがいっぱい。銅像を囲むハートの造園は、寵愛した第2夫人からのプレゼントだという。邸宅の資材を運びこみ、交通の手段にもしていた運河もあり、華僑が海外での事業に大成功し、祖国でその贅沢ぶりを誇示した大邸宅・大庭園は、今の中国の異常な貧富の差、格差社会を象徴しているようでもある。
 昨年、訪れた厦門(アモイ)では、シンガポールのゴム園で大成功した「マラヤのゴム王」こと=陳嘉庚が毛沢東時代に資材を投じて、小学校から大学まで、また華僑博物院はじめ公共施設をつくったが、同じ華僑でも祖国の発展のために尽くした人もいる。

 ■「開平?楼と村落」

 のどかな田園風景を、ガタガタの未舗装の道を大きく揺られながら、ゆっくりゆっくりすすみ、ようやく着いたのが潭江支流の丘陵平原沿いにある自力村(開平市塘口鎮)。駐車場からは田園に囲まれた道を通っていくことになるが、入場券売り場もあり、粗末なゲートをくぐると、すぐに数え切れないほどのガチョウやアヒルが飼育されていた。
 田園風景を目にしながら、数100bほど歩いていくと、望楼が浮かび上がってきた。2007年6月「開平の望楼と集落」として世界遺産に登録されただけのことはある。いい眺めだ。いまは人は住んでいないが、周辺には農家の人たちがのんびりと暮しており、ニワトリを飼い、なかには烏骨鶏もおり、40〜50年前の日本の農村風景を見ているようだ。

 ●たい楼〔diao lou〕とは?

 広東省開平市に1833棟が現存するという要塞風の建築物。
 多くは華僑によって清朝末期から民国時代にかけて建設された。防犯や洪水に備えた4〜5階建て。 西洋と中国の両方の様式が入り交ざった豪奢な建物が緑豊かな農村に無数にたたずむ。

 人口67.8万人に対し、開平出身の華僑が75万人、代表的な華僑の故郷でもある。海外で一旗揚げた華僑によって立派な?楼が次々と建設されていった。

 開平?楼の主な分布は「塘口」「赤坎」「百合」「蜆岡」の4つの鎮となる。?楼は主のいない廃墟となっているものも多く、現在、開平市の旅游資源開発中心等で 観光客向けに管理、整備されているところは 「自力村」、「立園」、「赤坎」、「馬降龍」等となっている。

 ●たい楼は何のために作られた?

 たい楼の主な役割は、当時横行していた盗賊から財産を守ること、頻繁に起こる洪水対策、もちろん住居としての機能、さらには頻発する学生、教員の誘拐に対応するため、学校としても利用されていた。また、当時誘拐の対象は殆どが男性であったため、男性のみ宿泊できる施設としても存在した。

 ●たい楼の構造

 殆どの?楼は低いものでも3階建て、主流は4〜5階建てで、最も高いもので9階建てとなっている。 コンクリートの分厚い壁(厚み1メートルに達するものもある)に、窓には銃弾を弾く鉄の扉が取り付けられている。それと同時に、入口部分やバルコニー部分には銃口を差し込む射撃口があり、ここから敵を迎え撃った。襲撃や洪水に備えて、各階に台所があり、1ヶ月ほどであれば立てこもることも可能だという。最上階には祭壇が設けられ、先祖が祭られている。
 開平?楼の材料であるコンクリートや鉄は、華僑がその財力のままに外国から輸入したものが殆どで、国内の材料を使用するにしても良質なものを使用していた。

 たい楼の主は、その財力を誇示するために、内部はもとより外壁にも豪華な装飾を用いた。これでは逆に盗賊に狙われやすいのではないかという矛盾が発生するが、何よりも
 まず虚栄心を優先させているところはさすがである。上部の外壁は主の好みによって、中国伝統様式、バロック式、ローマ式、ギリシャ式など、宮殿を模したような贅沢な装飾が施された。

 外壁の装飾に限らず、窓の数も財力を示す指標
となる。窓が多いとなると、それを補う為の相当
な軍備や余裕がある、すなわち、財力があると
いうことを示すからである。(ガイドブックより) 
     
■100`離れた経済特区=珠海市を経て澳門(マカオ)へ

 未舗装のガタガタ道を再び通って、高速道路に入り、一路マカオへ。
 「世界遺産になって、急に道路整備が進められ、計画では昨年末に出来上がると言っていたのに、全く進んでいない。いつ完成するのか、さっぱりわからない。」とぼやく金さん。
 日曜日なのに、男女入り混じってあちこちで、日雇い人夫風に道路工事をしていた。
  
 田園風景が続く高速道路を走っていく間、また金さんがぼやく。

 「いま、中国では軽油が不足していて、ガソリンスタンドでも給油できるかどうかわからない。」

 現に最初のGSでは、給油できず、2回目にようやく、量的に制限されて給油することができた。
 日本でもこの4月にガソリンが値下げになったが、道路への特定財源の確保のための税率などの期限切れによるもので、基本的には原油価格の高騰の影響が気になる。そして再び5月には一挙に1?×20〜30円ほど再び値上げされる。これに加え、化石燃料に代わるバイオ燃料の導入による穀物価格の高騰や世界的マネーゲームによって、世界中の、特に開発途上国などでの生活物資の高騰、物価の高騰は深刻だ。

 そんなことを考えながら、車が100`ほど走った後、マカオに接する経済特区の珠海市に着いた。ここで、昼食。
 敷地の広いレストラン(鴻軒「大宅門」)で、また円卓を囲む。ボラ風の魚の煮物、ガイドブックによれば、どうも“ハタの蒸し物(清蒸東星斑) ”みたいだ。それに“干扁四季荳”(インゲン豆の炒め物)とエビチリ、青菜の炒め物、またまたアヒルの足を12人で取り合って食べた。そういえば、高速道路から見える田園風景には、たくさんの池があり、アヒルが飼われていたが、アヒルに関しては需要と供給のバランスが取れているようだ。それにしても、このアヒルの料理にはビールが似合う。珠江?酒 “純生”を頼んだのは、私だけだった。蒸し暑いので、のどごしもいい。

■経済特区、樹海市の「拱北口岸」でイミグレ、マカオ入り

 マカオに入るには、「拱北口岸」(GONGBEI PORT) でイミグレ(通関手続き)が必要だ。日曜ということもあったのか、混雑していた。ガイドさんは、金さんから、マカオへのイミグレだけを担当する人に代わり、その後マカオ側で待っていた女性のガイド“東・リリーさん”に代わる。日本人と結婚しているというリリーさんは、マカオ人だ。リリーさんによると、ギャンブルや買い物などで中国本土からの往来が年々、多くなっている。
 一行のなかでただ一人、65歳超の人がいて、中国でのイミグレでは、老人は優遇され、ガイドさんが別の通路へ案内していった。誰かがいった。

「日本とはえらい違いやな!後期高齢者制度とかで、お年寄りを冷たく別扱いしているけど、これが当たり前やわな」

「そうや、そうや」。

この4月から実施された、日本でのお年寄
りを隔離する差別的な後期高齢医療制度への
怒りは、大きい。

■マカオの世界遺産めぐり

 息つく間もなく、2日目の最後の行程、マカオの世界遺産めぐりへ。
 最初は、マカオのシンボルといわれる聖ポール天主堂跡。ものすごい観光客だ。

「17世紀初頭、イエズス会宣教師によって建てられ、聖母教会と呼ばれる東洋一の壮大な建築美を誇っていた。建設には日本からも幕府の弾圧を逃れたキリシタンが加わった。1835年に火災で今の正面の壁(ファサード)と階段だけが残っている。」とガイドブックに載っているが、同じような内容だが、壁面の様々な像の説明やエピソードを語るガイドさんの話はうまい。中に入ると、当時の絵画や銀食器などの調度品が展示され、ここで亡くなった日本人も日本語で銘板に記されていた。

 ●【カジノあれこれ…収益UPでマカオ市民全員に8万香港ドルのプレゼント】

 博物館風の天主堂から外へ出ると、次に人気が少ない天主堂の脇に案内された。そこには、当時の古い壁が残され、それも世界遺産となっていて、横には道教の祭壇がある。宗教が混在し、いまも生かされているのは、平和の象徴か?
 ここからはファサードを後ろから見ることになるが、その先にどうしても目に入る建物、マカオ中に権威を誇示しているような変わった建物がある。「ニュー・リスボア・ホテル」だ。所有者はスタンフォード氏。100年前からマカオのカジノを一人で独占していた人物だ。1999年の返還後の2002年、6人にカジノのライセンスが与えられ、スタンフォードのカジノ独占に終止符を打たれた。今日ではラスベガス・スタイルのカジノ方式が採用され、大繁盛するようになった。

 ●マカオ市民は無税のうえに…

 マカオは、人口52万人で、95%が中国系。カジノは24時間営業で3交代制。ディーラーはすべてマカオ人だけで、繁盛し続けるカジノでのディーラーの需要が増え、他の職業は人で不足だという。その穴埋めに、中国本土やフィリピン、タイなどから8万人が就業。ちなみに、カジノのディーラーの給料は、日本円で25万〜30万円という。
 カジノでの収益が1日10億香港ドルもあり、“People’s Daily Online”によると、経済成長率は今年、13%に達する見込みで、アジア太平洋地域におけるコンベンション産業の成長が最も著しい都市となっている。それが関連業界の収益を9倍に引き伸ばし、ホテル業、飲食業、商業、娯楽業などを発展させ、経済成長を促すという。
 こうした観光・レジャー産業などで潤ってきたマカオ市民は、もともと無税であるが、このうえ、最近の渦巻くカジノ景気により、7月から、特別行政区政府はマカオ市民1人当たり8万香港ドルをプレゼントする。4日前に発表されたそうだ。マカオ市民のリリーさんは「何に使おうかな」と贅沢な悩みをかかえている。

 ●【ポルトガル風のコロニアル建築様式にみとれ、マカオタワーへ】

 天主堂をあとにして、次へ行ったのは、商店街(覃草地街Rua da Palha)
を抜けて、「聖ドミニク教会」(?瑰堂St Dominic Church)、そしてセナド広場へ。
 「聖ドミニク教会」のなかへ入ると、正面に聖母マリア像がまつられている荘厳な教会らしい雰囲気に少し圧倒された。そこを出ると、教会の前の小さな広場で、反政府運動の展示をしていたが、内容からすると右翼っぽい。マカオも、香港も反体制批判は比較的自由に行われている。一方、街中に北京オリンピックの垂れ幕やら、看板やらが目立つ。
 セナド広場へ出ると、噴水のまわりをコロニアル風の建物が取り囲む。「民政總署」と書かれた建物は、最高行政機関、つまり市役所みたいなところで、ポルトガル風のコロニアル様式の建築として名高いそうだ。

 このあと、高さ338mのマカオ・タワーへ移動。マカオ市内や中国本土の街並みまではっきり見えるという展望台まで高速エレベーターで行ったが、どんよりした雲に覆われた天気なので、視界は悪い。こういう天気は多いという。展望台からは、バンジージャンプや空中を歩くアトラクション(スカイウォーク)があり、窓の外を命綱をつけて女性含む数人が恐るおそる歩いている。ちょうど日本人がバンジーに挑戦するところだった。足元はガラス張りで300m下が見えるが、勇気あるジャンプに拍手喝采。一方、300m下が見えるガラス張りの床は、そこに立っても安全だとはいえ、じっと立って下を見るのに、勇気がいる。妻は下を見ずに、「ほら、渡れるよ」といって、ガラスの上を渡ってきた。
 そのあと、ぺンニャ教会へ行き、マカオタワーや夕暮れ時の東シナ海(珠江河口)とマカオ市内などを眺めたあと、夕食場所のRIO HOTELへと向かった。

■“一攫千金?”を夢見て、はじめて、カジノでギャンブルの挑戦!

 Rio Hotel & Casinoでの夕食は、ポルトガル料理。12人の一行ははじめて、円卓から各人の料理となった。メインディッシュは「鶏肉」or「魚」を選ぶ。妻は「鶏肉」で、私は「魚」。料理はサラダ、スープ、メインディッシュ、デザートのコース。メインディッシュは大皿にスパゲッティが添えてあり、少し辛味のスパイスが効いていて、おいしい。「魚」はどうも舌ヒラメらしい。そんなに変った料理でもないが、ボトルで注文したポルトガルワインはコクと酸味がおいしさをかもしだしていた。半分ほど残したものをテイクアウト。あとで、部屋でもういちど堪能した。
 一行は、申込時にマカオ・香港でのホテルのランクアップ(1人4,000円up×2日)を選択することになっているが、選んだのは私たちを含め2組だけだった。マカオでは、ランクアップ組は、Rio Hotelとなる。
 マカオで最も評判の良いホテルの1つだといわれ、イタリアの宮殿を模した造りは外観、内装ともにゴージャス。ホテル内の本格的な日本料理「飯田」は地元でも人気が高い。
       
 夕食後のOPで、ベネチアンホテルのカジノ&ショッピングモール観光があったが、Rio Hotelでそのまま残り、しばし休憩し、ここでカジノへ挑戦することにした。その前に、周辺を散策。昼とは違って、雰囲気は一挙に歓楽街的に様相が変わる。“押”という看板がいたるところにあり、日本でいえば“質屋”になる。店には、ブランドもんの時計などが並ぶ。通りには、海産物や南国のフルーツなどの店、宝石店も多くあり、ところどころに客引きの女性が見え隠れする。

 ホテルに帰ったあと、ボディガード付きの金属探知器のゲート=セキュリティをくぐると、カジノの中を自由に歩ける。
 中国本土から来ているらしい何人かのグループが、“バカラ”とかいうゲームに興じていた。チップの張り方などディーラーとの微妙な駆け引きややり方などを、しばし観戦。ルールはわからないわ、言葉も通じないんでは、ただ観戦するだけ。フロアーをもうひとつ上がるとホテルに泊まっているような客層になる。

 思い切ってルーレットに挑戦してみた。

 香港ドルで100HK$(約1,500円?)をチップに換えて、ひとゲームだけやってみたが、一回もあたりもせず、3回張っただけですぐに終わってしまった。スロットマシンもやってみたが、やり方がわからず、HK$100がHK$2のコイン2〜3枚だけになった。やはりずぶの素人ではだめだ。
 一攫千金の夢は、たちまちのうちに噛み砕かれてしまった。わずか、100や200HK$で夢を見れるわけがない。

■ジェットフォイルで、香港へ 【3日目】 
             
 朝のバイキングは、豪華なレストランで豊富な野菜やフルーツを堪能。
 7:30頃、ホテルから香港行きのジェットフォイル(高速船)に乗るため、マカオ埠頭へ。リリーさんは、ここで終わる。珠海からマカオへ、マカオから香港へ入るのに、すべて出入国カードとパスポートが必要だ。出入国カードや乗船の手配は、リリーさんが用意してくれている。
ジェットフォイルは香港島まで、所要時間55分。片道HK$138(平日)。香港―マカオ間には、ジェットフォイル以外に、世界唯一のヘリコプターの国際的便がある。満員のジェットフォイルが出発するや否や、ヘリコプター
の定期便がすでに一機やってきた。

 海は濁っているが、実はここは珠江口という河口になるという。マカオの周辺には、珠江から流れてくる泥がどんどん堆積し、それをサルベージして埋め立てに使い、マカオのかなりの部分がこうしてできているとリリーさんは言っていた。香港に近づくにつれ、確かに海の色が変わってきて、少し澄んできているようだ。
 実は昨夜、土砂降りの雨が降った。ホテルの窓を滝のように流れていたのだが、一行のほとんどは気がつかなったらしい。香港までは、雨上がりで全体的にどんよりしていた。

 香港島に近づくと標高554mあるビクトリア・ピークの山頂と林立する 高層ビルのてっぺんも雲に隠れて見えない。
 霧にむせぶはじめての香港に少しわくわくする。

 香港島の上環(Sheung Wan)のマカオ・フェリーターミナルから上陸。「信徳中心」のイミグレ通過後、香港でのガイド、許さんが待っていた。

■サンパン船で香港の水上生活を見る

 最初に連れていってくれたのは、「昔ながらの面影を残す香港有数のベッドタウン、香港仔(アバディーンAberdeen)」で、海上に浮かぶ水上生活者をサンパンという船で見学(15分)。サンパンを操るのは、地元のおばちゃん。操船しながら、一生けん命しゃべっているが、案内しているのだろうか、全く言葉がわからない。ちょうど12人でいっぱいのサンパンをたくみに操船し、停泊しているクルーザーの間を抜けると目に入ったのは、豪華けんらんの水上レストラン“JUNBO FLOATING RESTAURANT(ジャンボ・キングダム)”。その近くに、現在、数は減ったというが、海上で生活の場とする船が連なって浮かんでいる。洗濯物や台所まで見え、犬がねそべったり、のんびり釣りをしている人もいる。
 台風などが来たときは、どうするのだろうか?

■映画「慕情」のロケ地へ


 車は、映画「慕情」の舞台となったレパルス・ベイ(淺水灣)へ。
 豪華な別荘や高級マンションが並ぶ海岸線を走って行くが、

「これが人気の別荘で、だいたい日本円で15億円。安いところでも、5〜7億円。ジャッキー・チェンとか、亡くなったテレサ・テンの別荘もこの辺にある。」

 許さんは、車中で香港事情を説明してくれた。

「香港は、人口690万人。観光客は年間2,300万人。うち中国から800万人、日本からは100万人ほど。車は80%が日本製で、電気製品となると90%占める。ただし、Made in China。」

「労働者の給料はだいたい1万4千円。住宅
費が高く、収入の4割が家賃。6畳で5〜6万円。」

「別荘を持ち、メイドが5〜6人いる人もおり、香港での貧富の差は激しい。」などなど。

 レパルス・ベイの三日月のビーチなどで撮影された慕情は、バディ・アドラー監督の作品(1955)で、ウィリアム・ホールディンとジェニファー・ジョーンズが演じている。ビーチを素通りして、行った先は、漁師の守り神の天后廟はじめ、よろずの神たちが居並ぶ空間は、欧風リゾートのなかで、どちらが主なのかわからない。

■ビクトリア・ピークと、香港庶民の信仰のメッカ「黄大仙」へ

 3か所目は、ビクトリア・ピーク(太平山頂)だ。曲がりくねった道をバスが進むが、頂上付近は霧につつまれていて、香港のすばらしい眺めを目にすることはできなかった。

 車は、香港島から九龍へ。九龍へは地下専用道を通って行き、四川料理 “錦川樓(KAM CHUEN LAU RESTAURANT)”へ直行。そして、貴金属店へと案内されたあと、「香港庶民の信仰のメッカ、黄大仙」へ。
 線香をもってお供えし、手を合わせる人、人、人。信心深い人が実に多く、願い事や占い事などでたくさんの人で、境内はごった返ししていた。

 ●黄大仙廟は、もともとは1915年に広州で創建され、1921年現在の場所に移転。香港最大の寺院で、病気に効くとされる本尊には参拝者が絶えない。また、占いのメッカといわれ、境内で竹筒のおみくじを引いて、解説してもらう。手相、人相、風水などを占う。

 反政府宣伝活動やら、蚊の警告やらこの黄大仙廟の駐車場では、「反中共!」の看板と新聞配布などマイクを持って数人が宣伝していたが、許さんは車のなかで「新聞を受け取っていないですね?」と切り出した。
 以前、中国の国内からの観光客が何も知らずに受けとってしまい、バッグの中に入れたらしく、それが、イミグレでみつかり、「反政府行動」の理由で逮捕、2週間の拘禁、投獄されたという。北京五輪を控え、本土では「国家政権転覆扇動容疑」なる理由で、チベット問題にかかわる市民活動家らが逮捕されているらしい。

 香港が返還される際に、中国が約束した香港の行政長官などの直接選挙は、いまだ実施されていない。一方、香港経済は中国の企業や観光客がもたらすマネーで好景気になり、以前の失業率8%がいまでは4%を切っている。こうした経済事情が市民運動を鈍らせている面もあるのではないか。

 写真は、「駐車料金の告示」と「蚊の撲滅のよびかけ」

■関西のおばちゃんによる漫談風商品案内に拍手喝采

 黄大仙の次は、シルク民芸品店でのショッピングだが、ここの店員さんで日本人の、しかも関西出身のおばちゃんが漫談風の絶妙な商品紹介に、一行は拍手喝采。肌がよくなるシルクのタオルやテーブルかけを購入してしまった。
 さらに、別の免税店、GALLERIAへ案内されるが、実は高級ブランド品とほとんど見分けがつかないバッグや時計などを販売している“ヤミ免税店”を別に紹介してくれた。
 GALLERIAから歩いて5分ほどのビルに案内され、ここで、娘にLOUIS VUITTONのカバン2個4万2千円(実勢価格は数10万円)、私の時計CALTIER×1万3千円(同28〜34万円)とLOUIS VUITTONの定期入れを購入(1$=1.37円)。

 また、車中でガイドさんによる商品販売があり、疲労、胃痛、きず、やけど、花粉症などに効くという「百合油」(リリーオイル)というメンタムみたいなものを12個入り1ケース(HK$200)を買った。あとでホテルに帰った後、肩こりがひどいので、塗ってみると、意外と効果がありそうだ。帰国後、水虫にも効果を発揮し、肩こりやきりきず、神経痛、関節炎、歯痛、乗り物酔い、カゼなど、いろいろ効能が並べられている。実際、治療所でも使い、けっこう重宝がっている。香港人は普段からかばんなどに入れてフル活用しているらしい。
 いったん、ホテルへ行き、しばし休憩後、北京ダック付き北京料理“漢京樓(HON KING RESTAURANT)”へ。ここで、紹興酒を注文。

 ●百万jの夜景


 最後に、AVENUE OF STARSからSINPHONY OF LIGHTS(香港島の夜景)を彩るレーザー光線で光の饗宴に見とれ、海風に当たりながら、どこか心が和むような時間を過ごした。ただ、レーザー光線なので、花火が上がったりするイメージとかけ離れていて、少し物足りなさが残ってしまった。
 AVENUE OF STARSは海沿いのプロムナードで、ブルース・リーの像や、足元にはスターの手形がある。
SINPHONY OF LIGHTSは、毎晩8時より13分間繰り広げられる光と音のマルチメディアショー。ビルのネオンには、日本の大手企業がズラリ並んでいる。

 ●オープントップバスでの夜の繁華街見学

 そのまま、オープントップバス(OP)と女人街散策のコース。2階建てバスの屋根を取っ払って風を受けて走るオープンバスによる眺めは実に爽快だ。
 女人街は、子どもだましの夜店みたいなもので、バッタもん商品のオンパレード。場末には、地元の人のための市場があったが、すでに店じまいになっていた。  

 夜10時頃、L'HOTEL NINA ET KONVENTION CENTER(如心海景酒店、チェンワンTSUEN WAN)に到着。ホテルは、さすがランクアップしただけのことはあり、内装も、景色も高級感あふれ、最高の気分を満喫した。チェンワンは、九龍と香港国際空港の中間にあり、ホテルの窓から見えるのは、近水湾・釣魚湾。

■高速鉄道で、九龍〜広州。そして帰国【4日目】 
     
 朝食は、高速鉄道の始発駅「紅?火車站(HUNG HOM Stn.)」の近くにあるリーガル・カオルーン・ホテルで、お粥と点心。

 いよいよ、最後の旅である「九広鉄道直行列車」の「ホンハム駅」へ。
 ここで、少し時間があったのと、香港ドルを使い切ってしまおうと、構内の店で買い物。ちょうど、漢方薬店があったので、「五花茶」13$、「八珍湯」23$、「健胃霊芝湯」29$、「壮腰培元湯」29$、「降膽固醇湯」38$、日本製だが「求心油」35$、計167$分購入した(1$=17.5円ぐらいで3,000円足らず)。
 
 列車は、4人掛けゆったりした旅になった。香港から、深?に入ると大気汚染がひどくなるのがわかる。深?は、経済成長の著しい都市で、人口の平均年齢がなんと29歳。うち女性が8割を占めるという。農村部からの出稼ぎなのか、労働者の給料は、1万4千円。“女工哀史”を思い出す。
 しばらくすると、女性の鉄道職員が2人、ボトルに入った蒸留水を運んできて、配ってくれた。列車には、車内販売のシステムはないらしい。

●列車内では、妻がはじめて「旅のメモ」をとる。

「3泊4日の旅も終りを迎えている。
いまは、香港―広州、特急列車の中だ。昨夜は香港のイルミネーション夜景は確かにきれいで、ビーム光線あり、ビルのライトアップあり…。でも、もっときらびやかなものを想像していたが、少々物足りずといった感じ。
 チッチと二人、いやツアーの旅友達と話しながらの旅もなかなかいいもの!
 ところが、実は、ツアーからはずれて別行動をチッチが企んでおったのです。いつもの知らない街での電車のツアー?? 
 私はみんなと同じコースに行きたかったのだ。まぁー、それにはいろいろ事情もあり、不安もありで。(企みは、未遂に終わってしまった)
 オープントップバスはジェットコースター的で、とても風が気持ち良かった。香港というところは、どう表現したらいいのか、もちろん観光の街だが、裏も秘められた商売の街。偽物ブランドの買い物も、おもしろかったし、娘2人にカバンを買ったが喜ぶかな?
 いま、この列車では、2人のおじさんと同席し、楽しい旅となる。」

 「2人のおじさん」は実は、私より1つ年上と同い年の2人であった。お酒も、煙草も吸わない。優等生だ。
 列車は途中、「新界駅」といわれるところで、乗客の8割ほどが下車。広州までの道のりで、停車したのはここだけ。広州までは香港から1時間30分ほどで到着。
 空港までのガイドの包さんが迎えてくれた。

 ●空港までの車中、包さんは、中国事情を説明。

 「いま、中国は、貧富の差が激しく、雲南省では年収5,000円が普通。広州では、だいたい給料は10〜15万ほど。
 今年、広州には、日本からの観光客が、チベット問題なども影響して2〜3割減っている。背景には、国民のなかに、不平等や貧しさへの不満がつのっていて、党の幹部、役人などのなかには、金持からわいろも受け取ったり、それがチベット問題に端を発して、爆発しつつある。
 北京オリンピックもあり、政府は必死に抑えにかかっているが…。」

 空港のレストランで、飲茶の昼食をとり、広州空港をあとにした。

 ●老三届(ラオサンチェ)

 帰国後、「朝日新聞」(5月3日付)に中国のジャーナリスト(莫邦富氏)のコラムが載っていた。

 「文化大革命時代初期の3年間に中学、高校を卒業した人たちは“老三届(ラオサンチェ) ”と呼ばれた。それに対して、80年代生まれの若者を “80後”」と呼ぶ。
「若々しい、おしゃれ、高学歴、スマートといったイメージ」の「一人っ子で比較的裕福な環境にあり、欧米に心酔し、自由を謳歌する彼らは、共産党支配や伝統社会に不信の目を向け、政治よりも英語や金もうけに関心を持つ」。
しかし、「意外なことに欧米などで起きた聖火リレーに対する一連の妨害に対し、海外留学中の80後たちが、インターネットやユーチューブを通して、西側メディアの報道が偏見だと批判。聖火ランナーが通過する国や町に殺到」し、聖火の通過の護衛にあたった。
莫氏は、いう。
「(80後の)彼らこそが中国の政治改革に必要な土壌だ。やがて彼らは中国を変えるだろう。」

市場経済と社会主義経済を並行してすすむ新たな国家づくりには、まだまだ未知の世界がある。ただ、貧富の差を激しくしてしまった著しい経済成長と荒れ狂う環境破壊には、オリンピックが終わってからこそ、全力で手をつけなければ、取り返しのつかない結果を生み出すのではないか。                 <完>

 ●香港は、日本と同じようなバブルの崩壊を経験した。

香港政府・広報部長(林瑞麟)によれば、
「数年にわたって高率のインフレが続いた。90年代の5〜6年、2ケタのインフレを経験した。アジアの経済・金融危機の後、きわめて困難な調整の時期に入った。不動産の価格は50%下落。株式市場も半分以下。とくに1998年に厳しかった。株式市場の取引に政府としてはじめて介入(150億米ドル規模)。その後も、国際的投機集団とのたたかいは続いている。」という。
また、「97年の香港返還以来、北京政府は“一国二制度”を尊重。外交と軍事は北京が握っているが、香港の選挙、香港ドル・外為管理、WTOやAPECへの参加を認めている。“一国二制度”は順調に機能」している。デモと集会の自由がある。

 対談した不破哲三委員長は、次のようにコメントした。

「“一国二制度”は、互いに刺激しあい、学びあい、これが将来、新しい発展につながっていく。吸収しあう有機的な関係で、新しいものを生み出す可能性を秘めている。」(『日本共産党の東南アジア訪問』より)


急性の腰痛にNPA鍼法
2008年05月22日 (木)

急性の腰痛に“刺さない鍼”で即効

 「狐につままれたよう!魔法にかかったみたい?!」

 本人いわく、“ギックリ腰”という、33歳の女性のGさんがやってきた。

 「4日前の日曜日、公園で犬の散歩中、つまづいてコケた拍子に痛めて、近くの病院にもいったんやけど、30分ほど牽引された。でも、全然治らず、曲げたり、立ち上がったり、寝返りするときに痛くて…」

 脈を診ると、とくに弱いところがなく、普通の脈だが、舌診では舌質が淡でやや冷えがあるようだ。
 原因は、こけたときの左側の筋肉を痛めただけのようだが、腰のあたりが露出した服装であり、冷えも関係していると診る方が妥当のようだ。
 まずは、仰向きに寝てもらい、背骨の左側、脊柱起立筋にそった痛みなので、その辺を走る「太陽膀胱経」のツボである足の外果(外くるぶし)直下に圧痛があった。

 治療は腰ではなく、まず左外果にある「申脈」へ、18金の?鍼(ていしん)を20秒ほどあてる。次に、左手の小指の付け根外側にある「後谿」にも圧痛があり、同じようにした。

「鍼ですか?鍼は初めてです。全然痛くない。」

「そりゃそうでしょ。刺してないし、痛くなるはずがない!」

 Gさんは、中学生のころ、学校での予防注射で、針が折れるという事故にあった。体内に張り込んでしまい、そのまま病院へ行って、針をとってもらったそうだ。鍼(針)へのトラウマはその時以来という。

「針が怖くなるのも当たり前やな。でも、心配ないよ。うちでは、鍼は刺さずに治療するから。」 
「ハイ、裏返って。うつ伏せになれますか?」

 おそるおそる、体位をかえようとしているGさん。

「あれ?できる。痛みがまし?!」

 もちろん、完璧に痛みが取れていないので、背中の左側胸椎棘突起11番目の外方5〜6pのところにある「意舎」、その3p下の「志室」、さらに4〜5p下の腸骨稜下の「胞膏」、膝裏(膝窩)の「委中」にそれぞれ圧痛ヶ所に、亳鍼を使った刺さない皮膚接触鍼(NPA鍼法)をそれぞれ10数秒ほど施す。圧痛はなくなった。

 「ハイ、立ってみて!」

 「全然痛くない。あれ?狐につままれたみたい。不思議?!」
 帰る時も受付で「魔法にかかったみたい」とお礼を言って帰って行った。

 実は、足の「申脈」というツボは、経絡でいえば太陽膀胱経に属し、脊柱起立筋にそって2行線が走り、殿部から下肢の後ろ側、ふくらはぎを通って足の小指の先まで流れている。さらに、この膀胱経の別脈といわれ、奇経である「陽?(ようきょ)脈」を代表するツボ(宗穴)といわれ、この「申脈」から始まって、肩〜顔面・目を通って後頭部の「風池」に終わる。

 この「陽?脈(ようきょみゃく)」は、“陰が緩んで陽が引きつる”ときに使う経絡といわれている。膀胱経や胆経の病を即座に治す妙穴でもある。それに同じ太陽経の「後谿」を使うとなおのこと効果が上がる。

 「申脈」の主治は、「足のすねが痛んだり、長く立ったり座ったりできない、気が逆上する、頭痛、めまい」(石坂宗哲『鍼灸説約』)などであるが、リウマチや神経痛、捻挫に応用できる。目の疲れやしつこい肩こりにも、「後谿」「肩?(けんぐう)」と合わせて応用している。これに局所も合わせて行うと、目に見えて治効が良い。


女性に多い「微小循環狭心症」に鍼灸の効果
2008年05月24日 (土)

 「左肩が痛くて、時々左胸も痛くなる。動くと動悸もする。」

 という、典型的な「狭心痛」様患者さん(女性、82歳)。

 とにかく左肩の痛みがつらいという。
 自分でもたたいたり、お医者さんにもてもらっても、別に手当はなし。

 脈は、やはり心虚。左前腕にある「大陵」・「神門」、左肘内側の「少海」に、金のてい鍼(刺さない鍼)をあて10数秒軽刺激すると、胸の圧痛はほぼ消失。
 しかし、左胸部に圧痛があり、左「神蔵」に寸−0でNPA鍼法を行う。
 突然、肩甲骨のあたりに、ひびきがあった。
                                      ※ NPA鍼法(Not Pierced Acup.=刺さない鍼)

 「うわ―、ジーンときた。なんで、鍼は胸なのに、背中の方にひびくの?」

 聞くと、これで胸がスーッと軽くなったという。
 このあと、圧痛のある「公孫」に金のてい鍼で刺激を加えたあと、側臥位で左胸の「淵腋」と「心兪」にこれも金のてい鍼で刺激を加える。一応、左肩と後頭部に、肩こりケアのためのNPA鍼法をしたあと、肺兪〜心兪への棒灸を施して終了。
 
 全体として、息が吸いやすくなり、左肩の痛みが楽になった。

 2診目に、「先週の鍼がよう効ききました。ほんまに楽になりました」と喜んでくれた。

 「おそらく微小循環狭心痛といわれていて、更年期になるとなりやすい病気で、女性に多く、女性ホルモンがほとんど出なくなると、血管が拡張しにくくなる。とくに心臓にある先っちょの細い血管に現れやすく、心臓を動かす筋肉(心筋)に栄養と酸素が行き届きにくくなって現れる症状ですね。病院で検査しても、冠動脈が狭くなったりするのとちがって、見逃されがちで、異状なしといわれるでしょう。」と説明した。

 狭心痛は、軽重にかかわらず、慢性になるとよく左肩が痛くなる。心臓と左肩の痛みが脳での痛みの認識と一致しているためで、別に左肩に何らかの損傷があるというのはまれではないか。こういう症状の人はけっこう多く、鍼灸がよく適用する。ただし、的確に診察し、鑑別にも注意を要する。


肩こり、腰痛と保険制度
2008年06月02日 (月)

 「朝日新聞」が1日付、1面で「保険請求“ケガ3か所”突出…接骨・整骨院治療」の見出しで7段抜きの記事を出した。

 記事の内容は、“肩こりを「ねんざ」―「水増し横行」指摘も”とし、「柔道整復師の治療を受けた患者の2人に1人が3カ所以上のケガをしていたとして、健康保険の請求が行われていることが厚生労働省の調査でわかった」というもの。

 記事は、“「保険のきくマッサージ施設と勘違いしている利用者を、けが人として扱い、不正請求する柔整師が多いことをうかがわせる」との声が業界内からも出ている”という報道スタイルをとっている。この「業界」とは、柔整師会や同組合などの団体を指す。西日本、とくに大阪が「3カ所以上が保険請求に占める割合」でトップであり、「多い地域は、不正請求の割合が多いと推測せざるを得ない」と業界幹部の声として紹介。

 業界幹部に「不正請求の割合が多い」と語らせることで、「不正請求」よりも、その多い少ないという「不公平」を問題にし、業界幹部が暗に「不正請求」を肯定しているかのような表現をわざわざ言うだろうか?

 また、国保組合に、「首、肩、股関節の(3カ所の)ねんざで治療を受けた50代の女性に問い合わせたところ、単なる肩こりと判明。不正請求と知った女性は“マッサージが上手だと聞いて何度か利用したがもう行かない”」との声まで紹介し、「保険対象外の肩こりや腰痛をねんざと偽って不正請求」、「1カ所のケガを3カ所で請求したりすると、患者には不正とわかりにくい」と指摘する。

 さらに、「柔整師にかかった患者の治療費は、開業医の皮膚科、産婦人科を上回る」として、「マッサージのような行為に公的保険が使われているなら、一番の被害者は保険料を払う国民だ」という近大医学部の教授(整形外科)の声も紹介。

 マッサージは、りっぱな治療行為ではないか!病医院は、肩こりや腰痛に対して、場合によっては、とても効果のあるマッサージをしてくれるのだろうか?

 問題にすべきは、国民の医療費を安く抑え、効果のある治療であって、なにが国民にとって望ましい医療なのか、その制度のあり方も問いつめるべきではないか?
 こうした報道は、肩こりや腰痛に悩む患者の声を誰が、どう受け止め、そしてそうした声に応えようとする柔整師や整骨院の医療行為(マッサージも重要な治療方法)に誤解を与えかねない報道になっている。

 肩こりや腰痛という症状をなんとかしてほしいという患者は非常に多く、それを実際に改善、解消してくれる整骨院(接骨院)が、どういう役割を果たしているか、あらためて考える機会を与えてくれている。
 以下、当院の見解を紹介する。

 患者様 各位

 (1)肩こりや腰痛には、多くの人が悩んでいます。その解消は、健康的で、快適な日常生活を送る上で欠かせ   ません。
    原因として、事務的労働や肉体労働、パソコンや台所仕事などからくる筋肉疲労もあれば、冷えやストレ    ス、内蔵疾患が原因で生じる場合もあります。肩や腰以外の部位でのなんらかの損傷や体のゆがみなどと   の関連もみなければなりません。

 (2)治療には、生活習慣の見直しや運動なども大切ですが、疲労した筋肉などをマッサージでもみほぐしたり、   電気などを使ったさまざまな物理療法や鍼灸などを使って、患者一人ひとりにあった方法を選び治療に当た   ります。肩や腰を見るだけでなく、全身を調整することも不可欠です。運動療法には、ウォーキングはじめヨ    ガや気功、太極拳なども効果を上げているようです。
    こうした点も踏まえて、当院では、肩こりや腰痛などの解消にお役に立てられるよう、誠心誠意努めていま   す。

 (3)柔道整復師による整骨院(接骨院)では、保険扱いができる診療科目は、ねんざ、打撲、肉離れ(挫傷)、骨   折、脱臼となっています。
    また、鍼灸師が保険扱いできる疾患名は、医師の同意を前提に、@腰痛、A五十肩、B神経痛、C肩腕    症候群、D頚椎捻挫後遺症、Eリウマチの6疾患となっています。

 (4)しかし、日本古来の柔道整復や鍼灸は、実に多くの疾患に対応してきました。いま、世界では、専門的医療   と自然・伝統療法とを統合した治療が大きな流れになりつつあります。しかも、自然・伝統療法は病気の治    療や予防などに効果をあげているだけでなく、医療費を低く抑えることに一役買っています。

 (5)これまで日本社会を支えてきた高齢者へのひどい仕打ちと隔離を図る「後期高齢者医療制度」に見られる   ように、日本における医療制度・保険制度はますます悪くなる一方です。
    こうした事情を考慮しても、肩こりや腰痛、その他のさまざまな痛みや症状に対応することと、現実の保険    扱いとの間に、考え方によっては多少のずれが生じる可能性もあります。したがって、患者さまには実費治    療か、保険治療かを選択していただくことになります。保険の場合、窓口負担は、現行制度の通りです。
 
   以上の点を踏まえ、事情をご理解していただき、治療を行いますので、ご了承ください。

           2008年6月1日  さとう鍼灸整骨院 院長 佐藤 妙子 / 佐藤鍼灸院 院長 佐藤 啓二


逆子が治った
2008年07月09日 (水)

「逆子治療をしてほしい」と鍼灸の予約をしていた、尼崎市のYさんを治療したのは、先週の木曜日(7月3日)だった。

 予定日は8月8日。35週目に入っている。もうすぐ臨月。確かに、お腹の胎児は、頭が上でお尻が真下にある。当院のホームページを見て、最後の望みにかけてみると、1時間半かけて尼崎からやってきた。

 脈診では、確かに滑脈だが、左寸口の脈(心)だけが沈めるように押すと弱い。ストレスがあるのか、やや寝不足なのか。
 Yさんは、3日前まで仕事をしていて、産休がようやく取れたいう。

 治療は、まず、金のてい鍼で心身ともにリラックスできるように調整し、その後、逆子治療のセオリー通りのお灸をした。
 婦人科疾患の代表的なツボである「三陰交」に、マジックで印を付けて、自宅で千年灸をするよう、千年灸を5日分もって帰ってもらった。
 毎日、治療が必要なので、近くにある尼崎鍼灸センターを紹介して、お灸をしてもらうことにした。

 5日後の8日(火)、Kさんから電話がかかってきた。

 「今日、産科の検診で逆子が治っているといわれて…」。

 「えー、ほんと!良かった。一回目の治療でおなかが緩み、赤ちゃんもよう動いてたもんね。」

 「はい。」

 「産気付くまで、三陰交へのお灸をしてね。安産に効くから」

 と、お互い喜び合って電話を切った。

再び、逆子(骨盤位)が治った2例
2008年12月01日 (月)

 33週目(12月19日出産予定)に入った逆子のFさん(30才)が11月4日に来院されたのに続いて、11日には31週目(1月上旬出産予定)の逆子のNさん(34才)が来院。

 Fさんははじめての出産。

 「帝王切開をしたくないので、最後の望みをかけて、インターネットで調べて来ました。」

 「逆子治療は、いまからが勝負ですよ。最後まであきらめずにがんばりましょうか。」

 Fさんは下肢に少しむくみがある程度で、母体はいたって健康そのもの。
 胎児の頭はおへそのやや左上ほどに位置し、左下腹部をよく蹴ったり、胎児も元気いっぱい、よく動いている。

 本院まで車で来院されたので、近くの志紀分院へ毎日通うようにしてもらった。徒歩で10分ちょっとなので、毎日のウォーキングのメニューに加えるのにちょうどいい。

 自宅で「三陰交」穴に“千年灸”をしてもらう(途中、下腹部の「関元」穴を追加)。

 お灸は「三陰交」と「至陰」に9分灸を毎日続けた。志紀分院では下肢のむくみのマッサージも行っていた。
 しかし、2週間ほど続けても変化した様子はなく、お灸も腰のほうの「命門」穴(腰椎3番と4番の棘突起間)も加え(20壮ほど)た。

 いよいよ帝王切開の日取りを決める日(22日)だった。
 かかりつけの産科医に、「治ってるよ」といわれた。
 やった!!。

 いっぽう、Nさんの方は、11日から初めて、2回の治療で治った。早い!。

 2人目の出産ということもあったが、軽い自己免疫疾患(SLE)の病歴もあり、そのうえ喘息持ちだ。また腰痛もあったので、お灸だけでなく、刺さない鍼治療(NPA鍼法)も行って体調を整える治療もあわせて行っていた。

 Fさんには、以下のような「患者さまの声」を寄せていただいた。

 「みなさん本当に親身になって治療して頂いてくださり、安心して通うことができました。
 イロイロな治療法も提案して頂いて、とても嬉しかったです。そのお陰で効果が出たのだと思います。」(12月4日)


診断・治療に必要な「整体」とは?
2008年10月19日 (日)

 当院での診察や治療には、西洋医学はもちろん、東洋医学的な考えも取り入れている。

 ある症状・痛みなどの局所の病変を診る場合、そこだけにとどめないで、生体全体との関連や外的な環境(季節や気候、生活や仕事など)との関連で把握するように努めている。

 五臓六腑はそれぞれ異なった生理機能を持ちつつ、互いに関連し、影響し合っており、五官、形体、色、脈などに現れる変化を通して、内臓病変を把握する。

 腰の痛みが足のある部分と関連した痛みとして診察したりするのも、体表と内臓、頭から足先までつながった筋肉や骨格など全体との関連を把握して、治療に当たる。

 いわゆる、体全体を流れる経絡を通して結びついており、病変は経穴(ツボ)などに現れる。

 古代中国で発展し、体系化された東洋医学の特徴は、

 @「人体を一つの有機的な整体」

 A「人と自然界・社会との統一性」

としてとらえることにある。

 自然の変化や社会生活が、直接的あるいは間接的に人体に影響を及ぼすのである。
 人体の生理活動や病理変化を知ることは、西洋医学的な知識も必要であり、そして自然の変化や社会の状態などを熟知することも必要になってくる。
 「整体」の意味は、ここにある。


救命講習会と鍼灸の対処法
2008年10月05日 (日)

 「ア!人が倒れている…。」

 いざという時のための「救命講習会」が10月5日(日)、八尾民主商工会で行われた。

 八尾消防署(栄署)の協力を得て民商共済委員会が開催したもので、朝からの雨の中、弊社からは13人、全体で43名が参加し、10時〜13時の3時間、講習を受けた。

 八尾市では、救急車の出動が143,000件ほど(昨年度)で、1日平均39件、37分に1件の割だという。

 「八尾市には救急車が5台しかなく、もし講習会中に5台出動しなければならない状況になると、4人中1人だけ置いて、出動となります。」などとの署員の説明の後、ビデオによる「応急手当講習」を受け、その後、心肺停止状態の人への、救急車がくるまでの対処の仕方を実際に各人が行った。

 声をかける→呼吸の有無を確かめる(呼吸なし)→まず、助けを求め、「早い通報(119番)」と電気ショックを与えるAED(自動体外式除細動器)を探してもらう→人工呼吸→胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせを繰り返す→AED到着→電気ショックの要・不要→胸骨圧迫・人工呼吸の再開⇔AED…。救急車がくるまで、胸骨圧迫などを続ける。

 決定的に大事な胸骨圧迫は、参加者の、とくに女性にとってけっこうきつく、「ハアー、ハアー」いいながらの処置に、「ウワァー、思ったよりしんどいな!」と、救命処置の大変さを実感していた。

 疑問や質問を出し合い、ていねいに受け答えしてもらいながら、ひとり一人、真剣に救命処置(心肺蘇生法など)を署員の指導のもとに一通り行うことができた。

 講習後、八尾市消防本部から、「普通救命講習修了証」(カード)が手渡された。カードには、「普通救命講習Tを修了し、救命技能を有することを認定する」と書かれていた。

 当院では、これまで軽い脳梗塞状態や癲癇様症状、呼吸促拍・嘔吐・冷や汗などの症状に何度か対処してきた。また、救急車も要請したこともある。心肺停止状態はなかったが、医療・介護施設に働くものとして、救命救急への対処は必要だ。

 ちなみに、鍼を使った救急措置は、「ショック」「熱中症」「溺水」「けいれん」「失神」などに対処できる。



“痔には、ボラ…でなく、鍼灸が良い”
2008年10月29日 (水)

 痔の疾患に、鍼灸が効くことはあまり知られていないようだ。

 もちろん、痔疾患には、いろいろあって、鍼灸が効かないものもある。だから、鑑別は必要。

 先日、重だるい腰痛と激しい生理痛などで通院されている患者さん(40代の女性)から、
 痔について聞かれた。

 「便から出血があって、大腸ガンの採便検査では、大丈夫だったんです。
 たぶん痔やないかと思うんですけど、
 先生、痔は泌尿器科ですか?」

 「泌尿器科ではないと思うけど、大きい病院とかには、肛門科があるね。胃腸内科でもいけると思うけど…。
 ひどい出血なの?」

 「便のあと、拭くときにトイレットペーパーにたまに鮮血が付くときがあります。」

 「大便時に、痛みは?」

 「ないです。」

 「それやったら、切れ痔やね。
 鍼灸でよくなると思うよ。
 以前に、ぼたぼたと出血している内痔核による痔を治したことがあるけど、排便後に少量の出血が特徴の切れ痔やったら、比較的簡単。
 直腸癌やったら、初期には粘液が混じったり、便意をもよおしたり、排便以外にも出血するから区別できる。」

 治療は、とりあえず、右手前腕にある「孔最」(こうさい)穴と頭のてっぺんにある「百会」(ひやくえ)穴という痔疾患の特効穴に鍼をし、円錐状の金粒を「孔最」穴にに貼付したうえで、しばらく様子を見ることにした。

 改善されなければ、尾底骨の上(仙骨下端)にある「中?(りょう)」穴と腰部にある「大腸兪」穴、出血が多ければ足の脛骨にある「足三里」穴の下の「上巨虚」(じょうこきょ)穴などに置鍼していくことになる。

 お灸も併用するが、内果の上方にある「復溜」穴にもお灸する。

 古くから、鍼よりも灸のほうがむしろ効果があるようだ。

 もともと、痔とは東洋医学の病名だった。
 古代中国の医書『黄帝内経』(こうていだいけい)などから始まって、7世紀に中国で書かれた『諸病源候論』には、12種類の痔疾患について記してある。

 そこには、瘡(そう)を生じて出血する状態の裂肛のことを「牝痔(でんじ)」と記してある。
 「酒痔」というのもあり、痔を誘発するアルコールの飲みすぎによるものだろう。

 最近、ウォシュレットが普及しているので、排便後の清潔感によって、痔疾患は少なくなっているようだ。
 まずは、肛門を清潔に保つこと。

 次に、大敵は便秘。便が硬くなると、痔核を傷つけてしまう。繊維性の食べ物をよく摂ること。
 もちろん、出血症状があれば、禁酒も必要。

 また、立ち仕事・座りっぱなしの仕事などの日常の動作にも気を配ることも必要だ。

 最近、直腸ガンも増えているようなので、とにかく、恥ずかしがらずに、
 痔の症状や出血症状などがあるならば、気軽に相談してほしい。






子どもの近視治療に効果あり
2008年12月09日 (火)

 小学校4年生のユウタ君に近視治療を行った。
 学校では、パソコンクラブに入っている。TVゲームなどはやらない。

 お母さんによれば、視力は0.1〜0.2ほどというが、はっきりしない。

 そこで、治療前にいくつかの大きさの字(ひらがな)を見てもらった。
 確かに、目を凝らして見ている。見えない字もある。

 目の周りの圧痛点などを探ると、右目に集中。

 片方づつ、字を見てもらうと右目のほうがぼやけて見える。

 治療は鍼といっても、金でできた「てい鍼」(※1)を使うから、痛くも痒くもない。むしろ心地よさがある。

 はじめての鍼に最初、ビビっていたが、例によって左の「労宮」穴に圧痛があり、てい鍼で軽く触れると痛みが消えるので、びっくり、そして安心。あとは、おまかせだ。

  圧痛点の経絡に対応する足の2箇所のツボ(※2)と、右目の圧痛点(※3)、眉毛の内端(「攅竹(さんちく)」穴)と目の外側のツボ(「太陽」穴)を軽く刺激した。
 うつ伏せになって、後頭部にある2か所のツボ(「風池(ふうち)」穴)にも同じように刺激し、圧痛がなくなる。
 時々、第6胸椎外方(2行線)の「いき(意喜に両語とも言べん)」に反応が出るので、刺激すると痛みが消える。

 治療後、読めなかった字が読める(見える)ようになったのでお母さんがびっくり。

 自宅でも目の周りと後頭部のツボのマッサージを行うと効果があり、そのやり方を教えた。
 今後、週1回程度の治療をしばらく続けてみることにした。どれぐらいまで回復するか楽しみだ。

 余談だが、当院に通う同じ4年生女子のしおりちゃんも、ひどい「肩こり」があり、同じようなてい鍼も使ったNPA鍼法で治療をしている。
 ユウタ君と相談して、夏休みの「自由研究」のテーマに、「さとう先生の不思議なハリ」にするという。

  (※1)てい鍼とは、刺さずに皮膚に接触させるだけの鍼。
  (※2)右の第2指爪甲根部小指側にある「児[(れいだ)」穴と第4中足指節関節の前にある「侠谿(きょうけ     い)」穴。
  (※3)「承泣(しょうきゅう)」穴と「球後(きゅうご)」穴。

 【追記】その後の視力の経過

 その日によって視力が変わり、左右差も出たりする。

 12月に視力検査表を入手した。週一回の治療前後に検査した結果が下記の通りだ。

 その日によって視力が変わり、左右差も出たりするが4ヶ月で、0.1が0.6まで回復した。

●12月25日(木)
    治療前 治療後
     右0.1 → 0.3
     左0.1 → 0.3
●1月13日(火)
     右0.1 → 0.3
     左0.2 → 0.3
●1月20日(火)
     右0.2 → 0.4
     左0.2 → 0.4
●1月27日(火) 
     右0.4 → 0.4
     左0.2 → 0.4
●2月10日(火) 
     右0.3 → 0.5
     左0.3 → 0.5
●2月17日(火) 
     右0.3 → 0.6
     左0.2 → 0.5
この日の結果に、ユウタ君、“やった”のガッツポーズが出た。
●3月10日(火) 
     右0.5 → 0.6
     左0.5 → 0.6

 いつも、治療所には、宿題を持ち込んでいる。その宿題を片付けてから、近視治療にはいる。

■4月28日(火)
     右0.6 → 0.8
     左0.6 → 0.7

 5年生になって、地域のソフトボールチームでは、守備がセンターとなった。
 遠くを見るようになり、またゲームも控えているという。

※視力検査の距離を2.5m→3.5m、1m遠くした。
 学校の視力検査で、右眼がB、左眼がAという判定だった。去年は両眼ともBだったので、確かによくなっている。

●5月26日(火)
     右0.5 → 0.6
     左0.4 → 0.6

だいたい、これが視力回復の限度かもしれない?!

 【追記】子供の視力低下はなぜ?

 子どもの視力低下が増えている。

 原因は、遺伝的な要因もあるが、何より子どもを取り巻く環境の変化が大きい。

 第一に、小学校高学年になると塾や勉強が増える。

 第二に、外遊びができず、部屋の中でのゲーム遊び。

 第三に、「見る力」の低下。

 とくに、視力は心の健康とも関係(「眼心身症」)があり、眼科的には問題がないのに黒板の字が見えなかったりする心の原因で「見る力」が低下する。外で思いっきり遊べない、塾や勉強のストレスによるが多くなっている。

 近くを見る状態が続くと、目がそれに適応して遠いところが見えにくくなる。
 近視を防ぐには、ゲームやテレビなどは30分〜1時間に5〜10分は休み、遠くを見るようにする。

 近視や眼心身症でも、点眼薬や鍼灸治療などである程度は改善できる。


タミフルか?梅酒か? エッ、鍼灸
                                                     2009年2月15日
 年末(27日)に、受験目前の娘(20歳)が突然、40度近い熱を出した。土曜日の朝だった。
 午前中仕事だったので、午後に市民病院に連れて行って、検査してもらったら、インフルエンザA型だった。

 女医さんは「お年寄りなら、迷わずタミフルを処方しますが、感冒薬にしますか? それともタミフルにしますか? 受験ということもあり、タミフルを処方した方がいいのではないか」といわれた。

 病院では、10代の患者には、異常行動との関連も危惧されるため、原則として使用しないことになっている。

 基本的には、タミフルは使いたくないので、感冒薬にしてほしい旨伝えた。万が一、悪化した場合あるいは長びいた場合のことを考え、タミフルも処方してもらうことにした。
 原則として、両方の処方はできないといわれたが、服用する場合はどちらかにし、絶対に両方同時に服用しないことを約束して、女医さんに無理を聞いていただいた。

 娘は、梅入りのお粥やハチミツ入り生姜湯を飲んだり、ニンニクのオリーブ焼きなどで、体力をつけながら、汗を大量にかかせて4日間で何とか治った。
 この間、高熱はさがったあと、微熱が続いていたので、感冒薬を3回だけ服用した。

 「刺絡」という、指の先の爪の根元付近から微量の血を出す、古来から伝わる鍼灸術(井穴刺絡)も行った。

 インフルエンザは、熱が下がってから、48時間は外へ出てはいけないので、熱が下がって2日後の大晦日に予備校へ行った。

 その後、娘は風邪もひかず、元気に受験を乗り切って、医学部入学へのパスポートを手に入れた。

                          (左上に続く)
 いま、タミフル耐性ウィルスが世界中で流行しているという。
 今季流行しているのは、インフルエンザAソ連型で、そのうち耐性をもつタイプが9割以上を占めている。結局、タミフルが効かないということだ。

 お年寄りなどの感染には、治療薬は欠かせないと思うが、基本的には、免疫力や体力をつける日頃の養生こそ、最大の治療薬となる。そして、伝統医学が見直されているのもうなずける。
  

【漢方薬の梅(烏梅)】

 漢方では「烏梅(うばい)」といい、仁(核)とともに使用する。核を除いたものは烏梅肉という。

 慢性の咳や下痢、腹痛によく使われる。
 方剤には、回虫による腹痛や嘔吐に、黄連や蜀椒(胡椒)などといっしょに使用される「烏梅丸」などがある。
 また、強火で表面が黒く焦げるまで炒ったものを「烏梅炭」といい、下血や血尿、性器出血などに使用される。
 ただ、烏梅は「酸収の性質が強いため、外感の咳嗽・実熱積滞には用いない」(『中医臨床のための中薬学』)とある。

ガンと向き合う鍼灸治療
2009年03月01日 (日)

 ガンに対して、鍼灸治療はどういう効果があるのだろうか?

 現在、さまざまな癌患者さんと鍼灸治療で向き合っている。

 【その1】

 病気でリタイアした元女医さんは、長い間の献身的な医療活動でC型肝炎ウィルスに感染、肝炎を発症した。さらに肝硬変を患い、そして肝ガンへと発展していった。
 一度、電流でガン細胞を焼く「ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」を行ったが、ガンは完全になくなっていない。
 現在、肝機能不全の症状に対する投薬治療を行っているが、合わせて、鍼灸治療も行っている。

 全身のかゆみや筋肉のけいれん、ひきつり、便秘や下痢症状などに対し、それなりに鍼灸は有効なようだ。

 【その2】

 5年ほど前に大腸ガンの摘出手術した60歳代のYさん(女性)は昨年、肺への転移が認められた。
 Yさんは、担当医に会うたびに勧められている抗癌剤の使用を拒み、自らの免疫細胞を増殖させ、体内に注入する「活性化自己リンパ球療法(免疫療法)」を行っている。

 ガンによる症状は、自覚されないが、筋肉や関節の痛みの緩和のために鍼灸治療を行っている。
 痛みの改善などはストレスの解消につながり、心身ともに鍼灸による免疫力アップの効果に期待をしている。

 【その3】

 昨年、胃がんが発見され、5分の3ほど摘出した I さん(70歳代の男性)は、肝臓への転移が認められている。
 現在、抗癌剤(TS-1)を投与しているが、術後の鎮痛や体力回復などととあわせて、癌の進行を抑える効果を期待して鍼灸治療を行っている。

 鍼灸治療でどこまで癌とのたたかいを援助できるかわからないが、少なくとも、さまざまな鎮痛効果や癒しの効果によって、心身ともに病気を克服するそれなりの力になっていることだけは確かなようだ。

 ※ 胃がんの I さん、残念ながら、5月10日に亡くなった。
 GWに、どうしても行きたい所があるというので、医師と相談した上、生存期間の延長か、後悔なき人生を送るか重大な選択を迫られた。結局、一度でいいから行ってみたかった弟さんのいる隠岐の島へ2泊3日の旅を選択した。強行軍だったと思う。この旅がご家族といっしょに過ごした最後のひとときとなった。


【追記】09年8月2日

 “米国のがん患者の60%が何らかの代替医療を活用”しているという。

 これは、世界メディアにニュースを配信する米国のアソシエイテッドプレス(Associated Press)が6月8日付で、報道したもの。
 記事では、危険性を伴う代替医療があり問題化しているとしつつ、症状改善の効果を持つと期待されているとして、取り上げられているのは、鍼治療やマッサージ治療。特に、ストレスの減少、痛み、吐き気、口渇、ほてりなどの改善に効果が期待でき、多くの著名ながん専門家たちから支持を受けていると紹介。

 (“60pct of cancer patients try nontraditional med”The Associated Press - Jun 8,2009)
                                                                                                                                          (藤庵)


新しい時代の医療=鍼灸でがんに挑戦
2009年06月14日 (日)

 「医科学としての鍼灸医療、その確立に向けて――新しい時代の医療として期待される鍼灸」と題した(社)全日本鍼灸学会の第58回学術大会が6月12日〜14日、埼玉県大宮市で開催された。

 興味を引いたのは、そこで行われた「癌と鍼灸」パネルディスカッション4。

治癒不可能と言われてきた末期がんやアスベストによる「悪性胸膜中皮腫」でも、縮小、消失させることができた、という報告に、癌に対する鍼灸治療の認識を変えなければならないほどの強烈な印象を受けた。

 報告したのは、「自然免疫システムを活性化する新しいがん免疫治療法」を唱え、実践してきた真柄俊一先生。

 そもそも、癌と鍼灸をテーマにした学術大会は今回で3度目であり、化学療法などへの副作用の軽減など緩和ケアの有効性が種々、報告されてきた。もちろん確実なエビデンス(科学的根拠)とはいえないながらも、がん治療の一環としての鍼灸治療の有効性にも目を向けられてきた。

今回の報告は、

@癌患者に西洋医学とともに、鍼灸治療を行い、自己修復力を高めることなどをいくつかの“裏技”を使った臨床例をあげて報告された防衛医科大学校の黒川胤臣先生

A余命〇〇年と告げられた患者の延命を可能にしたお灸の効能についての森ノ宮医療大学の中村辰三先生

B埼玉医科大学病院におけるがん患者に対する鍼治療の現状についての報告

などなどで、いづれも、大変有意義だった。

 しかし、真柄先生の“抗がん剤や放射線を使わずに、がんの転移・再発は防げる”という1500人以上の患者さんとの“協働治癒”とでもいうべき臨床例に、がん治療への新たな可能性を得ることができ、鍼灸の新たな挑戦に胸躍る思いがこみあげてきた。

 真柄先生は、この7月に最新の症例などをまとめた本を出版されるそうだが、とりあえず、先生の著書『がんを治す「仕組み」はあなたの体のなかにある――抗がん剤・放射線治療からの脱却』を読んでみた。
 具体的な症例はもとより、すでに「抗がん剤先進国」だったアメリカでの「抗がん剤敗北宣言」や西洋医学以上に代替医療の方に医療費がシフトしている現実などにふれた部分は驚嘆に値する。そして、東洋医学の位置づけや“病人を診るより、病気への対処”に熱心な分子レベルの高度医療に傾いている日本の医療制度はこのままでいいのか、との思いがつのる。

 ところで、学術大会への参加の動機は、東洋医学と西洋医学が相補関係にあり、多くの臨床例がある埼玉医科大学からの症例報告などに興味をもち、鍼灸治療が現代医療のなかでどう位置付けられているのか、また今後どう位置付けられていくべきかを、探るために、妻(柔道整復師)とともに参加した。

 全国の医大は82校あり、確か、2002年から、漢方医学が必須になった。そのうち、漢方医学(「漢方薬」)の授業ではなく、「東洋医学」を授業に取り入れているのは、11校だと聞いている。

 実は、漢方など東洋医学への興味を持ちながら、東洋医学がほとんど医学教育のなかに位置づけられていない医科大学に今年、娘が入学した。
 いくつかの大学に合格しながら、わざわざ、東洋医学が「軽視」されている(あるいは医学の対象として扱われていない?!)大学を選んだのは、自宅通学や医学校としての伝統(西洋医学中心)、学生・教官の気質などからだった。

 医科大学での位置づけがどうあれ、東洋医学を身につけていくには、その人の興味と自らの勉強によると割り切らざるを得ない、日本の医学教育レベルが問題なのだと考えてしまう。

 とはいえ、パネルディスカッション3「専門医から見た鍼灸医療」や「リウマチ・膠原病に対する漢方治療」などでも取り上げられた埼玉医科大学のように、東西医学をともに認めあっているケースにいかに学ぶか、その答えや方向性が見えてきた。
                                                                    (藤庵)


久宝寺中学校1年生のみなさん! ありがとう。

 毎年、中学校で1年生の将来の進路などを考える機会にと、“職業講話”が行われている。

 そのために、何度か、授業が行われてきた。

 3月6日(金)の昼に実施された“職業講話”は、
消防士や介護ヘルパー、お笑いタレント、焼き鳥屋、
サラリーマン、整体師、そして鍼灸整骨院経営の
私を入れて、8人の社会人が“講話”に参加された。

 事前に、生徒たちが聞きたい講話(2つ)をアンケートで答え、
人数のばらつきがないように微調整されながら、
それぞれ、8ヶ所に分かれて、
2コマ×1時間のサイクルで講話(約30分)に耳を傾け、質問などを行った。

 そして、3月10日、4クラスで、それぞれ感想文を書いてもらったようだ。
 しかも、お礼の意を込めた手紙の書き方の勉強をかねて。

 みんなからいただいた感想文は、下段に掲載。

          


 話の中で、友達の関係で「借金の保証人にはならないように」という、
この日の『読売』新聞のコラムを紹介した。

 北京オリンピック柔道金メダリストの石井慧選手が語った
母校の中高生たちに贈った言葉として紹介されていたものだ。

 石井選手の口から、期待していただろう言葉は、
「夢をあきらめないで…」などと普通思うだろうが、
「友達の借金の保証人にはならない」みたいなことを言ったという。

 どういう意味で言ったのかは、さだかではないが、
私なりに、この言葉の持つ意味を、
「友達は利用したり、されたりする関係であってはならない」
ととった。

 私自身の経験として、進路を決めたり、将来の夢を持ってそれに向かうときなどに、
心から励ましあう友達ほど、大切なものはないとの実感から、紹介したのだった。

※ 質問は、10近くあった。

 ・「1日お客さん(患者さんのこと)は、何人ぐらいか?」
 ・「(治療中に)骨を折ったことはあるか?」
 ・「痛いツボはどこか?」
 ・「いま、一番気をつけていることは何か?」
 ・「私みたいに、アホでも、専門学校に行けるか?」

 などなど。



久中の“職業体験” (2009年11月)
 久宝寺中学校が2年生を対象に毎年行っている「職業体験」、いわゆる“ワンディ・ワーキング”。
 今年は11月10日〜11日の2日間、男女2名の生徒が来た。

 本人の希望などで、市内のいろんな職種を選び、2日間の職業体験を行うというもので、今回の2人は、当院の
患者。治療所だけでなく、午後の休診中は、隣のディサービスのお手伝いもしてもらった。

 学校の先生がそれぞれ、職業体験の現場を巡回しているらしく、2日目にやってきた担当の先生は、ついでに
指圧マッサージの治療を受けることになった。施術後に、試しに2人の生徒に先生の指圧マッサージの体験もし
てもらった。

 以下、生徒からの感想文を紹介する。

2009年11月10〜11日

久宝寺中学校の「職業体験」レポート(新聞)です
2010年11月11〜12日



いろいろ役立つドクダミの葉っぱの効能
2009年5月17日
 咳や痰、でんぼの治療にドクダミ

 ドクダミの花が咲き始めた。
 生薬として使う場合、この開花期の全草を採取する。

 水洗後に、葉っぱが萎えるまで陽乾し、さらに陰乾しする。

 昨年、肩背痛などの治療をしているHRさん(70歳代の女性)が肺膿腫に似た症状で、咳と痰に悩まされていた。
 こびりくような、まとわりつくような痰がなかなか切れず、排出できず、夜中も咳や痰に悩まされていた。

 そこで、取り置きの乾燥させたドクダミの葉を煎じて飲んでもらった。

 同時に、肺・気管支の働きを強め、咳止め、痰切りの鍼灸治療もした。
 虚弱な体質もあり、鍼は刺さず触れるだけのNPA鍼法やてい鍼、お灸も9分灸で行った。

 鍼灸の治療中に、よく黄色い粘っこい痰が出たが、煎じたドクダミ茶を飲んでもらってから、症状はほぼ1週間で治まった。
 
 それまで、病院から、痰切りや咳止めの薬を処方してもらっていたが、いっこうに効かなかっただけに、あらためて、鍼灸とドクダミの効能に互いにびっくり、とても喜んでくれた。
     
 ドクダミは、「馬に用いて、10種類の薬の効能があった」ことから“十薬”といわれる。

 中国では、魚腥草といわれ、これに桔梗を加えた漢方薬として、肺炎や肺膿腫、いろんな腫れ物などに使われる。

 同じ時期に、肩に3cmほどの“でんぼ”、腫れ物ができて、痛がっていたHさん(70歳代、男性)に、生のドクダミの葉っぱを採ってきて、水洗い後に少し揉んで、葉っぱを2〜3枚重ね、患部に貼ってあげた。2〜3日後に、膿が出てきて、1週間ほどで痛みも取れ、快方に向かった。

 やっぱり、ドクダミはこの開花期に採取しておくべきだ。効能を考えると、臭いのは我慢が必要だが…。

                                (藤庵)



ゴキブリほいほい?が視力を奪う!
2009年06月17日 (水)

 以前、小学生の近視治療を行い、視力回復の経過を書いた(08年2月9日)。

 そのなかで、近年なぜ、子供の視力が低下しているのか、ゲームや塾通いの増加など子どもを取り巻く環境の変化など、いくつか記した。

 ところが、環境の変化といっても、まさか「ごきぶりほいほい」など(正確にいうと、有機リン系の)殺虫剤が影響しているとは、驚きだ。
 
 指摘したのは、日体大名誉教授・体育学者の正木健雄先生。

 『学校保健統計調査報告書』から、1974年以降に中学生以上で「視力不良」が増加し、6歳以上では、79年、80年と「視力不良」が一時的に増えていることを指摘。

 その原因を調べてみると、79年、80年の「視力不良」の原因に殺虫剤が浮かび上がってきた。

 つまり、1979年にゴキブリがたくさん出現したため、「ゴキブリほいほい」では間に合わず、「缶入り殺虫剤」が出回り、次第にその毒性を強めていった。
 この殺虫剤が「視力不良」に影響を与えたという。

 殺虫剤には、有機リン系のものと、「除虫菊」のエキスを取り出したピレスロイド系のものがある。どちらも「神経毒」と言われ、神経繊維と神経細胞をつなぐシナプスで出る「コリンエステラーゼ」を破壊する働きがあるという。

 こうした「有機リン系などの殺虫剤」による「視力不良」は神経眼科の専門家たちが動物実験ですでに探り当てていたというし、殺虫剤を多く使った地域にも多発していたという。
 (以上、『しんぶん赤旗』09年6月17日付より)

 有機リン系の殺虫剤で思い出すのは、オーム真理教のサリン事件だが、身近なものには、シロアリ駆除剤や防ダニ加工などによく使われており、アレルギーやアトピーを悪化させる原因にもなっている。
 
 視力の回復も、身の回りの環境をできるだけ、自然のものに変えていくこととあわせて、自然と一体となった治療がもっと注目されていい。
                                                                   (藤庵)


“流行”の美容鍼灸はNPAで…
2009年07月22日 (水)

 いま、鍼灸界では、美容鍼灸が流行のようだ。
 あちこちの鍼灸専門学校などでは、“人集めの宣伝文句”にもなっている。

 美容鍼灸は、確かに肥満の改善はじめ、顔面のシワヤシミを少なくしたり、若々しいつやのある肌づくりに一役買うことが出来る。
 全身の健康状態を把握し、からだのバランスを調整していくことなどは、まず一番大事なアプローチになる。

 肥満の改善には、何よりもストレス解消や食事のとり方など生活習慣の見直しが基本となるが、便秘の解消、尿や汗などの体液のスムーズな流れ(滞りの解消)を作り出していくのに、鍼灸治療は優れた効果を発揮できる。これは、つやのある肌づくりや若々しいからだづくりの基本にもなる。

 当院では、以上のような基本的な治療のうえに、巷で流行の“耳ツボダイエット”で使われている耳ツボをツボ探索機を使用して、食欲抑制の効果を期待した金粒を貼付する治療も行っている。
 ただし、高価なサプリメントなどの“押し売り”や高額な費用負担などはしていない。

 また、顔面のシワ・シミとりまではいかないまでも、せめて目鼻立ちをすっきりさせるための鍼治療も行っている。

 ところで、美容鍼灸をしている、あるいは学校等でのやり方は、一番細い鍼(1寸の0番タイプ=鍼の太さφ0.14mm)を顔面にある20〜30数ヶ所のツボに、2〜3ミリの刺入を行い、10〜20分ほど置鍼するのが普通だが、当院では、刺さない鍼(NPA鍼法)で対応している。

 ところで最近、ジストニーという中枢神経の不随運動による筋肉の運動障害を持った患者さんが、2年ぶりに来院された。両方の眼瞼(がんけん)に現れる局所性のジストニーで、瞼(まぶた)が開けにくく、痙攣(けいれん)を起こしている。とくに、左の鼻筋に沿ったところと頚(くび)筋に寝違い様の痛みが出たので、来られた。
 他に、右顔面神経麻痺と診断された患者さんも来ていて、同じように眼瞼の痙攣や瞼を開けにくいなどの症状がある。
 共通しているのは、お二人ともボツリヌス菌を使ったボトックス注射の治療を年2〜3回ほど受けている。

 実は、この眼瞼の症状には、NPA鍼法が大変効果があり、瞼が軽くなり、すっきりするので、喜ばれている。

 要するに、健康な人でも、目の疲れをとったり、目鼻立ちをすっくりさせるのに、十分効果がある。
 最初、鍼の経験のない人などは、目のまわりに鍼をするなど、怖さが先に立ってしまうようだが、小学生でも、近視治療を好んでしているぐらいだから、全く心配は要らない。それどころか、とにかく治療後が気持ちよく、すっきりすることだけは確かだ。

 シワ・シミには、バラの花のハチミツ漬けがいいという。バラの花を水分を減らす程度に天日にさらし、ハチミツに2週間ほど漬け込む。水で薄めて常飲するといい。バラはうっ血の改善に役立ち、ハチミツは腸の善玉菌を増やし、免疫力を高めることで有名だ。抗がん作用や抗菌作用もある。


肺ガン→リンパへ転移、治療は自然治癒力を活かして
2009年9月9日 (水)


 癌の再発と予防に、自然療法で

 抗がん剤に対する疑問から、自然治癒力を活かして、ガンの再発・転移を予防したいと8月4日、Tさん(男、56歳)が当院を訪ねてきた。

 Tさんは、検査で肺がんが見つかり、右肺の上(上葉)3分の1を切除(07年10月)し、抗がん剤治療を1年半行った。この間、リンパ幹に転移(9o)しているといわれ、08年2月から2ヶ月間放射線治療を行った。1カ月に30回の放射線の照射を受けている。

 今年の4月、MRI検査で脳と肺には転移を認められないと出た。また、リンパ幹(節?)に転移した腫瘍は「大きくもならず、小さくもなっていないので、様子を見よう」(YT病院担当医)ということで、4月に中止した。思い当たるような副作用は出なかったという。

 3ヶ月後の7月末の検査で、腫瘍マーカーの値(CEA)が10.1と上がり、リンパ球が25%にさがってきているため、当院のインターネットを見て、抗がん剤に頼らず、鍼灸で自然治癒力を生かしながらの治療を希望。
 主訴は、手と足首に朝こわばりがあるが、あとは、身体の痛みもなく、体調も悪くないという。脈診では、肺と肝の気が弱いため、?鍼で気を補う治療をしたあと、10本の指先に刺絡療法を施した。
この1回の治療で効果が出たとは思われないが、8月12日の検査ではCEAが6.5まで下がり、リンパ球は32%まで上がった。

 その後、週1回同じような治療を続けているが、

 8月26日の検査では、CEA9.6、リンパ球25%、
 9月 9日の検査では、CEA8.6、リンパ球26%、という結果が出ている。

 CEAは、正常値が5.0以下とされているが、自律神経などにも作用されたり、体調によって変動する。リンパ球は、数以上に、免疫力をもった活性化したリンパ球という質の問題が大事。そうした観点での検査はあるのだが…。

 Tさんは現在、休職中。生活習慣を肉食から、野菜・魚中心の食事に切り替え、メシマコブなど、免疫を高めるサプリメントを飲用、ウォーキングなど軽い運動も行っている。たばこはこれまで全く吸っておらず、酒も肺がんが見つかってからやめている。
抗がん剤や放射線治療に頼らず、「自律神経免疫療法」に詳しい『免疫革命(実践編)』や『がんを治す「仕組み」はあなたの体のなかにある』などの本を紹介、前著は八尾の図書館に置いてあって、早速読んだという。

 Tさんは、抗がん剤で体がぼろぼろになっている人をよくみかけているという。ぼろぼろになる治療より、どこまで生きれるかわからないが、自然治癒力を活かして、元気なままで治していけるという明るい展望と人生への前向きな姿勢こそが、何よりもガンを克服していく力になるのではないか。

 (09年9月9日、藤庵)

大腸がんから肺に転移
抗がん剤・放射線治療やめて、鍼灸など緩和療法へ
2009年09月23日 (水)


 直腸がんの手術を受け…

 2年前、インターネットで当院を探し当てて、軽い左五十肩の治療のために、寝屋川市から来院されていたTGさん(女性、61歳)が1年半後、直腸癌のために入院(08年9月)、腫瘍の周辺だけを摘出する経肛門手術を行い、抗がん剤と放射線治療を行った。

 今年(09年)の3月、両骨盤外側の痛み、後頸部・後頭部痛で半年ぶりに来院。そのとき、「右肺中葉に影が映っているといわれて、4月から治療する」とだけ聞いていた。詳しい話はなく、聞くこともなかった。

 7月、TGさんから、「先生、助けて!」と電話が入った。

 「肺に転移しているということで、5月から抗がん剤治療をしているけど、何も食べれないし、思うように体が動けない。7月30日から3回目の抗がん剤をどうしようか迷っている」と。

 私は、「そんなに身体がぼろぼろになっているのに、抗がん剤を続けるのは、よくない。まず、体力や免疫力をつけるような治療に変えた方がいい。」と、自律神経免疫療法なども紹介しながら、とりあえずアドバイスした。

 TGさんは、抗がん剤治療などで多額の医療費がかかり、医師から、生活保護を受けるようにいわれ、車も手放すことになって、身動きが取れない状態になっていた。

 なかなか行けなかったが、8月15日、TGさん宅へ往診に行くことができた。
 以下、そのとき聞いた少し詳しい経過はこうだ。

● 3回目の抗がん剤投与開始ということになっていた7月30日に、担当医が休みで別の医師に診てもらい、抗がん剤(アバスチン)をやめたい旨、告げたこと。

● その医師は、副作用の度合いから、緩和療法に切り替えるようにし、近くの病院を紹介、栄養剤の入った点滴を8月5日から毎日行うようになったこと。抗がん剤の影響を体内から排出するまで半年はかかるという。
8月14日〜16日が盆休みで、17日からN病院へ通うことになった。

● 7月中旬の検査で、肺の腫瘍は半分ほどになったこと。

● 現在、ようやく、お粥程度のものを食べれるようになったが、味覚がなくなり、「金属臭として感じる」こと。自分では塩加減などができず、もっぱらインスタントみそ汁を買ってきて、お粥とともに食べている。

● 直腸ガン手術後の抗がん剤をやめてから、便漏れがほとんどなくなっていたが、「肺転移」後の抗がん剤をしてから、ふたたび便漏れが続き、鎮痛薬を1日2回服用していること。
 手術後に体重が10sほど増えたが、現在は元に戻ったという。

 8月25日の検査では、腫瘍マーカーのCEAが1.6、AFP定量が4.4で正常値。白血球は6,480個。気になるのが、LDL-217と高く、腸内環境が良くない。

 刺さない鍼と刺絡療法

 脈診では、心虚・腎虚があり、その経絡に反応が出ている。治療は、直腸・肛門の痛みと便漏れがあり、百会に置鍼(20〜30分、寸−5番)以外、NPA鍼法と灸療法を座位で、週1回行っている。
 NPAは左右の照海に接触鍼(Co-A)、労宮と公孫に?鍼、左淵腋・肺兪・心兪・下?にNPA。9月19日は前日から嘔吐があり、右背部に圧痛、膈関・右陽鋼・右意舎にNPA。左内関・右内庭にCo-Aを加えた。

 灸点紙で、合谷・曲地・肺兪・下?に3〜4壮の施灸をしている。

 そして、自律神経免疫療法で使われている井穴刺絡を、10指にランセットを使って施術。

 ほかに、免疫を高めるために、66種の山野草・有用野菜と自然の有用菌52種で発酵させて作った「野草酵素」と、北海道で入手したカバノアナタケを煎じたものをお茶代わりに飲んでもらっている。
(09年9月20日、藤庵)

(09年9月20日、藤庵)

【がん患者2例
胃がんが消えた?! & 尿管・膀胱に癌?白血病?!

 胃がんが消えた?!

 3月の検査で胃がんの疑いがあったUTさん(51歳、女性)。6月に、手術の予定をしていたが、手術前の再検査で、腫瘍らしきものが見当たらず、手術は中止された。

 UTさん、「ずっと続けている鍼のおかげかなぁ!?」と。

 この間、耳ツボなども取り入れて、ダイエット治療で、その成果も見え始めている。もちろん、本人の食事など生活習慣の改善の影響は大きい。


 尿管・膀胱に癌?白血病?!

 7年前から、腰痛とふくらはぎ痛などで年数回通院していたKGさん(77歳、男性)が、2年ぶりにやってきた。

 「左の腰臀部から下腿外側にかけて痛みが出てた。これまでちょくちょく痛かったが、4〜5日前からひどくなって、歩きにくい。」という。

 聞くと、1年ほど前に右の尿管に「癌らしきもの」が見つかり、警察病院で右腎と右尿管の摘出手術を受けたという。そのとき、「血液凝固と白血球数が減っているのがわかり、「白血病」と診断され、2月〜5月の4ヶ月、逓信病院に入院、治療を受ける。

 退院後、白血病の薬として、ベサノイドカプセルを1クール2週間のスパンで、2回服用。もともと、狭心症があり、20年程前に心臓にバルーン手術を受けており、循環器系の薬が4種類、抗痛風・抗アレルギー・抗コレステロールなど、全部で9種類の薬が処方されている。

 当院へ来たのは、退院後1ヶ月経った6月だった。
 8月に、血尿が出るというので、MRIと膀胱内視鏡の検査で数個のポリープがあった。この間、医師の指示でベサノイドは中止。

 結局、膀胱のポリプは20数個あり、ほとんど内視鏡で摘出した。悪性の疑いもないとはいえないが、様子を見ることにした。

 難聴もあって、十分に医学的な会話ができないが、腰痛、下肢痛、難聴などの治療のほか、白血病や膀胱ポリープなどを想定した自律神経免疫療法としての刺絡療法も行っている。
                                                           (10月4日)


関西医大の懇談会で感じたこと
2009年10月18日 (日)

キンモクセイの並木道をくぐって行くと…

 関西医科大学の「全国懇談会」が10月18日、枚方市の牧野キャンパス(教養部)で行われた。医科大の1年生(今年度115名)の父母を対象にしたもので、入学後2回目になる。

 目的は、「学年クラスアドバイザー」というクラス担任の教授から、前期試験の成績や授業への出欠状況などが提示され、わずか5〜7分ほどの懇談で、“我が子”の近況を確認しあうというもの。親としては、進級が出来ずに留年となったら、高額な授業料がまた増えるということで頭を抱えなければならない問題でもある。

 大学側としては、全体会での説明で父母への寄付金を何とか集めたいとの思惑があるのだろうが…。

 構内の駐車場から、築80年ほどになる蔦の絡まる本館の脇を通って会場へ行くのだが、本館脇の道はキンモクセイの並木道になっている。入学式もここで行われたのだが、そのときは全く気づかなかった。50mほど続いているのか、花もにおいも真っ盛りのアーチは壮観だった。

 平安時代の美容や鍼灸

 さて、懇談までの間、順番がまわってくるまでの2時間ほど、図書館で暇をつぶしていた。医学関係はもちろん、自然科学や文学全集など一般教養に関するものが多数あった。
 しかし、東洋医学関係の本が極めて少ない。まして鍼灸関係など皆無に等しい。ただ、「医学史」の棚に、現存する日本最古の医学書である『医心方』があった。 

 『医心方』は平安時代に、典薬頭で“針博士”といわれる丹波康頼によって編纂(ほとんどが中国医書からの引用)され、宮廷に献上された。槇佐知子氏(日本医学史会会員、筑波技術短期大学講師)が1997年に訳注したもので、全30巻になる。

 注目を引いたのは、医学総論の第1巻(訳注はこれだけ未発刊?)に続き、第2巻が「鍼灸」に関するもので2分冊になっている。主に、経穴(ツボ)とその効用について記している。そして、第4巻は、「美容篇」だ。

 当時の「美容」の関心は、まず髪。次に、シミやソバカス、ニキビなど。
 例えば、清少納言は、『枕草子』で「うらやましげなもの」として、「髪がたいそう長くて美しく…」とある。
 その清少納言の父、清原元輔が賀茂祭の行列中、落馬した拍子に冠が落ちて、禿頭が燦然と輝いた話が『今昔物語』にあり、当時の王朝びとたちの髪の悩みにどう対処したか、長い髪が生えてくる養毛剤の処方などが紹介されている。

 また、卵を使ったニキビ治療などは現代の顔パックの原型で、今日でも有効である。

 秘伝の書『医心方』、世に出たと思ったら、排斥?

 『医心方』は、この「美容」の巻のほか「養生」など4巻以外はすべて鍼灸の記述がある。残念な事に、『医心方』が世に出たのは、幕末だった。そして、幕末以降は、西洋医学の前に、東洋医学が排斥されるという不幸な時代が続くことになった。

 昨今ようやく、漢方薬が医大で正科に取り入れられるようになったが、病気の治療や予防に有益な鍼灸は、一時は排斥の憂き目に合いながらも、日本に古来から伝わり、医術家たちの手で脈々と発展して来た伝統医療としての地位、そして臨床とは裏腹に、今日まだ「医療類似行為」的な扱いしか受けていない。欧米では、医師が病気の治療に鍼灸を活用している時代に、日本の医大図書館では、鍼灸の専門書すらないのである。








































      (10月21日、藤庵)


柿の葉とヘタの効能
2009年11月03日 (火)

 柿の葉は、高血圧症、動脈硬化症等、生活習慣病の予防に用いられてきた。

 柿の葉寿司などは大好物で、少しでも柿葉から血圧降下や動脈硬化の予防成分が滲みだしてきているのではないかと思いながら、時々だが買って食べる。

 薬用としては、咳止めや喉の痛み、ゼイゼイするのを止めたりする効果があり、止血作用もある。

 実際に使うのなら、柿葉を乾燥させたものをお茶代わりに服用する。葉っぱは6〜10月に採取し、2〜3日陰乾した後、蒸し、今度は陽乾する。若葉はとくにビタミンCが多く含む。
 カニと食べ合わせるのは、ダメ。

 また、柿のへたは、柿蔕(してい)という生薬で、しゃっくりを治す妙薬だ。主に渋柿を用いる。
 柿蔕10〜15個に、ひね生姜を少し入れて水600mlを、半分になるまで煎じる。


悪阻(つわり)に鍼灸が効いた!
2009年11月1日 (日)
妊娠8週目のOYさん(32歳)が来院したのは10月14日。

 吐き気と胸焼け、げっぷ、特に夕食前後がひどく、夜中にも症状が出るため、あまり眠れないし、良く口が渇くが水も飲みたくないなどなど。

 1人目はなかったが、2人目で妊娠4〜5週で症状が出た。体重が2kgほど減って、吐き気止めの薬も効かない。

 普通、悪阻は10週目ころから、慢性的な嘔吐を主訴とするが、少し早い。
 原因は、よく胃弱な人などに見受けられるが、精神的な要因が大きい。ちょうど、ご主人がアメリカへ1〜2ヶ月の出張とかさなり、心理的な不安感があるのだろうか。

 早期の悪阻は、鍼灸がよく効果をあげることができる。

 治療は、精神的な安定をはかり、吐き気・嘔吐を止め、食滞をなくすようにすること。また、伝統医学では、少陰腎経の病ともいわれている。確かに、脈診では、心・腎の気が弱い。

 初診は、復溜・陰谷・内関にハリを貼り付ける接触鍼(Co-A)、中かんに置鍼、労宮に?(てい)鍼。背部では霊台、肺兪、脾・胃兪、意舎、天柱、肩井、下あ門にNPA鍼法を行い、灸点紙を貼った上にお灸(9分灸)を、陰谷、中かん、霊台に行った。
 以下、嘔吐・吐き気を抑え、腎経を補う治療を続けることにした。

 2日後の2診目のあと調子が良く、その日は夕食を子どもに食べさせることができたが、4日目の日曜の夜に嘔吐した。
 10月23日に、産科へ行き、「胎盤が出来てるし、順調だ」といわれ、貧血もなく、調子が良くなっているのを実感。翌日、1ヶ月ぶりにご主人がいったん帰国(2週間ほどすると、また1ヶ月の外国出張、年内には帰国する)。
 10月30日の9診目には、夕食前後の吐き気が少しあるが、子どもに食事もやれるし、睡眠もとれているということで、久しぶりに実家から、マイホームに帰ることにした。

 1週間交代で、実母と義母で子どもの面倒を見てもらっているが、義母の体の調子が良くなく、はじめての鍼灸ということだが、診ることになった。むしろ、こちらの方が大変だ。隔日に治療をすることになった。
(11月1日、藤庵)


小児鍼で、よく寝てくれた赤ちゃん
2009年11月7日 (土)

 ずっしり重く、生後3ヶ月になろうとする夫馬君。

 夜、2時間おきぐらいにぐずり、なかなか寝てくれないということで、小児鍼をした。というより、スプーンを使って、自宅でできるように、ママに実演してあげた。

 腕や頭から背中にかけて、いわゆるスプーンタッチというやり方で軽くなでてあげるだけだが、今日はご機嫌がいいのか、よく笑っていた。

 便秘気味で、綿棒を使ってもあまりでないという。
 なるほど、抱っこして、少し“高い、高〜い”したりすると、喜んで笑ってくれるが、ミルクを吐き出すことしばしば。乳児の積滞だ。お腹をさするのも遠慮しがちにしていたらしく、腹部マッサージも実演して見せた。

 その夜、久しぶりに5時間寝てくれた。ママもほんとに久しぶりに睡眠を味わったという。

髪の毛が生えてきた!!
2010年12月23日 (木)
Befor 10ヵ月後 After
2010年1月3日撮影 2010年11月17日撮影 2012年2月20日撮影

15〜6年前から薄くなってきた頭のてっぺんあたりに、
半年前から髪の毛が生えてきた。

気に入らないことを言ったりすると、
妻や娘たちにたちまち「ハゲ親父!」攻撃を受けてきたが、
いまでは、はっきりと“ハゲの克服”に成功した。

妻には
「リーブ21(リアップ?)の頭髪コンテストに立候補したら、500万円もらえたのに!」
とぼやかれることもあった。

「成人意識調査(2003年)から推計すると、
薄毛を気に病む人は800万人。
なんらかの薄毛対処をしたことがある人500万人」
(「しんぶん赤旗」日曜版2009.12.13号)という。

記事には、大阪大学医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄付講座の
板見智教授自身が自ら実験して、
透けていた頭頂部の地肌が見えなくなるほど、
脱毛症治療の効果を写真入りで解説していた。

「よし!その治療薬を試してみよう」

と思い立って実行してみることにした。

インターネットで調べると、
“iDrugStore”のホームページの内容が
板見教授の説明と一致していたことと、
信頼できる情報を提示していたので、早速、注文してみた。

その薬とは、飲み薬のフィナステリドFinasteride(商品名:フィンペシアFinpecia)と
育毛剤として使われている塗り薬ミノキシジルMinoxidil(商品名:ロゲインRogaine)である。

板見教授によると、
「頭頂部の髪が薄くなるのに、後頭部はふさふさ、
ひげも濃いままで、長く謎だったが、
男性ホルモンは毛の根元にある乳頭細胞に作用するなど、
男性型脱毛症のメカニズムが解明され、
それに基づく新しい治療薬が登場した」という。
それが上記の治療薬である。

日本皮膚学会は2010年4月17日、
この治療薬を男性型脱毛症の診療指針で、
強く勧められる「推奨ランクA」として発表した。

フィナステリドは臨床試験で、
48週間投与した場合、発毛改善が58%、
2年後には68%、3年後には78%と割合が上昇。

ミノキシジルは、もともと血管拡張剤として高血圧治療に用いられていた経口薬で、
副作用として多毛症が多くみられたことにより、
それを育毛剤に研究開発され、
アメリカFDA(アメリカ食品医薬品局)が正式に認可した。

日本では、唯一大正製薬だけが販売権利を有し、
「リアップ」として販売し、育毛効果を上げているが、
アメリカ・ファイザー社「ロゲイン」の方が安価である。

価格は、フィンペシア1mg100錠で、2,300円。
1日1錠飲んでいるので、3ヶ月余使える。

ミノキシジル(ロゲイン)は、1本60mlで3,500円。
1日2回と書いてあるが、入浴時のシャンプー後に使うので、
1回だけにし、ほぼ1ヶ月使える。
計1ヶ月4,300円程度になる。

実は、フィンペシアは、日本では2005年に承認、販売されたが、
医師の処方が必要で、生活改善薬なので、
診療費・薬剤費とも自費、1ヶ月約1万円かかる。
それが、ネットで安く個人輸入できる。
購入量が制限されるが、何回かに分けて送られてくるので問題は無い。

毛が細く、地肌が広く禿げていた頭頂部の毛髪が
半年ほどで元気のいい、しっかりとした毛髪になり、
育毛と発毛の効果があらわれてきた。
そして、1年たった今、地肌の面積が小さくなり、毛髪に覆われるようになってきた。

iDrugStore社の説明には、
「フィンペシアはプロペシアのジェネリック医薬品で、
インドの第2の製薬会社シプラ社が開発。
コーティング用色素のキノリンイエローが使用されていない、
国際基準を満たしている、
専門調査会社の成分検査をしている」
などと書いてある。発送は香港から。

注意することは、いくつかある。

「キノリンイエロー」(Quinoline Yellow)は
発がん性の着色料で日本では使用禁止されている。
安く、古いものにはこれが使われているものがあるので、
しっかり確認することが必要だ。

また、フィンペシアには副作用としては、
「性欲減退や性機能障害をはじめとして、
他にも頻尿、胃部不快感、腹痛、頭痛などの症状が出る」人(4%)もある。
未成年や女性は服用禁止。

ミノキシジルは、内服薬と外用薬とでは副作用にちがいがあるというが、
体毛が濃くなったり、胸の動悸やめまい、頭痛などの症状が出たりした場合は使用禁止。
低血圧の人も服用はしない方がいい。

いまのところ、副作用は出ていない。

3年後の発毛78%めざして、
さらに2年続けてみようと思う。


2012.2.20

(藤庵)



2011年4月5日『朝日』より


災害鍼灸マッサージプロジェクトの記録 
2011年3月11日

東日本に大震災が襲った。

岩手・宮城・福島の海岸の町は

津波に飲み込まれてしまった。

宮城県の気仙沼は、重油タンクが

津波に襲われ、街が燃えていた。

(写真は、翌12日付「朝日」より)
「日本プライマリケア連合学会」(PCAT=ピーキャット)の要請で、
被災地・気仙沼へ「鍼灸マッサージボランティア」に参加。

5月3日〜8日
5月2日夜9時、大阪を発つ。
「チーム佐藤」は5人。
3日朝、福島・磐梯山SA(上)。
朝10時45分、気仙沼中学校に到着
「チーム佐藤」は避難所の気仙沼小学校体育館で鍼灸ボランティア開始
医師・看護師・保健師たちによる「健康支援調査」と連携し、鍼灸マッサージを受け持つ。
3日午後4時、診療が終わり、12人のメンバー全員集合。ミーティング後、市内の被災現場を視察。
気仙沼小学校体育館に確保されたテントで5日まで診療を行う。
気仙沼中学校に1人派遣、その後市民会館もあわせ、6日間でのべ131人(男65人、女66人)を診療。マッサージのみは58人、はりとマッサージが73人だった。
6〜8日はメンバーは2人で、
市民会館談話室で診療を行う。
市民会館前の寄せ書き。 市民会館前の自衛隊のお風呂
「玄界の湯」(九州方面の自衛隊だった。)
3日、小学校グランドで凧揚げ大会

カウンターまで津波が押し寄せた
というラーメン屋さん。
4月29日にオープンしたばかり。

昼食は3日間、おにぎり持込で
あっさりラーメンに舌鼓を打つ。

息子さんは、なんと大阪・八尾市で働いていた。
      森は海の恋人

気仙沼の豊かな海は、森を育てることで、育まれてきた。

震災に遭い、全滅したカキ養殖者の1人は、今年も、山に植樹をされるそうだ。

















“心までは壊れない”

全壊した家の再建に向け、

ガンダムが守ってくれていた。

PCATが手配してくれた岩手県藤沢町の農家民宿「観楽楼」に5泊しながら、毎日30km先の気仙沼へ通った。
「観楽楼」のご主人が自宅(民宿)の裏山に、40年かけてつくった“桃源郷”。
「岩手日日新聞」などで報道されると、連日、県内外から花見客が来ていたという。

もちろん、被災者の方も、ひとときの癒しに訪れるという。

さくら、やまもも、すいせん、れんぎょう、しゃくなげ、にりんそう…。
いっせいに花たちが咲きだした。

最終日の8日、早朝にワラビ取りに連れていってくれた。
藤沢町では毎夏、盆前に「縄文の炎〜藤沢野焼祭」が行われる。縄文時代の陶芸”野焼き”を再現し、その作品は自らの手で作り、自らの手で焼くといった参加者自らが演出する祭り。参加作品数は全国から集まり1,000点を超える。野焼の火は 一晩中燃え続け、翌朝には幻想的な陶芸作品を生み出す。
野焼きの作品を玄関前に飾っているのをよく見かけるが、下の作品は「観楽楼」のご主人がつくったもの。テーマは、「宇宙人」と…?。


鍼灸ボランティア 詳細編
2011年05月29日 (日)
宮城県気仙沼市へは車で13時間余り、3日午前11時過ぎに到着。

気仙沼小学校のグランドへ行くと、多くのボランティアといっしょに子どもたちが凧揚げをしていた。空を見上げると、空高く上がった凧の横には虹がかかっていた。半円ではなくまっすぐに伸びた虹だった。

              

現地での受け入れやコーディネーター役をしてくれた東京の鍼灸師WAKAさんを捜す。小学校の下に位置する中学校にいるという。
そこで、他の鍼灸ボランティア2名を加え、簡単な説明を受ける。

午後から、二手に分かれ、4人は気仙沼小学校体育館(避難者140人)へ。1人は、中学校(同432人)に応援に行き、他の鍼灸師と合流。3人で避難所になっている各教室をまわる巡回治療にあたった。

小学校の体育館は子どもたちが外で遊び、大人たちの多くは出かけているようだ。人は多くない。支援者たちにあいさつし、場所を確認してから、「鍼灸マッサージのボランティア」の告知をしてまわった。

               

館内の中央には、女子中高生などのいる家族が生活しているテントが並んでいる。そのうちのふた張りはボランティアの看護師などが寝泊まりしているが、そのテントを治療用に借りた。

テントの周りの窓側には、冷たい床に断熱材のマットを敷き、ダンボールなどで仕切られただけの区画がいくつもある。その区画へ手分けして訪問し、その場でマッサージやはり治療をしたり、テントでの治療の予約をとったりした。

初日はこちらも、被災者も、互いに様子見のような、距離感を置いた感じだが、次の日、そして3日目になると垣根が低くなり、震災当時の様子やいまの状態などを話してくる人もおり、心を開いてくれるようになった。

いずれも、接触鍼や打鍼、軽擦程度のマッサージやタッピングだが、それだけで心身の疲労、肩こりなどから解放され、表情が明るくなってくるのがわかる。

子どもたちはマスコミでも有名になった『ファイト新聞』を書いて館内の掲示板に張り出しているが、避難所に明るさを提供してくれている。子どもや家族を失った人もいるし、先は見えないが、小学校の避難所では少なくとも子どもたちの存在が支えになっている気がする。
初日、5人で20人を治療した。半分は腰痛を訴え、肩こり、全身疲労、坐骨神経痛、不眠なども多い。

津波の被害は想像以上

午後4時過ぎ、1日から来ていたボランティアたちと合流、中学校の下に位置する市民会館前に12人全員が集合。
初顔合わせで印象を語り合った。

「統一した問診表をつくるべきではないか」という案も出たが、これまでと同じように、氏名、性別、年齢、所属班を記録することで落ち着いた。翌日、朝9時30分にそれぞれ今日と同じ避難所へ集合し、10時から午後4時まで治療に当たることなどを決めて、藤沢町民病院へ行く組と藤沢町にある近くの農家民宿へ行く組とに分かれた。

わが「チームさとう」はその後、市内や港などの被災現場を視察してから、農家民宿へ向かうが、目の前で見る津波の被害は想像以上のひどさである。

がれきやめちゃめちゃになった車などはところどころにまとめて山積みにされているが、いまだに船がよこたわり、焼けただれた車なども商店や家に突っ込んだまま。

                  

気になるのが地盤沈下だ。ちょうど満潮時だったらしく、冠水した道路、桟橋は海水面まで数センチまで迫る。波止場近くの4階建ての商店は、津波のひどさを物語っているが、家を修理しながら、お酒などを売っていた。
電気のつかない信号が何ヶ所かあり、そこから少し内陸に入ると、被害は感じられない。

気仙沼は地震と津波のあと、港に近い街や大型船など火の海になった映像が強烈だったのを鮮明に覚えている。
治療しながら、教えてもらったのだが、津波は大きな重油タンク3つとも流され、その油に引火したり、電気系統などがショートして、海と町が燃え上がった。

          

治療中、被災者の一人は「気仙沼にはびこる泥のような、重油のようなにおいは嫌だ」といっていたが、重油の燃えた臭いに瓦礫の粉塵が混じり、普段とは違う魚介類の腐った異様な臭いがし、体育館などにもただよってくることもある。

大阪とは1ヶ月遅れくらいになるのだろうか、花粉が飛び交い、その上、黄砂が混じる。避難所の汚れた空気も加わり、咳をする被災者が多い。われわれは1週間、鼻水とくしゃみなどに悩まされただけだが、被災地では雪も降ったり、寒い日が続いていたので、肺・気管支系の疾患は多いのだろう。

東北を襲った雪害は30数年ぶりともいわれ、太平洋側の岩手・宮城も例年になく、雪が降り積もったりした。
GWは、日中は少し暑くなるが、朝晩は寒いぐらいだった。体育館の床は冷え冷えとする。

「想定外」の待遇

気仙沼に着く直前、携帯で、泊まる場所は岩手県の一関と気仙沼の中間に位置する藤沢町の藤沢民病院になるだろうとの連絡をWAKAさんから受けていた。
藤沢町民病院は気仙沼や陸前高田などへのボランティア派遣のハブ(拠点)になっている。

雑魚寝のつもりだったので、寝袋や食料なども持ち込んでいたが、PCATの計らいで藤沢町の「農家民宿」に5泊することになった。
食事付、風呂付という待遇は「想定外」だった。
しかも、宿泊費も、交通費もPCATが出してくれる。

初日は東京組3人とともにみんなで8人が泊まった。

                   

そういえば、この日「チームさとう」はみんな昼食抜きだった。民宿に向かう途中、疲れと空腹が一挙に押し寄せてきた。築130年のいろりのある伝統的な造りにみんなが驚き、感激した。農家民宿らしい「豪華な」夕食は、長旅の疲れとはじめての被災地での治療という緊張を一挙に解きほぐしてくれた。

宿のご主人の“あんちゃん”は農業に従事しながら、町会議員をやり、裏山には40年かけて造った「桃源郷」があり、桜、ヤマモモ、水仙などが花盛り。宿の名は「観楽楼」。GW中、県内外から連日、花見客が来るほど、人気のフラワースポットなのだ。

食事はお姉さんが手伝いに来ていて、明らかに脊柱管狭窄の症状がある。食後、治療をすることになり、これが日課となった。5日間の治療で、下肢の痛みが緩和され、喜んでもらえた。

治療中、突然、地鳴りのような音がしたかと思うと、ぐらぐらと揺れ出した。「地震だ!」。「あわてない、あわてない」とあんちゃんがいう。余震は、ほぼ毎日あった。

被災者の食事はやはり偏っていた。

2日目、農家民宿「観楽楼」の自慢のフラワーガーデンを見、普段は食べることのない朝食をいただき、しかもお昼用のおにぎりもいただいた。これが5日間同じようにしてくれた。治療する側が元気でなければ、ということで甘えることにした。

小学校の体育館の外では青年会議所などがおもちゃや風船、ゲームなどお祭り気分の出店をはじめていて、クイックマッサージもやるという。

治療は中学校へ1人派遣し、4人が小学校で治療に入る。さまざまなボランティアが入り、天気も良く、館内の人は少ない。この日は予約も入り、小学校では子どもへの小児はりも含め、22人。中学校に派遣したT君は1人で14人、マッサージを中心に巡回治療を行った。

やはり腰痛、肩こり、神経障害、不眠、そして動悸や吐き気、頭痛などいろいろな症状があった。

食事はカップめんや缶詰が多く、野菜が少ないといい、身体を動かすことも少なくなり、避難所くらしで肥ったという人も数人。

館内では、PCATが本格的に健康調査に入っている。結果は8日、市民会館で知らせることになっている。

4時過ぎ、体育館を離れるとき、さきほど小児はりをした親子3代の4人が、いまから、市民会館の駐車場に設置された自衛隊のお風呂に行くという。「玄海の湯」とのれんに書いてある。九州の部隊だ。お風呂は、女性男性が隔日に分け、1日おきの入浴になる。

夕方は肌寒く、風も出てきた。小学校のグランドを横切り、中学校の校舎からさらに下へ降りて行き、再び帰ってくる間に、湯ざめして風邪でもひかないか心配になり、声をかけた。

「お風呂は楽しみでね…。」と嬉しそうに言い返してくれたのが印象的だった。

この日の活動が終わってから、WAKAさんとうちのスタッフ1人が帰ることになっていたので、気仙沼駅まで送った。農家民宿へは大阪組4人だけになる。

自己満足にしたくないが…

子どもの日の5日

仙台の洋服店がボランティアで衣類の提供を行っていて、被災者の列ができていた。1人10着まで選んでいいという。

あるご夫婦の治療をしていると、ご主人は2着しかもらわなかったことを奥さんが嘆いていた。ご夫婦は2人とも腰が痛い。奥さんは以前、鍼が痛かったらしく、最初拒否されたが、刺さない鍼もあり、まったく痛くないことを告げて、治療してみると、腰痛が改善され、喜ばれたと「チームさとう」のY君が報告してくれた。

午後に帰阪するY君が東北のラーメンが食べたいという。ちょうど、市民会館から降りてきたところに、「ラーメン屋」を見つけた。入ってみると、ここのラーメンは以前、新聞で取り上げられた記事が貼ってあった。



あっさりラーメンを4人分注文した。

座敷では、外国人らしき女性数人も混じった会社員たちが代表らしき人の話に厳しい表情で耳を傾けていた。「8月までには何とか再開したい。2階は使えるし、解雇せず、がんばっていきたい。」などと深刻な話だった。

民宿から持ってきたおにぎりとラーメンの相性がいい。

「店は、津波でカウンターまで浸かった。義捐金はもらっていないし、ボランティアもなしで自分たちだけで、きれいにして、幸い、冷蔵庫はやられていなかったので、なんとか4月29日に再開することができた…」。
息子さんは、なんと当院がある大阪の八尾市で働いているという。ここでのラーメンを3日間、昼食で食べさせてもらってが、全く飽きることがなかった。

2人を気仙沼駅に送ってから、残った2人で治療を再開。

「観楽楼」の帰り道、災プロへのツィッターにメールを送るK君に、ただ人数だけでなく、エピソードも入れたら」といった。

実は、治療中の女性に「あんた上手だね。ここで治療院やってくれないか?」「娘が東京にいるけど、嫁さんに紹介するよ。」と2〜3人に声をかけられていた。

ほかにも、「ここで鍼灸院開業してくれないか?」と声をかけてくれた人もいた。

ツィッターに「全国の鍼灸師に、気仙沼へ来ないかと、紹介するような記事を送ってもいいやろ?」というやりとりをしていたのだ。
実際、ひどい五十肩の人や坐骨神経痛の人など、ずっと続けて診療を期待している人からの声だから、まんざら冗談でもないと思ったからだ。

「温泉に入りたいな!」と思っていたら、別のルートに鉱泉「たまご湯」を発見。山の中を通っていき、少し遠回りだが、信号もすくなく、こっちのルートの方が早い。
3日間、この温泉で疲れを取ることができた。

翌7日から8日の昼までは、市民会館(避難者282人)での治療に入った。



市民会館では「肩こり、腰痛、ひざ痛、神経痛、不眠症、頭痛…、その他なんでもご相談下さい」「マッサージ・“刺さない”はり 6〜8日、A10〜P4 談話室にて」とA4の紙に書いて、各避難所をまわり、予約をとった。
30分ごとに2人づつの予約はたちまち埋まってしまった。
結局、そのまま、3日間予約する人もあり、昼食タイムも30分もとれないほどフル回転の治療だった。
6日は19人。7日は18人。最終日は8人。

ただ、ここではリピートが多かった。「チームさとう」のK君が感想文に書いていた。

「最初に来た患者さんが次々と予約を入れてしまうので、より多くの被災者の方を診ることができなかったのが悔やまれる。これでよかったのか悪かったのか、答えを出せない。長期に続けば、少しの事が大きな力となっていく。この有意義な活動が絶え間なく続いてほしいし、ますます人出が必要になってくる現場だ。一度、乗りかけた船、このまま縮小しては結局、自己満足になってしまう。何か方法はないか」と自問自答していた。

「最後の治療、患者さんに別れを告げた時、“どうか、お元気で”と言われた一言が頭から離れない」とK君は、複雑な気持ちを吐露していた。

話を聞くことも治療

小中学校と市民会館の3ヶ所で「チームさとう」が治療した被災者の方は6日間で、のべ131人だった。
男女別はほぼ半分づつ、子どもから高齢者まで、マッサージのみが58人、鍼とマッサージが73人だった。

このなかには看護師・市の職員や派遣職員などの支援者たちも数人含まれていて、K君の言うとおり、被災者・支援者とも、もっと多くの人に治療が必要だと痛感する。

「今日も泥のかき出しをしてきた。腕から肩、全身の筋肉が痛い」と訴える人。
「俺以外の家族はみんな亡くなった」「この部屋の人たちは何もかも流されてしまった人たちなのよ」などと、治療中に語ってくれる人。何も語らず、ただただお礼だけし、押し黙っている人もいる。

治療中に患者さんの携帯電話に、土葬されている弟さんを「いまからとなり町の火葬場へ運ぶから、ブルーシートをもってきくれないか」という連絡が入った人。

「車で逃げようとしたが、渋滞で動かないので、車を捨てて、高台に逃げきたが、そのまま車に残った人たちはどうなったのか…」「津波の恐ろしさを体験した子がお風呂に入れない」など、さまざま極限状態の体験をした人たちばかりだ。

明るくふるまってくれる人が多かったが、身体は正直なもので、ほとんど全員、心身ともに疲弊しているのを感じる。
被災者の多くは、先が見えない避難所生活への不満、不安といら立ち、人間関係など見え隠れする。

すばらしいふるさとだけに、この地から遠く離れられない気持ちが、治療中に何人からも伝わってきた。

しかし、仮設住宅は、気仙沼だけで3,000戸目標にしているが、5月2日にようやく106戸できただけだ。

スタッフには、事前にPTSDへの対応など「心のケア」についての「災プロ」の資料を配り、目を通してもらっていた。
PTSDへの対応は、
・被災体験談を掘り下げない、
・話が出ても、早めに治療を切り上げる、
・日常に意識を向ける(現実に戻す)会話をする、など。

体がなごんでくると、徐々に震災当時のことや家族のこと、先行きのことなど話をしてくれる人も少なくないが、話を受け入れるだけでも、治療につながることを実感した。

「治療の押し売りでもいけない。ざっくりとした施術でもいけない。普段よりシビアで、ナイーブな対応が求められるなか、私たち鍼灸師の姿勢が試されていると思った。」(K君)。

治療は半分近くが鍼ははじめてという人だった。

銀の耳鍼を使ったテープで張るだけの経絡治療に、金鍼50番での刺さない鍼=NPA鍼法を加え、軽くマッサージするだけのやり方に、痛みも、緊張もとれ、「身体が楽になった」「いやー、不思議? マジックだね!」とかいわれながら、喜んでもらえたようだ。自信につながった。

ひどい五十肩の人や、脊柱管狭窄症の人、坐骨神経痛、顔面麻痺の患者さん、胃痛や便秘・下痢など、鍼やマッサージの効果を活かしたいと、現地に入った鍼灸マッサージボランティアたちは願っていると思う。

8日最終日

健康調査の結果を市民会館の談話室で被災者の方に伝えていた。高血圧の人が多い。
「ラーメンの汁を全部飲まずに、せめて半分にして塩分を抑えてくださいね」などと、医師の懇切丁寧な日常生活の指導を聞きながら、隣で治療をしていた。

残念ながら、PCATやDMATなどとの連携は現場ではほとんどできていなかったように思うが、少なくとも、被災者の健康にとって、互いにプラスの方向で活動が活かされたようだ。
これからの新しい活動への礎になりそうな気がする。

PCATの活動は5月1日〜8日までの「健康支援調査」が目的だった。
その一端を担うことで気仙沼での鍼灸マッサージの成果を活かせたことで、引き続き、交通費・宿泊費を出して、鍼灸マッサージ師を募集し、鍼灸マッサージボランティアが取り組まれていることがうれしい。

気仙沼市の基本情報

気仙沼市は2月末の人口73,363人、26,417世帯だった(H18唐桑町、H21本吉町がそれぞれ合併)。

5月8日現在、死者数941人、行方不明者数580人、被災世帯9,500世帯、避難所48ヶ所4,400人。

避難者は、8,884人(3/16)→4,423人(5/19)→3,803人(6/1)。
避難所の気仙沼中―650人(3/16)→432人(5/11)→310人(6/1)
       気仙沼小―370人(3/16)→139人(5/11)→109人(6/1)
      市民会館―600人(3/16)→282人(5/11)→171人(6/1)

気仙沼市医師会によれば、南三陸町含めたエリア内に、7つの病院と37の診療所があったが、29か所が津波にのみ込まれ、全壊した。会員71人のうち2人が亡くなった。

7人の医師は気仙沼圏域から離れることを決めたという。もともと、市内の公立病院は慢性的に医師不足を抱えていた。当然、在籍の医師たちにはこれまで以上の過重な環境となる。
津波で病院を再開する土地がなく、被災者の居住場所も分からない。

山は海の恋人



気仙沼は美しい海岸と漁業のまちだ。
カツオ、サンマ、マグロは全国有数の水揚げを誇っていた。フカヒレやカキも特産品で、マンボウ、ワカメ、アワビやウニ、そして気仙沼小でぬいぐるみにもなっていたホヤも有名だ。

藤沢と気仙沼の途中の森林に「森は海の恋人」という大きな看板がある。

カキの養殖業者などが「生物が育つ海を取り戻す」といって毎年、一関の山中に植林を続けてきた。

全壊したカキの養殖業者は、もうあきらめようかと思っていたが、全国の支援者に励まされ、カキの再開をめざすことを決めた人もいる。「震災復興を願い、今年も山に木を植える」といって、三陸の海と漁業の再生を誓う。


“還暦”の同窓会
2011年06月13日 (月)

 「還暦を祝う会」が6月11日、故郷の秋田県湯沢市で行われた。



1年前に、「祝う会」の予告と宛名確認の準備をするなど、
在住の実行委員会の努力があって、
湯中41年度卒業同期生4クラス180人中97人(54%)が集まった。
60歳にしたら、けっこうみんな若く見えた。
80歳前後の恩師3人も参加してくれた。

式の冒頭、亡くなった友へ黙とうをささげた。
実行委員会から名前は紹介されなかったので、顔も名前も浮かんでこないままだったが、
あとで確認すると、14人の名前があがった。
中学生時代に川遊びの事故で溺死したり、交通事故死にあったり、成人後に病死したり…。

2組は、45人中26人が参加し、うち24人が2次会にも参加、小安峡温泉で一泊した。



宿の外では、カジカガエルが鳴いていた。
翌日のマイクロバスでの観光はまるで遠足気分。
山には、残雪もあった。



   

ササダケ(マガリダケ)の山菜採りに来ている人をたくさん見た。
そのササダケをお土産に持って帰った。
家で焼いて、皮をむき、妻と娘といっしょに食べたが、実においしい。

   

10年ごとに同窓会をしているが、成人式以来、40年ぶりにあったものもいる。

参加予定だったヘビースモーカーのT君は、1週間前に肺疾患で入院、欠席した。

中国は深?で電機・半導体関係の会社を7年前に立ち上げたK君。
よく一緒に遊んだ竹馬の友なのに、はじめに顔を合わせた時には、
白髪とひげの変容ぶりに気がつかなかった。
妻は長崎においての単身赴任だという。
日本の高度経済成長の発展と同じような経験をしている。

石巻市で震災に会い、自宅の目の前にまで津波が押し寄せてきたが、
全員無事だったという I さん。
気仙沼への震災ボランティアに行ったことで、話がはずんだ。



夜中まで、家庭内問題などを延々と聞く羽目になったT君。
20年前の同窓会で
「クラブのキャプテンで出場停止を食らったのは、お前だけやで」
といわれていた。

その原因を思い出せずに、悶々としていた。
ようやく、その理由を聞くことができた。
つまり、後輩がなにか悪いことをして、
キャプテンがその責任をとらされたというのが真相だった。

早生まれの私はまだ59歳。
来年、後厄の同窓会をやるというが、来年こそ本厄になる。

秋田空港からはバス、電車を乗り継いで帰ったが、空港から3時間。

降り立った湯沢駅は、昼も無人だという。
夜9時過ぎとはいえ、駅前の商店街は真っ暗。
以前のにぎやかさは消えていた。
震災後はさらに「はやらねぐなった」と口々になげいていた。

湯沢は周辺に温泉がいっぱい湧き出ている。
以前、親父は地熱発電協議会?の会長をしていたらしいが、
自然エネルギーとして注目されてもいい。



「湯沢市内には、院内銀山跡、川原毛地獄、泥湯温泉、小安峡温泉など
地質、地形に関係する魅力的なジオサイトが豊富だ。
市では、これらで形成するジオパークの世界認定を目指す。」
(『秋田さきがけ』6/11)
という記事を見たが、さびれた地方の活性化へ期待したい。

実家に数年ぶりに泊まってきたが、93歳の親父と
同窓会の前日、2人でビールを2本あけた。

同窓会後も泊まったが、翌朝、玄関から外へ出て見送ってくれた。



富田林市・川田屋の蓮と半夏の花
2011年8月1日


富田林市にある“自然派「川田屋」”に行って、

いつものように手造りの豆腐料理に、

地鶏を組み合わせた「ミニコース」を注文する。

金剛山だろうか?

ガラス越しに見える河内の山々はいっそう食欲をそそる。

食べ終わって、外へ出たところにちょうどハスの花が咲いていた。

せせらぎには半夏生(ハンゲショウ、和名はカラスビシャク)が見える。

  

白にピンクがかった淡いハスには、

何かお釈迦さんが浮かび上がってくるような

幻想的なイメージを抱く。

仏教関係の装飾によく使われているからだろうか?

夏に咲いたハスの花は秋には果実になる。

生薬の「蓮肉」だ。

鎮静作用や健胃薬、強壮薬などの効能があるという。

以前、韓国のソールでこのハス茶を買ってきたことがある。

心臓の働きを強化するというので、妻の不整脈に効くのかなと思ったからだ。

葉っは止血剤、蓮根は咳によい。

その蓮根だが、いかにも食物繊維が豊そうである。

蓮根は便通を良くし腸内の発ガン物質を排出して

大腸ガンの予防動脈硬化、高血圧の予防に効果があるといわれるゆえんだ。

また、疲労回復や美肌によいとされるビタミンC

鉄分の吸収を助けるビタミンB12も多く含まれ、貧血にも良い。

納豆やオクラ・里芋などに含まれる糖タンパク質ムチンも含まれ、

これが胃壁を保護、タンパク質や脂肪の消化を促進する。

滋養強壮にも効くという。


れんこんの切り口の変色が早いのは

ポリフェノールの一種タンニンが含まれているからで、

これには消炎や止血作用があり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍にもよいとされる。

おろし汁は鼻血や咳、ぜんそくの発作止めなどの民間療法に使われてきた。

 半夏生(ハンゲショウ)

半夏(ハンゲ)の塊茎は、古来より吐き気の要薬とされている。

「えぐみ」が強いため、生姜を加えて煎じる。

悪心、嘔吐、妊娠悪阻、せきやのどの痛み、めまい、心悸、頭痛、不眠等に応用される。

漢方には「半夏は湿を燥し、痰を化し、胃を和し、逆を降す」とある。

自律神経失調症や躁鬱病などで、よく咽喉に何か詰まったような感じになり、

飲み込もうとしても、飲み込めず、吐けども出ない。

まるで梅干しの種がのどにひっかかったようになるので、

梅核気」ともいわれ、「ヒステリー核」ともいわれる症状がよく出る。

この半夏を加えた方剤が「半夏厚朴湯」。

何人かの患者さんに紹介したことがあり、確かに効果を確認できた。



奥琵琶湖で“合宿ミーティング”
2011年10月13日 (木)

 苔むす広場に木漏れ日が差し込む奥琵琶湖のオートキャンプ場での
“飯ごう炊さん&BBQ”は、最高だった。



当院では月1回、Meetingを行っているが、今回、
趣向を代えて連休を利用して1泊2日の「合宿ミーティング」にした。
参加は7人。
宿泊はリゾート施設(食事は予約すればOKだが、経済的に今回は自炊)。

私が出した2日間のスケジュール素案は、スタッフの意見で次のようになった。

10月9日(日)朝8時集合。
奥琵琶湖着11時。
@昼食BBQ。AMeeting前半。B近くの温泉と夕食。
CMeeting後半。Dレクレーション。適当に就寝。 
 


 結果は、Cの症例報告はできず、先送り(15日)に。
若者たちはレクレーションで、夜中までワイワイ…。

 「リフレッシュ感もあったが、やや疲れ引きずったような気がします。」(YNちゃん)


 そりゃ、そうやろ。
 男どもはさっさと布団を敷いて寝てしまい、
体育会系の女の子2人が雑魚寝。逆やろ!

10月10日(月)
 朝7時起床。
@太極拳とモーニング。A奥琵琶湖の湖畔とマキノ周辺の散策。
B昼食は朽木渓流魚センターでイワナ・アマゴを釣って、BBQ。帰阪5〜6時。

 結果は、@の太極拳が履行できず、起床は8時。
チェックアウト後の10時過ぎからソフトバレーで汗をかく。
 帰阪は7時過ぎになった。

Meetingはいつものように、
医療・介護にかかわる国内外の動き、健康・養生の四方山話、
鍼灸・柔整をめぐる動向、院内の課題と今後の方向性などとともに、
スタッフの個別報告
(@「アトピー症状の証と治療」、A症例報告、B脈診と取穴)など、
レジュメの準備をして行った。

しかし、最大のイベントはBBQ。BBQ用具は持参で、肉などの食材は若い連中にまかせた。
飯ごうは年寄り以外、「TVでみたことがある」という程度で、全員初めての経験だと言う。

石と薪を拾い集め、かまどをつくり、はじめての飯ごう炊さんに若いスタッフ全員、感動!。
写メをとりまくっていた。
もちろん、おこげのついたご飯は大評判。
スパークリンクワインでの乾杯に大満足。

野菜は途中の奥琵琶湖の西浅井・道の駅「あぢかまの里」で
58kgもあるお化けかぼちゃを横目に、ひょうたん型のかぼちゃ、
丸々太ったサツマイモ、見慣れない野菜2種、ながねぎ、たまねぎなどを購入。
かぼちゃとサツマイモのBBQは、甘〜くて実においしかった。



BBQの肉はぜいたくに国産の牛と豚、それにシマチョウ、ハチノス、肺などのホルモンは絶賛。

K君は豚足とホタテを燻製キットでつくったが、部屋に持ち帰ってから大変。
部屋中、燻製の匂いが充満してしまった。
いぶした豚足にコチジャンはおいしいが食したのは、2人だけ。

2日目、起床は8時。

モーニングは8時30分から。みんなでそれぞれつくって食べた。

見慣れない野菜にハムをはさんだサンドウィッチは抜群の相性だった。
道の駅で購入した「ふなずし」は、飯ごうの残りご飯のおにぎりによく合う。
これも若いスタッフ全員初物だったが、2人ほど口にできなかった。
インスタントの味噌汁も、うまかった。

チェックアウト後のソフトバレーで年寄り2人+T君は翌日、筋肉痛。


「足、短かぁ」と言われながら
必死にがんばる年寄りだが…


奥琵琶湖に浮かぶ竹生島を向こうに、湖畔で石投げや波と戯れたひとときは、リフレッシュそのもの。


「わたしは、やるぞ…」
竹生島に向かって叫ぶ!久美ちゃん

マキノのメタセコイヤの並木道でビートルズの“アビイ・ロード”をまね、記念写真。



昼食は2時過ぎになったが、イワナ釣りの最後に、池の水を抜き、
釣り残したイワナを手づかみにし,
内臓を取り除き、BBQで食す。
2日目のBBQは、イワナと焼きおにぎりに全員、舌づつみを打つ、大好評だった。

「自然の中で日頃できない新鮮な体験、とても有意義でした。…食いすぎでした。」(Y)




つかみ取りはテンションが上がり過ぎて、翌日、
私は右手中指の打撲で関節のシワが消えるほどに腫れ上がってしまった。
ズキズキ疼き、曲げることもできない。負傷したままで行う治療はつらかった。

昼休み、Y君に指先の刺絡をしてもらった。
その夜、みるみるうちに腫れが引き、3日目にはほぼ回復。

もちろん、腫れ上がってから、アイシングで炎症を抑えたが、
特殊な鍼(当院はランセット)をつかった瀉血治療(刺絡)の効果は抜群だった。

「BBQ合宿はとても有意義ですばらしい経験になった。
自然のエネルギーを取り込んで、…また一ついい男になったような気がします。
飯ごうで飯も炊けるし…。」(K)

「マイナスイオンたっぷりの自然を堪能できて、気分はかなりリフレッシュできました。
筋肉疲労で疲れ気味もあるが、(アトピーの)皮膚の回復は早いような気がする。」(T)
(藤庵)


















滝井徳子 油絵 ウィズ個展



この絵は、私の実姉が2〜3年前に描いたものだ。
 私たちの母は、すでに10年前に他界しているが、「母の郷」はいま、
りんごが真っ盛り。奥羽山脈から湧き出す地下水をいっぱい吸いこんで、
たわわに実ったりんご畑は、小さい頃、よく木から直接もぎとって
丸かじりした思い出がある。
毎年、母は都会にいる私たち子どもたち(3人)に、
りんごを送り続けてきた。
いまでは、85歳になる一人暮らしの父が、
引継ぎ、毎年、りんごが届くのを楽しみしている。(2004年)




爽秋
:この絵は、泣Eィズ代表の実姉滝井徳子(東京・世田谷在住)の作品だ。
京都の地蔵さんをモデルにしたという。04年9月、姉の長女(姪)の結婚式の際、
久しぶりに立ち寄った世田谷の姉の家にたくさんあった作品のひとつで、
ぜひ、「くつろぎの里」に飾りたいということで、手に入れたもの。54歳でいわゆる
“若年退職”したあと、どんどん描きまくっていた姉だが、最近、北海道の
中札内村主催の「北の大地展」に応募し、全国から千数百点の応募のなかから、
見事大賞を受賞。
姪の結婚式の翌日、同村で授賞式があった。(2004年)



北海道の中札内村主催の「北の大地展」大賞作品
(2004年)
      



“夕映え”
皆瀬川の白鳥(秋田県湯沢市)

  
“犬っ子まつり”
(秋田県湯沢市)    僕の名はロック(秋田県湯沢市)

   
      “風を待つ岬”(神奈川・三浦半島)                        紫陽花の丘


   
                        チューリップ(富山県砺波市)

  
 
                         「芽ぶきのころ」(F100号)
 
 「命の形」(S50号)        秋田・山形で有名なサクランボ「佐藤錦」

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ゆずき


ゆざわアートサロンの歩み

オープン展

2006

1111日〜26

ミニミニ展 

123日〜25

北畠龍門グループ展 

2007

16日〜14

松岡焼(伊藤柏容・泥沼会展)

117日〜28

犬っこ展 

210日〜25

早春展

33日〜15

阿部良吉湯沢凧絵展

317日〜25

春光展

331日〜422

三浦勝康展

428日〜53

10

薫風展

54日〜13日

11

高橋東香書展

518日〜27

12

渡辺翠瑶個展

530日〜68

13

同期生展(湯中38卒業生展)

614日〜24

14

小松脩一作品展

630日〜715

15

創作木版画(高橋功展)

721日〜29

16

塩谷彩峯佛画(大和絵展)

82日〜15

17

涼風展

815日〜26

18

山田次郎の村展

91日〜13日

19

加藤彩子展

918日〜24

20

福田元基展

925日〜30

21

松岡焼(「嘉乃窯」作陶展)

101日〜14

22

パッチワークキルトグループ

1017日〜22

23

武石純司写真展

1024日〜30

24

松岡焼(伊藤柏容・泥沼会展)

111日〜18

25

ゆざわアートサロンオープン1周年展

1123日〜129

 

ゆざわアートサロンは、2008年末をもって、しばらく閉店、休止しました。






公募  第1回 犬っこ展

主催 : ゆざわアートサロン          
会期 : 平成19年2月10日(土)〜25日(日)
会場 : ゆざわアートサロン          

「審査結果について」をいただいていますので、以下紹介します。


公募は、全国から39点を受付、厳正なる審査の結果、以下の方々に賞を送ります。

特 賞   吉田  麻子   様     (大阪府高槻市)  
優秀賞   青木   豊   様     (東京都八王子市) 
     野々垣 瑠璃子 様     (東京都町田市)
特別賞   聖徳中学校美術部 様   (滋賀県東近江市) 


  
特  賞                   優 秀 賞         

このほか、スポンサー賞として、アークトゥリー賞、佐藤養助商店賞、タジリ靴店賞、
メモリアルプラザたけや賞、湯沢市観光協会賞、湯沢ロイヤルホテル賞、
(50音順)
のいずれかを全員に送るそうです。

平成19年2月9日
ゆざわアートサロン  代表 佐々木 徹 (0183-73-4001)